私的、蔵書から排除しないライトノベル選 1/2
- カテゴリ:小説/詩
- 2010/01/18 23:55:36
ここの所、片付けしながら「自分にとっての面白いってなんだろう」等々と考えていた。
頓狂な話、新しい物語りが読みたくて、ライトノベルを読んでいる。
が、このごろすこし息切れてきた。歳のせいと言われればそれまでだけど。
先行人気作を意識して「狙った」部分が多い話が増えすぎている気がする。
読者サービスも悪くない。
しかし作る側・売る側として安心なものばかり見せられても、正直言ってつまらない。
自在さ、お行儀の悪さがライトノベルの魅力だろうに、定型化してどうするんだろう?
そんなこんなでやや「ラノベ離れ」しつつある人間が、でも自分の書棚から追い出すことがないだろう本を、思いつくまま挙げてみた。
(ラノベにしても勿論これだけじゃないし、一般向けはまた別に山になっていたりする)
一応、いわゆるライトノベルレーベルでデビューした作家の、ライトノベルレーベルから刊行された作品を対象にした。
なので別カテゴリーデビューの作家、一般で出ている本等々は挙げていない。
例)『銀河英雄伝説』、『星界の紋章』、『マルドゥック・スクランブル』など。
SF・ファンタジィなど現実的でない舞台の作品
〈ケイオス・ヘキサ〉三部作 古橋秀之
『ブラックロッド』『ブラッドジャケット』『ブライト・ライツ・ホーリーランド』の三冊。
科学の代わりに魔法が発達した世界を舞台にしたオカルト・パンク。
混沌の街に怪人・魔人が跳梁し、神を求める計画が遂行され、やがてカタストロフィが訪れる。
個人的に多分、ライトノベルのなかで最もカッ飛んで面白かった作品。
現在絶版中とか。何故だ!
〈十二国記〉 小野不由美
現実世界と地続きの、精緻で箱庭的な異世界を舞台に、モラルと尊厳についての物語が語られる。
「現代人」な人物たちが世界の不自然さを気にし始めているので、SF的方面に落ちるのじゃないかと感じている。
……にしても、続刊の刊行はいつですか?
この作者は一般向けの評判もいいけど、タナトスはあってもエロスはない文章の人なので、キャラクター小説を書いているときの方が生き生きしていて面白い。
『〈骨牌使い(フォーチュンテラー)〉の鏡』 五代ゆう
最初の刊行がハードカバーだったこと、その当時は挿絵もなく(表紙イラストは弘司、派手さがすくない話だったため、ライトノベルじゃねェ、と言われたりしていた。
確かにライトノベル界隈には少ない、真っ向勝負の本格ファンタジィ。
少女の成長と、疎外と試練と赦し、世界の破壊と再生の物語。
本気のファンタジィが好きな人にお薦め。
『真世の王』 妹尾ゆふ子
前史である『異次元創生期 赤竜の書』も込みで。
『翼の帰る処』でひっそり読者がついた感がある作者だが、ファンタジィ読みなら注目の人だろう。
「言葉」によって創られ、「言葉」が力持つ世界。
歪みからくる世界の滅びを食い止めようと、それぞれに抗い、戦う人物たちに厚みがあり、それだけに物語は重いが、読み応えがある。
ラストに「ものがたり」を語り、作る者の想いのようなものを感じた。
『翼~』とは別世界なので、作者著作の復刊があったとしても、この作品は可能性が低いのが残念。
〈A/Bエクストリーム〉シリーズ 高橋弥七郎
プロ意識を持つ熱い人間たちのSFアクション。
アクションシーン等文章が上手い人じゃないけど、何というか、個人的に気にならない種類の下手さだったり。
社員連中がみな個性が強く面白いけど、特に面白いキャラは社長。(腕っ節の問題じゃなく)ほぼ最強のキャラクターだろう。
1冊目の「落書き」のくだりが胸に来ない人とは多分、話があわない。
「幸せだったか?」「だった……? 違うよ、幸せなのさ。今もね」
夢を追っていた者、いやおうなくそれを踏みつぶした者のやりとりが切ない。
