Nicotto Town



白雪姫と雪の女王

「あっ。郡山さん。」
 白雪姫に呼び止められる。
「放課後、図書室で会議だって。」
「そう。」
 いつも通りの笑顔の彼にいつも通りの返事をすると私は席に着く。
 だから、白雪姫の表情には気づかない。寂しそうな、何か言いたそうな表情に。

家に帰った後、なぜか私は押し入れに入り1枚の紙を手にした。
『つばきちゃんはぼくのおよめさんになってください』
 よろよろとしているがしっかりとした字で書かれているそれは、距離を置くようになった少し前のもの。
 元の場所に戻すと心がどこかへ行ったかのようにボーッとしていた。とてつもない消失感。視線の先は白雪姫のお城。

 ピンポーン
インターホンが鳴いた。郡山さんだった。
ドアを開けると彼女は布の袋を手にしていた。
「ありがとう。」
「礼は母親に言ってくれ」
 そう言いながら差し出す。彼女の手は変わらず冷たかった。
「じゃあ。」彼女は立ち去る。「また明日。」僕はそう言うのが精一杯だった。もっと言いたい。伝えたい。でも出来ない。
 彼女の母親は時々、煮物や野菜炒めあるいは野菜や米までもくれる。そして、わざわざ持たせるのだ。そう気づいたのはつい最近だった。―彼女が嫌がらない事に気が付いたのはずっと後の話。

アバター
2010/04/20 17:48
サークルから来ました^^
すごいです!
主人公の気持ちがすごく伝わってきました
アバター
2010/04/20 03:58
>心がどこかへ行ったかのようにボーッとしていた。
こういう表現方法、よくできるねって思ったよ^^



Copyright © 2025 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.