初夢の続きは (6) 『前兆』
- カテゴリ:自作小説
- 2010/05/13 20:15:02
歩いていた
鬱蒼と木々が生い茂る森の中を
光と影が織り成す迷路のような道を
どれだけ歩いたのだろう
頬を撫でる風は、やがて水気を孕み
気付くと小さな水辺へと辿り着いていた
周りは、霧が立ち込めていて良く見えなかった
じっと目を凝らして向こう岸を見ようとしていると
霧は徐々に晴れ、一人の女性の姿が浮かび上がってきた
驚くべきことに、女性は水の上に立っていた
そしてその女性は、優に良く似ていた
浮世離れした光景に、少々呆気に取られて見とれていると
女性は、ゆっくりと口を開いた
「貴方の探しているのは、遠い昔に失くしてしまった銀の斧? これまでずっと傍らに置いていた銀の斧? 先ほどまで握っていた銀の斧?」
「?」
返答に窮してしまった
この女性は何を言ってるのだろうか?
どれも銀の斧、だったらどれでも問題はないのだろうか?
いや違う、どれも謂れが違うのだから、きっと別の物
どれかを選ぶということが、何か得体の知れない力を及ぼす
そんな気がしていた
気付くと、また、周囲は霧に覆われていた
… … …
… …
…
「うわ!」
どうやら、また夢を見ていたようだ。
ただこれまで、見てきた夢とは系統が違うと感じていた。
「やけにリアルな夢だったなぁ」
自分で言っていて、妙なことを口走っていると思った。
水の上に女性が浮かんでいて、その女性が優…。これのどこがリアルなのだろうか?
光景としては、前に覚えていた夢の方がよほどリアルなはずだった。
けれど、これをリアルと捕らえてしまう自分。
奇妙な違和感が、一瞬脳裏を掠めた。
脳内を整理しようと、一呼吸付く。
違和感の正体…。
けれども、もっと差し迫ったリアルがそいつをかき消してしまった。
「ヤバイ、遅刻だ!」
悟はずいぶんと寝過ごしてしまっていた。
学校へ向かって走る途中、思い出していたのは優のことだった。
水辺に立っていた人が似ていたと言うのもあるが、最近は良く、優と登校していたのだ。
桜並木で、優が待っていて、そこから2人一緒にというのがパターンだった。
だが今朝は桜並木まで回っていく余裕は無さそうだった。
(まあ、さすがにこの時間、待ってはいないだろうな)
悟は、桜並木へとは行かず、まっすぐに校門を目指した。
無情にも、校門は閉じており、腕組みをした風紀委員と生活指導の先生が少し怒気をはらんだ目で見つめていた。
昼休み、悟の教室へ優が現れた。すこぶる不満そうな表情で
「先輩!なんで私を置いていくんですか?」
「いや、遅刻しそうだったんだよ」
「私だって遅刻しそうになっちゃいましたよ!」
来なかった事へか、遅刻しそうになったからか不満そうな優に悟は即座に謝ることにした。
「本当に、ごめんね」
「まあ、いいですけど」
もしかして機嫌が直ってきた?
悟は、淡い期待を込めてそう考えることにした。
「あれ~でも コホッ コホコホコホ」
優は、何かを言いかけたが、急に咳き込んだ。
そのやけに重そうな咳に、悟は少し戸惑ったが、すぐに背中をさすってやった。
「大丈夫か?風邪でも引いたんじゃないか?」
「へいきです…ちょっと咳がでただけですから」
「お詫びと言っちゃなんだけど、放課後にマックでも奢るよ」
「本当ですか?」
「だから元気だせよ!」
「はい」
優は機嫌よくクラスへ帰っていった。
(まったく混み過ぎだよな…)
悟は、トレイを抱えたまま、席を取っているはずの優の姿を探す。
すると、椅子にもたれかかれるように、倒れている、優の姿が目に入った。
とっさに駆け出し、トレイをテーブルに乗せ、優に近づいた。
優の顔は蒼白で、苦しそうに荒い呼吸をくり返していた。
「優!? どうしたんだ 大丈夫か?」
悟は、優を抱え起こした。
その体は熱を帯びていて、驚くほど熱かった。
(やっぱり、風邪を? なんで気付かなかったんだ!)
悟に、起こされると、優は虚ろな目をしたまま
「あ、先輩…」
と言った。
「なんで、倒れるまで我慢するんだよ。具合悪いなら帰って…」
悟の言葉を優の言葉が遮った。
「何言ってるんですか?ちょっと立ちくらみがして転んじゃっただけですよ」
優は、力なく首を横に振った。
この熱い体が、それはウソであることを正直に語っていた。
こんな状態になってまで、何故こうも強がる?
悟には、わからなかった。
「家まで、送るから帰ろう」
悟は優を抱えあげようとしたが、優は椅子にしがみついてそれを拒絶した。
「…イヤ」
「?」
良くみると、優の瞳は濡れていた。
「ダメなんです、今日はまだ帰れないんです」
「どうして?」
こんな状態で、まだ留まろうとする優。
悟には、本当に意味がわからず頭は『?』で埋め尽くされていた。
「先輩との初デートだから、…こんなので終りじゃイヤなんです」
優は、声を振り絞るように声をあげた。
ようやく悟は、理解した。
「わかった。今回は練習な、初デートは次回にしよう」
優が、それに答えることはなかった。意識も朦朧としているようだった。
ったく…悟は優の体を抱きかかえると、彼女の家へと急いだ。
悟の気持ちは夢の内容と同じくぼやけた感じなんでしょうか?
読者としてはそこがジラされてる気が・・・
女の子同士のそれぞれに対する気持ちも知りたいような・・・
別にドロドロを期待してるわけではありませんw
優については私も中学生の時に委員会の先輩に時間を合わせて
駅までのたった10分を一緒に登下校してたのを思い出します。
お互いに違う道に進んで大学4回生まで付き合ったのですが、
長すぎた春は実らずでしたねぇ。
優の気持ちわかります。
優の風邪ってただの風邪?冒頭の夢が凄く意味深なんですけど^^
続き待ってますw
私はどこに置いてきたのだろうwwww
デートをしてても、具合が悪いから帰るじゃなくて、
機嫌が悪くなったから、具合が悪いと言って帰る、みたいな^^;(ひどい話だw)
なぜ水の上に立ってるのか…優は風邪ひいてるだけなの?
実はこの世の者ではなかったりしてぇ( ̄ω ̄;)
今後の展開に、この夢も関係してくるのかな?
優は悟に対して一生懸命だね。
みんなそれぞれの想いがあるからそれぞれ幸せになって欲しいけど
そういう訳にもいかないので、なんだか辛いですね。
(*^^*)続きを、楽しみにしていますね。
あ、昨日は、ありがとうございました。また、おじゃまさせて下さいね。
優ちゃんのこういう気持ちわかるなぁ(o^-^o)
続き楽しみにしていますw
って、続きが気になりますーー。
確かに2000文字で後半詰めた感じですかねぇ?
でも、言わなきゃ気づかないのに(^^;;
優ちゃん、頑張れ!!っと、何故か応援したくなりますね。
それにしても、冒頭の夢が意外というか、ちょっと笑えたのは私だけでしょうか・・・((●≧艸≦)プププッ
夢が夢を生んでいっているような、そんな感じがしたりもしますね。
今後の優の活躍に期待しちゃいます!!