Nicotto Town


おうむたんの毒舌日記とぼうぼうのぼやき


連載 仮想空間のカオス12

「進路希望を公立に変更したい」
思いがけない言葉だった。親友の美優と、評判のいい私立に行くのが、翔の希望であり、両親の希望でもあったのだから。
「がんばって公立受かります」
「だって、希望する公立はギリギリのラインだと先生も言ってたわよね」
三者面談を思い出しながら母は言った。
「希望の私立、とてもいい学校じゃない。あそこなら私たちも賛成よ、そう決めたわよね?」
「でも、お金がかかるんでしょ?」
「あなたが高校にいくくらいは、ちゃんと工面しているのよ?」
「「そのお金で…うたろうを助けてくださいっ!」
「な…」
再び両親は絶句した。
翔の目からまた涙がこぼれてきた。
「ちゃんと勉強します。うたろうの面倒もみます。絶対公立うかります。だから羽太郎を助けてあげてください!」
それまで黙っていた父がきつい口調で翔に問いかけた
「おまえのこれからの人生と寿命まで長生きした羽太郎と、どっちが大事だと思うんだ?」
「羽太郎に決まってる!」
即答だった。
「羽太郎は私の弟だ。私は羽太郎が大事です!」
泣きながらそれでも、声の頑なさは全てのアドバイスを跳ね飛ばした。
再び訪れたしばしの沈黙。
父が静かに翔にたずねた
「公立、絶対受かるんだな?途中で変更がきかない時期なのはわかっているな?」
「はい」
「自分のいったことに責任をもてるのか?」
「はい」
ティッシュの山を築きながらも、翔の声には、はっきりとした決意があった。
「共働きの私たちは、羽太郎の面倒をみれないのだよ?勉強と羽太郎の介護を両立させなきゃならないだぞ?」
「やります」
母が言った。
「今日、病院でみたわよね?流動食をのどの奥にいれるのを。あれを毎日5回やるっていったら、どれだけ大変か、あなたは全然わかってないのよ」
翔はうなづいた。
「わかってない。でも、やらなきゃ、うたろうが死んじゃうんでしょ。それなら、私は、どんなに大変でも、わかってなくても、うたろうが生きていてくれるならやるんだ!」
翔の決心はあくまでも頑なで、固い石のようだった。
「お願いしますっ。もし、お金が足りないなら塾もやめますっ」
「いいかげんにしろ!」
「塾までやめて、公立受かるレベルでないだろうっ!うたろうで、頭がいっぱいで、現実の自分まで見失うな!」
ビクッ。初めてきく父の怒鳴り声だった。でも翔はここで崩れることは負けだと父を見返した。決意は変えない、と。
父の表情がすぐにゆるんだ。
「学校の先生には、私が話しを伝えよう。お母さん、塾に連絡して公立コースに変更してもらって」
「おとうさん、おかあさん、ありがとう…」
「あとは、全部お前の責任だ。途中で投げ出すのは、絶対許さない、わかったな?」
「はい」

そして翔の羽太郎の闘いの日々が始まったのだ…

アバター
2010/03/23 10:41
凄い決心 それだけ羽太郎を可愛がってるのがよく分かる
なかなか飼ってても愛情をそこまで注ぎ込める人は少ないと思う
ぼうぼうさんの実体験 愛犬がそうだったんですね
(´;ω;`)
アバター
2010/03/17 01:34
はぅ;;
ぼうぼうさんの犬さんにも、そんな事が・・・;; ぅぅぅ
そうでしたか、そして、犬さんの介護、そして、ご他界。
壮絶な実体験が・・・。。。
もう、涙がいっぱい出てきて…、これから、また、
鳥と犬を飼おうと思っていまして、
今、育てている鳥や、これからの鳥や犬も、大事にしたいと思いますっ!
アバター
2010/03/16 20:54
今日もホロッとさせられちゃいました。
アバター
2010/03/16 17:24
実は、ここにちょっとだけ自分の体験がはいっています。
大学受験前に、小学生になった頃きた犬が老衰で体調を
あっという間に崩しました。
今は亡き父に
「人生と犬とどっちが大事なんだ!」
と怒鳴られて、それまで反抗したことがほとんどなかった
私が
「コロ(犬の名前)にきまってる!」
と言い返したのを、今でもはっきり覚えています



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