15歳の春。
高校入学式の翌日の帰り道。
革靴が合わず、お約束の靴擦れが・・。
学校から駅までは、山を下って40分歩く。駅前の歩道橋に差し掛かったころは、足の痛さがかなり厳しい状態に・・。
下り階段に差し掛かったとき、足元がぐらつき、よろりと前のめりに階段を転げ落ちてしまった。
例によって動物のように体がきっちりと受け身+転落防止反応を起こして動いており、階段のかなり上のほうから落ちたのにもかかわらず、数段落ちたところでちゃんと手で体を支えて止まっており、怪我も痛みもなく、かばんも無事。

一応、まだうら若い乙女である。（異論があるかもしれないが却下w)
恥ずかしいったらない。
幸い歩道橋には人気がなかったはずだ。
うう～～～と思いつつ、のろのろと起きかけたときだった。

「大丈夫ですか！｣
力強いバリトンの声が背後から降ってきて、同時に左腕を掴んで引き起こされた。
ええええええええええ！
真後ろに目撃者？しかも若そうな男性？？？
うわあああ～である。
恐竜は歩いていないし、はかまの時代でもないけれど、まだ当時は中学校程度では男子学生と話すのがまだちょっと気恥ずかしいような時代だった。
それが階段転落である。
みっともなくも前のめり落ち、しかも当時は膝丈ちょい下まで長さがあったとはいえスカートである。
もしかしてスカートが捲れれていたかもしれないぢゃないか！
恥ずかしい。めちゃくちゃ恥ずかしい！

こちらの思惑など知ってか知らずか、彼はわたしの腕を取っていとも軽々と立たせると、
「怪我はないですか？｣
と聞いた。
やっとのことで、はい、ありがとうございますと答えたものの、恥ずかしくて相手の顔も見られない。
顔がカッカする。耳もだ！
棒を飲んだようにうつむいて立ち尽くすわたしに、
「あ、スカートが汚れていますよ｣
ホコリだらけの階段を転げ落ちたので、紺のスカートは斑に白くなっている。
ティーンの田舎娘にとってはますますもってうわあああである。
「よかったらこれを使って。怪我がなくてよかった｣
薄いベージュの綺麗に畳んだハンカチをわたしの手に押し付けると、
彼はそのまま去っていった。恥ずかしくて、後姿も追えなかった。
帰ってから洗濯してアイロンをかけ、持って歩いては見たものの・・・。
とうとうどなただったのか不明。

いまだにこの人が誰だったのかは謎です。