北の少年 砂海編 25
- カテゴリ:自作小説
- 2010/05/26 18:48:11
このお話は、友人のリクエストにより、篠原烏童さんの作品から共生獣(メタモルフ)の設定をお借りしています。ファンの方で不快に思われましたら、お詫びいたします。
長文なので嫌なんです~の方はスルー推奨^^;
感想のコメントはとても励みになりますです^^v
(ロヴが恋をした?いったい誰に?)
「ここまで言っても、まだそれが解らないかな?」
ハランの瞳の青い影が、さらに強くなる。
真剣だった表情に、ほのかな笑みも戻ってきた。
ジェンはそこで、はっと気がついた。
今までハランの話す言葉を聞いてはいたが、自分は少しも声を出して話していないことに。
なのに、目前の老人は疑問に思ったことに即答している。
「ハラン殿、あなたは…魔法使いなのか?」
自分が心の中で考えていたことを読み取って、ハランは答えていたのだ。
そんなことができるのは、魔法使いだけだ。
それも、かなり高度な技と力のある魔法の使い手に限られた。
人の心とは不思議なものだ。
魔法を使えなくても自分の心を守る意思は強固で、どんなに幼い子供でも容易に心中を覗くことはできない。
成人した大人の心はおさらだった。
ましてや、ジェンのように傭兵として訓練された戦士なら、意思で守る心の障壁は並大抵の力で乗り越えることができない。
その障壁をハランは難なく飛び越え、ジェンの考えを読み取っていた。
何の不自然も、ジェンの心に感じさせることなく。
いくらジェンが警戒を解いていたとしても、通常では考えられないことだ。
(死にかけの、私の意思が弱ってるのか?)
あっけにとられているジェンに、老人は人の悪い笑みを浮かべて話を続けた。
「まあ、それもある。ここは、何処でもない場所だ。私が死んだとき、なんとか孫を守りたい一心で作り上げた力の場所だからね」
(ロヴを守るために?)
「ああ、ロヴは底知れない魔法の力を持っている。そのため、魔法を使う者からみたら異常に目立つのだ。魔法を使うものが、力の痕跡をたどれるのは知っているかな?」
ジェンは肯定の返事をして、ハランの言葉を待った。
「ロヴは生まれたときから命を狙われていて、それから守るために故郷の国や、人里から離れた土地で育てた、が、とうとう一年前に敵の魔法使いに発見された」
唐突に、ジェンの脳裏に一つの映像が浮かび上がってきた。
木の皮がついたままの丸太小屋。
風が吹き渡る何処までも続く草原と、地平線に連なる雪を頂く山々。
時間は昼間らしく、太陽は中天にあった。
小さな畑を耕しているハランの姿と、丸太小屋の中に薪を運んでいる赤毛の少年の姿。
その少年は、ジェンが知るロヴより少し幼い姿をしていた。
ロヴが小屋の中に入っていった直後、明るかった世界がいきなり薄暗くなった。
映像のハランは、警戒した様子であたりを見回している。
そして空中の一点を見つめると、何かを叫んでその場に仁王立ちになった。
空気がぴりぴりと張りつめているのが、見ているだけのジェンにも感じ取れた。
異様に強い力同士が、ここでぶつかり合っているのだ。
ひとつはハラン、もう一つは…。
「そう、これがロヴを狙う相手の力だ。私は、ロヴの存在を相手から隠すことと、力を相手に跳ね返すことしかできなかった」
次の瞬間、力の拮抗が敗れ薄闇は消え去った。
世界はもとの明るさに戻ったが、ハランは地面に倒れていた。
さっきまで彼に宿っていた力は跡形もなくなり、ただ空っぽになってしまった老人の体があるだけだ。
映像はそこで途切れた。
「この後、私は最後の力を振り絞って、ロヴのまわりを守りの力で覆って、自分の魂をそこに縛りつけたのだ。ロヴが私を最も大切に思ってくれる限り、この守護の魔法は働き続けるのだが…それももう終わる。ロヴはお嬢さんを助けたいばかりに、無意識で魔法を使い始めた。意志の強い子だ。最後までやり遂げるだろう。そうすれば私がかけた守りの魔法は解けて、私の魂も逝くべき所へ逝かねばならん」
長い話を終えて、老人はため息をついた。
「もう少し、ロヴと旅を続けたかったがそうもいかん。死んだものは命の流れに還っていくものだ」
「ハラン殿」
「これから、力の痕跡をたどってロヴを狙うものが、行く手に立ち塞がって来るはずだ」
彼は言葉も無くハランを見つめるジェンの両手を握りしめ、心からの願いを告げた。
老人の両手は温かく、力強くて、とても死んだ人の手とは思えなかった。
「こんなことをお嬢さんに頼むのは忍びないが、どうかロヴを頼む。あれが恋したのがあんたで良かった。あれの本名は,ロウ・ヴェインという。この名と私の名前ハランをロヴに告げれば、あれは全てをあんたに話すだろう」
老人の姿がゆっくりと、薄れ始めた。
ジェンの両手を握るハランの手の感触も、ゆっくりと消え始めた。
「どうか目覚めてもこの話を忘れないでくれ。傭兵ジェン、頼む」
「解った、忘れない。誓う」
「ありがとう…」
そういって、ハランの姿は白い霧のようなもやの中に消えていった。
ハランさんも安心して旅立ってくれたかと思います。
彼の話が脳内で一人歩きはじめてるんよね=^^;
ロヴとジェンが国王と王妃…想像できひんw
どないしょう??
でもジェンに会えたので、安心して別の世界へ旅立てるね!
そして遂にロヴがどんなお方なのかを知る時が来るんですね!
もしや、いつかジェンはお妃様に??
ん~ちょっと年はなれすぎか~??
寒かったですかw?(と、わざとぼけてみる^^;)
いい感想をありがとう^^
年のせいかの〜 w
お祖父さんがいなくなったら、ロヴは否が応でも頑張るしかありません。
作者の偏愛から、どうやって逃げ切るか、見守ってくださいね。
安心してゆくべきところへ行けるように
ロヴ がんばってほしいです^^
ロヴの魔法修行、長そうです。
がんばってほしいぞっとw
ロヴがすごい魔法つかいに
なりそうで楽しみですね♪