消えた翼 (8)
- カテゴリ:自作小説
- 2010/02/15 21:17:03
その日もジョーイを送り出し、家で家事をして待っていると、車のエンジン音がきこえた。窓を見ると、ジョーイの車が真っ直ぐこちらにやってくるのが見える。そして驚くことに、助手席に誰かが座っていた。
「ただいま、メリッサ」
いつもよりも早く帰ってきたジョーイは、何者かと親しく語り合いながら部屋に入ってきた。隣には会ったことのない女の子がいる。
「えっと、お帰りなさいジョーイ……」
戸惑うメリッサに、二人はくすくすと笑いながらお互いの顔を見合わせている。
「ごめんよメリッサ。すっかり話し忘れてたけど、この子を今日から数日間家に泊めてもいいかな?」
16歳にも満たなそうな若い女の子は、ジョーイから視線をはずしてメリッサへと向ける。人懐っこそうな笑みから、ちらりと敵意を感じた。
「その子は……誰、なの?」
驚いて呟くメリッサに、ジョーイは呆れたように口を開いた。
「誰って、僕の姪っ子だよ。結婚式にも出てたじゃないか。 エミニー、君の言うとおり憶えてなかったみたいだ」
見知らぬ女の子が前に出て手を差し伸べた。日焼けした健康そうな肌は幼いながらも怪しげな色気があり、メリッサは手を出すのを暫しためらう。
「あらためまして。 メリッサさん、とっても綺麗だからお友達になりたかったの。数日間よろしくね」
屈託なく笑うエミニ―に、メリッサはためらいがちに握手をする。
「痛っ!」
エミニ―と手が触れた途端、身体に電流が走ったかのような痛みを感じた。そのせいで、メリッサは彼女の手を叩く形となってしまう。
「あ……ご、ごめんなさい」
真っ青になってうろたえるメリッサに、エミニ―は笑顔で何ともなっていないと声を掛けた。 その後はジョーイに連れられて、地下にある空き部屋へと荷物を運んで行った。
一人残されたメリッサは、未だに残る手の痺れと胃が痛くなるほどのむかつきを覚えていた。エミニ―のウェーブのかかったブロンドの髪も鳶色の瞳も、美しいけれど何もかも恐ろしい。
(彼女こそが、この世界に変調をもたらす原因なのかもしれない……)
地下から聞こえる二人の笑い声が、彼女には不気味に聞こえた。
夕食時に現れたエミニ―はさっきのことを気にしている風も無く。食後は片付けを手伝った。メリッサも彼女と手が触れても何の痛みも走らなくなっていた。
「昼間はごめんなさい。 驚いたでしょう?」
寝室のドアの前で佇んでいるメリッサは、ベッドの上で仕事の書類に目を通しているジョーイに静かに謝った。
「気にしてないよ。エミニ―も静電気でも起こったのかなって言っていたから」
いつもと変わらぬ笑顔でそう言って、また書類に目を向ける。
「えぇ、彼女も同じことを言ってくれたわ。家事のお手伝いもしてくれたし。 とてもいい子よね」
ベッドに潜り込みながらメリッサが言うと、ジョーイは嬉しそうに笑った。
「ねぇ、エミニ―は貴方に会いに来ただけなの? 何か用事があるって言っていた?」
「特にないと思うよ。電話でも、僕に会いに来たいって言っていただけだから。 それがどうかした?」
「別に、何でもないわ……」
メリッサはそれを聞くなり、横になって寝始めた。もちろん本当に寝ているわけではないが。
ジョーイの鼓動を背中で感じながら、メリッサは嫌な考えをしていた。
(この世界に何者かが侵入してしまったのではないか?)
昔、天界で聞いた話にこんなものがあった。魂の浄化を行っている世界に悪魔が侵入し、その世界を混乱させて魂を奪い去っていくというものだ。悪魔に目を付けられた魂は、仲間にされるか喰われるかのどちらかだと聞く。
(あの子がもしその悪魔だとしたら、彼は消えてしまうのだろうか。その前に私がこの世界を中断させたほうがいいのではないだろうか……)
「何だよ。エミニ―に妬いているのかい?」
眠っているだろうと思っていたジョーイが、背後からメリッサは抱きしめた。その彼の体温がメリッサの身体に沁み渡る。
この瞬間が彼女にとって最高の時間。 メリッサは本気で彼を愛している。
彼女自身もこの世界で一から人生を歩み、彼と出会い、恋をした。普段の仕事ではここまでしない。そうしたとしても、天使には理解しえない感情なのだ。
「そんなこと……相手は子供なのよ」
「でも、なんだか怒ってるみたいだよ」
反論する力もなくなってしまうほど、ジョーイの体温は温かかった。また、仲の良い二人に対してよからぬ想いが少しもなかったわけではない。
メリッサは寝がえりをうって、ジョーイと向き合った。
「君は昔から僕を信用していないね」
続きは明日~ は~書いていて辛いわぁ(^_^;)






























でも、私は楽しみにしてま~す♪( ̄m ̄* )