病床でチビに読み聞かせた物語。①
- カテゴリ:自作小説
- 2010/03/29 16:57:26
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ある日のことです。
妖精さんは森の中に遊びに行くことにしました。
花を探して飛び回っていると、突然、雨が降ってきてしまいました。
妖精さんは慌てて、みかんの木の下で雨宿りをすることにしました。
その、みかんの木には、子育て中の小鳥さんが住んでいました。
小鳥さんは妖精さんに気さくに話し掛けてきました。
「こんにちは、妖精さん。実は、あなたに、お願いがあるのです。
私の友達の、みかんさんの力になってあげて下さいませんか?
みかんさんは、同じ果実であるという、りんごさんに憧れているのです。
私は子育て中のため、この木から遠く離れることはできません。
私のかわりに、どうか一緒に、りんごさんを探してあげて下さい。」
でも妖精さんは、りんごさんを見たことがありません。
小鳥さんは「赤くて美味しい果実ですよ。」と教えてくれました。
その言葉だけを頼りに、旅に出ることになった妖精さんと、みかんさん。
二人の行く先には、どんな冒険が待っているのでしょうか?
妖精さんは、雨上がりの空に飛び立ちました。
胸には大切そうに、みかんさんを連れて。
二人は虹の橋を渡って、遠い空の向こうを目指しました。
しばらく飛んでいくと、赤くて丸い物が急に目の前に現れました。
それは風に乗ってフワフワと山の向こうに飛んで行きました。
「あれは、何だろう?」
ちょうど横を飛んでいたチョウチョさんに問い掛けてみました。
「あれは、りんごさんですか?」
すると、チョウチョさんは笑って答えます。
「あれは風船ですよ。」
そんなチョウチョさんに、みかんさんは、我慢しきれずに尋ねました。
「りんごさんの木が、どこにあるのか知りませんか?」
「あの赤い風船に、ついて行ってごらん?」
妖精さん達は、急いで風船を追いかけることにしました。
しかし、そのうち空が茜色に染まり、風船を見失ってしまいました。
ふと気付くと妖精さん達は山の中で迷子になっていました。
ウロウロと飛び回っていると、小さな赤い実をつけた木を見つけました。
その木に住んでいたフクロウさんに問い掛けてみました。
「これは、りんごさんですか?」
すると、フクロウさんはホーホーと笑いながら答えてくれました。
「これはサクランボですよ。」
それを聞いて、二人はガッカリしました。
その後、フクロウさんの、お気に入りの止まり木で、少し語り合い、
気付くと、あたりは真っ暗闇。
ほとほと疲れ果ててしまった二人。
その夜は、フクロウさんの家に泊めてもらうことにしました。
朝になると、フクロウさんに、色々な話の御礼と別れの言葉を告げ、
山の向こうを目指して、二人は飛び立ちました。
しばらく飛んでいくと、小さな湖を見つけました。
その木陰でリスさんが赤い実を食べています。
「リスさん、それは、りんごさんですか?」
すると、リスさんは顔をこすりながら答えます。
「これはトマトですよ。美味しいですよ?一緒に食べますか?」
妖精さんは、言われるまま、一口かじってみます。
その味に、思わず「酸っぱい!」と叫んでしまいました。
すると、その叫び声を聞いて、赤くて細長い踊り子が、出てきました。
その数は、みるみる増えて、妖精さん達のまわりを、取り囲みます。
「僕達、にんじんダンサーズ!みんな、一緒に踊ろうよ♪」
最初は驚いた妖精さん達でしたが、段々、楽しそうな踊りに惹かれ、
気が付くと、みんなと一緒に夢中で踊り出していました。
しばらくすると、急に目の前に大きな黒い物体が現れました。
驚いたにんじんダンサーズは慌てて隠れてしまいました。
妖精さんは怖々、「あなたはだぁれ?」と尋ねました。
すると黒い物体は、カァと鳴いて答えました。
「俺はカラスだ!今から子供達に土産を持って家に帰るのさ!」
見ると、くちばしには小さな赤い実をくわえていました。
「カラスさん、それは、りんごさんですか?」
すると怪訝な顔をしてカラスは答えました。
「これはイチゴだ。…君達は、りんごを探しているのか?
それなら、この山を越えると海がある。そこに、りんごの木があったぞ。」
思わぬ言葉に、妖精さんと、みかんさんは大喜び。
「ありがとう。」と御礼を言って、早速、海に向かって飛び立ちます。
しかし、また夜という暗闇が二人の元へ近付こうとしていました…。
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実は、ヤマネコの方が、本当の敵でしたぁ~!みたいな^^;
しかし、カラスは意外と優しいんだなw