Nicotto Town


おうむたんの毒舌日記とぼうぼうのぼやき


連載 仮想空間のカオス11

病院に着くなり、待っていたほかの患蓄をとばして、診察室に通された。触診、そのう検査、タオルに付いていたちょっぴりのフンの観察ー
その後、獣医は、手馴れた手つきで、羽太郎に注射をした。ピクッ、羽太郎の意識が戻った。すかさず、羽太郎の口をあけ細いチューブを羽太郎ののどの奥までさしこみ、嫌がる間も与えず、あっという間に流動食を注入して、チューブをぬいた。
そしてタオルにくるんだ羽太郎を処置台に休ませると、翔と母に向かって話し始めた
「老衰で内臓機能が全て弱っています。羽太郎くんは・・・えっと・・・13歳半ですか…」
「寿命だと思ってください」
「え…?」
翔には飲み込めなかった。老衰?うたろうが?突拍子もない話にきこえた。しかし、母はまるでわかっていたようにうなずきながら
獣医に尋ねた。
「今後の処置の仕方は…?」
「数日、入院させて体力の回復をはかります。その後退院させたら、家の方で流動食を一日に4,5回与えてもらい、フンの排泄補助を行うーつまり介護状態になります。今みたとおり、流動食はのどの奥までチューブを通します。直接体内に栄養食をいれます」
「それで、どれくらいもってくれますか?」
「わかりません。一ヶ月ーあるいは二ヶ月…。」
一ヶ月?うたろうの命が?翔は自分の目からぼたぼたおちる涙もこの空間も全部、うそのような気がした。
話は続いていた。
「今日からの入院や検査でざっと○万円かかります。さらに退院後も介護が長期間になるほど費用がかかることになると思います」
母は絶句した。莫大な金額である。
獣医師はさらに苛酷な話を続けた。
「おそらく、一旦回復しても、自力で食事摂取は無理かと思われます。流動食を与える練習が必要ですが、羽太郎くんの入院中に訓練に来ていただき必要があります」
そして一呼吸おくと母の方を向いて獣医は尋ねた。
「入院させますか?つれて帰りますか?」
「今日、連れて帰ったら、どうなりますか?」
「まだ体力が落ち着かぬ状態なので、いつ何が起きても仕方ない状態としかー」
いつ死んでもおかしくないーその言葉が翔を現実に引き摺り下ろした
「入院させてくださいっ!お願いしますっ」
翔は叫んだ。母が困ったように
「費用の工面がね、おとうさんとも相談しないと」
泣きながら顔を横にふりながら翔は言った。
「今までためたお年玉やお小遣い、全部だすからっ、○万円なら・・・うっうっ・・・だからお母さん、お願・・・うえっ・・・いだから」
母は決めた。とにかく一日、入院させて、父と相談するしかなかった。
「とりあえず、入院させてください。今後のことは家族で相談したいので、今日は羽太郎をお願いします」
母が頭を下げた。翔も泣きながら頭を下げた。うたろうをお願いしますっ!心の中で何度も何度もお願いしながら…。

処置台のうたろうの小さなからだの息遣いが落ち着いてきていた。

入院用の小さなプラケースに、うたろうがいれられた。この状態で入院スペースに連れて行くのだという。助手の女性が泣いている翔にケースを渡した。
「羽太郎くんに、今日はここに泊まることを伝えてあげてください」
おだやかな声が翔の心を少し温かくした。彼女はプラケースを慎重にを受け取ると
「今日はここで休んでね、明日、会いにくるからね」
そういうと名残惜しそうに羽太郎のケースを助手さんに渡した。助手の人がケースを受け取ると入院スペースに消えて行った。
羽太郎が近くにいないーそれだけで翔の心はちぎれそうだった。

帰宅の車中、母と娘は無言だった。重い空気の中、翔はある決心をしていた。
帰宅後、両親と翔はテーブルを囲んで、今後の羽太郎の相談を始めた。口火をきったのは翔だった。
「進路希望を公立に変更したい」
思いがけない言葉に父も母も言葉を失った。

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2010/03/23 10:34
私立だとお金かかるから公立にして貰って
その分のお金で羽太郎をなんとかしてほしい
必死だったんだなぁ~って気持ちが伝わってきた
読んでて(。♋ฺ‸♋ฺ。)うるるる♡ってきちゃいました
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2010/03/15 23:01
私くしも、この先、楽しみというか、寂しくなるというか。。。;;
色々な事を思い出しますね。。。

高校進学の折、私くしの身内でも、同じような事がありました。母親が倒れ、妹が倒れ、
公立高校への入試~1年の間に。
その当時、文鳥を飼っていました。思い出します。
鳥に、よく、私の心の内側を、聞いてもらったのを。小さな生き物なのに、存在が大きいと思いました。
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2010/03/15 22:30
今日はホロッとくるお話でした。家族の様子が頭の中で画像になって物語が進んでいく感じ。昨日、整理してみたのも読みを助けたのかも。
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2010/03/15 21:13
こんばんは☆彡

切ないですね…「別れ」はいつか来ると知っていても、
直面するとその衝撃はとてつもなく大きいですものね。

これからどうなっていくのか、楽しみなような淋しいような…。



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