Nicotto Town


おうむたんの毒舌日記とぼうぼうのぼやき


連載 仮想空間のカオス16

その日、塾はお休みだった。明日からは「直前!集中講座」が始まる。
決戦前の静けさのような日がぽっかりできたーそんな日であった。
自宅学習も思いがけぬほど順調で、一区切りついた。羽太郎の流動食の時間にはまだ早いなぁと思いつつ、鳥かごを見た。
いつのまに春の日差しになっていたのだろう。やさしい光が鳥かごを包み羽太郎もきなこも気持ちよさそうに目を細めて日ざしを楽しんでいた。

翔はきなこの鳥かごの扉をあけた。次に羽太郎をそっと取り出す。翔がチューブを持ってないことがわかった羽太郎が、うれしそうだった。一人と二羽は春の日差しに溶け込んでおだやかな時間の流れに身をゆだねる。
久しぶりに翔はパソコンを開いた。ウィーンという低い起動音にきなこがさっそくはりきって、キーボードと戦い始め、それを翔が、笑いながら阻止する。羽太郎がもそもそと動き始め、翔の肩によじのぼろうとした。
「肩にのっていられそうなの?」
驚きながら翔は羽太郎にたずね、慎重に羽太郎を自分の肩にのせた。
いつ以来だろう?羽太郎はほんとに調子がよかった。指に力があって、しっかり翔の肩に伝わってきた。
久しぶりに仮想タウンのきなこ@のスペースに入っていく。
美優のアバター繭音@の足跡が二回ほどついてるだけだ。美優も受験勉強にスパートをかけているのを感じる。

また、しばらくここには来れないなぁ、翔はメッセージを変更した。
しばらくログインできないかもしれません、ごめんなさい
そして、きなこ@の部屋を二羽のいんこと眺めた。この仮想タウンに登録したとき、きなこ@の部屋に美優がプレゼントしてくれたバーチャルインコうたろう@が部屋の主のような顔で以前と同じ場所にいばって座っていた。
「うたろう@に部屋のっとられているなぁ」
肩のうたろうにはなしかけると、羽太郎が得意げに
「ビヨっ」
と鳴いた。
なんて穏やかな時間なんだろう?忘れていたときが帰ってきたようなかんじがした。

あとから、翔は思った。あの穏やかな時間は、羽太郎が消えるろうそくを最後にきらめかせて、翔ときなこにくれた「思い出」という名の贈り物だったのだと。

羽太郎は、翔が塾に行っている間に静かに旅立った。受験の三日前であった…。

アバター
2010/03/29 21:56
とうとう旅立ったんだね(´;ω;`)
翔ショックだろうなぁww
アバター
2010/03/24 16:34
こんにちは✿

とうとう、この時が来てしまいましたね。
覚悟はしてましたが、とても悲しくてすごく淋しいです。
羽太郎くんに「お疲れさま」と「ありがとう」を伝えたいです!
アバター
2010/03/24 00:07
息を呑みました;;

ぅぅ、もう、ずっとウルウルしていたのですが、
ついに。;;
オカメのきなこさんの事や、うたろうの部屋の事、肩のおうむたん、
ぼうぼうさんのアバターにダブって。。。;; ぅぅ
アバター
2010/03/23 21:03
とうとう。。。


おうむたんとはずいぶん雰囲気が違うピョ。



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