握った手
- カテゴリ:自作小説
- 2010/05/12 19:25:44
太陽が昇り始めた頃
彼はデッキに出る
それからは自室に籠もって何かをしている
食事の時間の前に私の部屋に足を運ぶ
月が顔を出す頃になると
もう数千回 数百万回
聴いただろうか
同じ音楽が流れる
それは静かで優しくて
でもどこか悲しそうな曲だ
私はといえば
デッキに行くことを許されていないから
彼の後姿をデッキにでる階段から見つめている
彼は何を考えているのだろう
わたしはいつも思う
そのあと
彼が振り向く前に部屋に戻り
海を眺めたり
使用人や彼のやる
洗濯を手伝ったり
料理が出来上がっていくのを見たり
―最近は少し手伝わせてくれる
裁縫をしたり
そんな事をしている
彼も いい事だ
と言って私がそういった事をするのを
許可してくれている
うーん、彼は何者なのだろう・・・
お金持ちっぽいのかなーって思ってたら、自分で家事もやるようだし・・・