『灼眼のシャナ』が終了したらご褒美出版で続きが刊行されないかな~、と期待して待っている。
余談だけど、米国のオタク文化ではスラッシュ/は日本の801の×を表すと知ってから、シリーズタイトル見ると複雑な心境になる。
……いやや、そんなん。
『All You Need Is Kill』 桜坂洋
周囲から浮きまくった無彩色に近い表紙絵と、帯の神林長平の推薦文で手に取った。
パワードスーツで地球外から来た存在と戦闘する新兵が、あえなく戦死するも出撃前に目が覚める時間のループに叩き込まれる。
繰り返す死に続ける時間の中で、戦闘技術を身につけ、時間の檻を抜け出そうとする。
極上のライトノベルで、SFで、ループ物。
「ガンパレ?」と思ったけど、作者は、買ったものの影響が怖くてプレイしないまま書いたとか。
一冊で過不足なく完結させた手際はすばらしく、苦い後味のラストもいい。
(すみません、長くなったので続きます)
えー、名前を挙げた作家さん(or挙げた作品)は、なんというか、越境しているというか、いわゆる「ラノベらしさ」は少ないような気はします。
「ライトノベルじゃねェ」とか言われてた本もありますし。
でも、これらが出てくるのを許容したのもまたライトノベルというくくりだったんですけど……そういう「なんでもあり」な部分がなくなってきてる、ってのが最近の状況のように見えます。
ながつきさんの抵抗は、多分、今のわたしの「だから定型やめてイキのいい話を」ってあたりと似た部分がないかなぁ、と勝手に思ってるんですけど。
〈悪霊〉シリーズについては、せめてコミック版が最後までたどり着いてくれたら話しやすくなるんですけどね。
挿絵等で見るに出版社はプッシュしていなかったのに、読者の口コミで人気を獲得した作品ですし、復刊を待ってる人は多いはずです。
ただ、納得のいくリライトが出来ないと出版されないだろうな〜とは思います。
年代をどうするか(ユリ・ゲラーまわりの話題とか)、なにより通信関係(……)がなぁ、とあまり期待しないで待ってます。
十二国記、貴種流離譚と言えなくもないですが、あの世界で王たるには、そうあるべく行動する人間であることが必要なわけで。
「(そう生まれついていたから)実はお偉いさん」というのとは違って、「貴種であるには相応しい人間たるべく生きねばならない」のがあの話の面白い部分を生んでいるのでは、と思います。
ところで、小野さんの海外インタビュー、知らなかったです。(こっちに続けて書きますね)
軽い気持ちで何気に「Fuyumi Ono」と検索したら、検索結果2段めにインタビューページが!
びっくりしました。それも、こんな上位に出てくるなんて。みんな気になってここにたどり着くのかしら。
今書いているのは、ずっと昔に書いたガールズ・ホラー・シリーズのリライトとありました。
2007年3月17日。うーん。
ジャンルでいうと 貴種流離譚かな
小野不由美さんは 短編を少し 雑誌に書かれただけで どうされてるんでしょうねえ。
うむむむ。
逆に〈十二国記〉は、ある意味ライトノベルというくくりがなければ生まれなかった作品ではないか、と思っているんです。
ジャンル小説、ってカテゴリ分けで出ていなければ、一般向けでは、現実的でない設定を持っている作品は本当に少ない。
SFは読者がいると了解されている分まだよくて、ファンタジィなんかはほとんど出版されません。
そういうものを書きたい作家さんがゲリラ戦的にけったいな物を書く、っていうのがライトノベルの面白い部分のひとつだと思います。
なんでもあり、だからこそ軽視する人もあるけど、面白いもの・新しいものが出てきたのじゃないかと。
そういう意味で、〈十二国記〉は、ライトノベルだろうと考えています。
確かに、スタージョンの法則がここにもまかり通ってますし、不況のせいか状況はさらに悪くなっているように思えるのですけど……
「十二国記」はラノベに入れたくない~(笑)