Nicotto Town



白雪姫と雪の女王

手すりに寄りかかって見つめるのは1組の男女。
 今、喧嘩してるところ。

私達の学校では毎年10月の終わり頃に学園祭が開かれる。
 その学園祭で私のクラスは演劇をやることになった。2日間で3回の上演。
『ロミオもジュリエットも嫌い』 ロミオとジュリエットにはお互い好きな人がいた。しかし、二人の両親が勝手に婚約を結んでしまう―そんな話だった。
 ロミオ役はやはり白雪姫。クラス全員一致で決まった。
私はといえば2回しか仕事のないスポットライト係。舞台を感情のない瞳で見つめている。見つめられていることに気が付かずに。

ロミオとジュリエットが両親を説得し、婚約破棄を推し進めている。
二人は成功。想い人と結婚。ロミオとジュリエットは友達に。はならなかったが最初よりは良好な関係に。
 ありがちな展開。なのに客席からは大げさなくらいの拍手。私もささやかな拍手を数回。

最後の上演が幕を閉じる。―その後は片付けに追われた。
 「「それじゃ打ち上げだ――っ!!」」
クラス中が叫んだ。一人帰ろうとした人がいた。それは私。
 「郡山さん」
何人かの女子に呼び止められた。振り向くと「帰るの?」と尋ねてきた。「私は特に何もしていない。」「そんな事ない。スポットライト当てるのは大切な仕事なんだよ。一緒に」そこまでは背中で聞こえていたがもう聞こえなくなった。今は自分の足音だけ。
 車窓から見える夕闇に溶ける人、灯り。目に映るものに、私がいても意味ないでしょ。そう声に出さずに言った。楽しいのかな。そうも言った。言った自分を笑う。今頃何を言っているの。あの時からずっとこうしてきたじゃない。
 視界が曇りがかった。どうして?自分でも分からない。そっと目元を拭う。




Copyright © 2025 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.