握った手
- カテゴリ:自作小説
- 2010/05/20 18:47:10
食器と皿の擦れ合う音と暖炉で炎が爆ぜる音だけが部屋に響く
カチャ
彼より少し遅れてスプーンを置く
少し固めに焼かれたオムライスにセロリとハーブソーセージの効いたスープはもうない
食器を片付け洗おうとしたが
「洗わなくていいから席に戻って」
「はい」
彼に止められた
席に着くと彼は指をパチンと鳴らした
これを知っている
丸いケーキだ
使用人の人がケーキを卓上に運び終わり
立ち去るなり彼は切り分けて差し出す
「召し上がれ」
「いただきます」
「このケーキは苺を混ぜたスポンジの間にカスタードクリーム 上には生クリームやベリー それに桃を飾ったんだよ」
「あの」
「どうした?」
「どうしてですか」
「どうしてって?」
様子が変 困惑気味
訊いてはいけなかったのか
でも切り出してしまった
今まで何度か思った事を口にする
「どうして丸いケーキが食べれるのですか 今日のような寒い日に」
「そうだね」
ため息交じりに言う
私は応えずに彼の次の言葉を待つ
「私は今21歳だ そんな若さで世界を駆けまわる有名なチェロ奏者なのは知っているね」
「はい」
「考えたことあるだろう 自分の両親は誰なのか」
「何度かあります」
「今から13年前に起きた事件を知っているか?」
「いえ知りません」
「そうだろうな」
「どういう事ですか」
私は事件の内容と彼の示した態度に尋ねた
彼は 私がその事件を知らない事を分かっているような
当然だ というような感じだった
「13年前 政府に反対しデモが起きてデモ隊はある街に行った その街には政府に関係のある建物が多くあったんだ 政府側の軍はデモ隊を鎮圧するため対立した しかしデモ隊は収まらない むしろ悪化していったんだ ついに軍は本物の銃弾を使った デモ隊や軍人さらに関係のない人々まで巻き込まれた」
彼はそこまで言うと一息ついた
私は関係性が掴めないでいた
「その時 街外れの自然公園で遊んでいた子供がいた そのうちの一人の子供の親はデモ隊と軍が 戦う街で働いていたんだ そして巻き込まれた」
「子供は二人 7歳の男の子と5歳の女の子 君と私だよ マローナ」
息を呑んだ
「マローナ・エディカ 18歳の誕生日おめでとう」
頭の中が転がる 記憶が還る
森 噴水 ベンチ 男の子 暖かい日差し
「シャルク・ウィナ 私の名前だ」
繋がった 記憶が繋がった
また少しずつ明かしていきます♪
毎回コメありがとう((⋆・ω・⋆))
おぉッ!!
ついに、謎解きがきましたね!!
えっと・・・兄弟なんでしょうか?
それと、2人は日本人じゃなかったんですね(。・ω・。)
読みつつ、リアリティが凄すぎると感心してしまいましたΣ( ̄□ ̄
デモとか政府とかの所が凄いです(`・ω・´)
尊敬します・・・!