北の少年 砂海編 27
- カテゴリ:自作小説
- 2010/05/28 21:03:51
このお話は、友人のリクエストにより、篠原烏童さんの作品から共生獣(メタモルフ)の設定をお借りしています。ファンの方で不快に思われましたら、お詫びいたします。
長文なので嫌なんです~の方はスルー推奨^^;
感想のコメントはとても励みになりますです^^v
ラルムが壁にもたれて眠りこんでいるロヴを見つけたのは、湯が沸いたことを治療魔法士に知らせに来たときだ。
ぐったりと壁に寄りかかっている彼の姿は、はかなくひっそりとした様子で、もう少しで見逃すところだった。
『ラルム、私の目が届かないときは、ロヴのことを頼んでいいか?』
唐突に思い出したジェンの言葉に、ラルムは後ろめたい気持ちを覚えた。
非常事態ではあったが、ロヴを無防備な状態で一人にしてしまったのだ。
今さらながら、彼を保護しなければならないという義務感にかられた。
ラルムは迷うことなく、ロヴのそばまで歩いていった。
少年のそばに膝をついて、そっと彼の肩をゆすった。
「ロヴ、こんなとこで眠ったら風邪をひくぞ?」
ロヴはゆっくりと目覚め、緩慢な動作でラルムの顔を見上げた。
青白い月光に照らされたロヴの瞳には、涙の後があった。
大切な何かを失ったかのような、喪失感と悲しさがその表情にうかんでいる。
大きな悲しみに囚われているらしいロヴの様子に、ラルムの心臓はどきんと大きく鼓動を打った。
(まさか、ジェンの身になにかあったのか?)
ロヴがここまで悲しむ理由は、今はそれしか思いつかない。
「ロヴ、しっかりしろ!ジェンの身に何かあったのか?」
大きく肩を揺さぶって声をかけているうちに、虚ろだった少年の目に光が戻ってきた。
ラルムの顔に瞳の焦点があって、やっと彼の存在を認めたようだ。
「ラルムさん」
掠れた小さな声だが、そうはっきりと呟いた。
「どうしたんだ、ジェンに何かあったのか?」
「ジェンは、大丈夫。でも、でも」
ロヴは大きなラルムの胸にしがみついて、嗚咽をこらえた。
声を立てまいと歯を食いしばって、静かに涙をこらえていた。
泣きたい時に泣かないのは、体にも心にも大きな負担となる。
ラルムは今までの自分の経験から、このことを学んでいた。
だから、そっとロブの背中に手を回して、小さな声で少年に話しかけた。
「ロヴ、何があったか知らんが、泣きたい時は泣いていい。我慢はよくないぞ」
そっと背中に回されたラルムの大きな手は、ハランの最後の抱擁を思わせた。
「ラルムさん、俺…」
「今は何も話さなくていい」
ロヴは、静かに泣き出し、最後には大きな声でほんとうに逝ってしまったハランを偲んで泣き続けた。
「奥さん、落ち着きましたか?」
銀の酒杯に入った暖めた葡萄酒をさしだし,ケニスはメルガの顔を覗き込んだ。
傭兵たちに守られてケニスの元へ帰ってきた時のメルガは、さすがに青ざめて今にも気を失いそうだった。
ケニスはすぐさま使用人に指示をだして、女性二人が心安らかに過ごせるように細やかな手配を整えた。
今一度、あたたかな湯と使用人達の世話とで落ち着いたメルガは、ほとんどいつもの彼女に戻っていた、
さすがに疲れた表情ではあったが。
深々と椅子に腰掛けていた彼女は、身を乗り出して夫から酒杯を受け取った。
湯気をたてる葡萄酒から、すばらしい花の香りが漂ってきた。
バーリの冠の香油を垂らしたのだろう。
ケニスの細やかな心遣いが、疲れたメルガの心を温かくさせた。
「もう、大丈夫ですわ、あなた。ジェンが命がけで守って下さったのよ」
「そうだね。人狼に立ち向かうとは、たいした戦士だよ」
「ええ、素晴らしい戦いぶりでしたわ」
跳躍して、獣人の影にジェンが襲いかかる様子を思い出して、メルガの心は乙女のように高鳴った。
あんな恐ろしい目にあったというのに、あの一瞬だけは、幻想的で美しく忘れがたい光景だった。
思い出すだけで、はらはらどきどきするのだ。
「奥さんは、あの人狼が何を話していたじか覚えていますか?」
「え?ええ、『ロウ・ヴェインはどこだ』みたいなことを言ってましたわね」
「ロウ・ヴェイン?…それは、ロウ・ゼオンの王族や貴族によくある名前だが…」
「ジェンから匂いがするみたいな事を、しつこく話していましてよ」
「ジェンからですか?ロウ・ヴェインの匂いがすると?」
「ええ、間違いありませんわ」
あれほどの非常事態だというのに、メルガの記憶は鮮明だ。
(これだから、この奥さんには敵わないのだよ)
ケニスはそう思い、ロウ・ヴェインという名について考えをめぐらせ始めた。
確かに伏線を回収できて。嬉しかったよ。
こういうのを作者冥利につきるというのかw?
ロヴ、がんばっていい男をめさせよw
ラルムさんほど余裕のあるね。
たかりんが、彼を気に入ってくれて嬉しいな♪
かっこいいもんね~^^ワカルワカル
私はね…ラルムの逞しいけど、優しい感じ好きなんだなぁ(◔‿◔。)♥ポッ
ロヴはハランにもう一度会えて、ひきかえにもう一度失った悲しみも味わっちゃってるね!
でもそれは、結果として彼をもう一回り大きい男に育てるんだろうな!
これから少しづつ色んなことが、つながっていきそうだね~
そうだね。
安心と、それから夢の中でおじいさんと本当に分かれたからね~。
ジェンが助かって
大人の人に囲まれてがんばっていたから
安心して涙が出てきたんだろうね^^
真に強い人は、恐怖に襲われても、もう一つ別の視点があるような気がするんです。
そう思って、こんなキャラになりました。メルガ奥さんw
恐怖のシーンで一人だけ違う視点で見てる。楽しんでる。
こういう強さのあるキャラ好きです
奥様の乙女心、きっとその琴線にふれたんだと思います(何が?)
ケニスさんは…さて、どうなるでしょうか?
下のコメについては、漫才だと思ってくださいwww
奥様は あんな怖い目にあっても わくわくする事を胸に刻んでるんですね~
好奇心旺盛さが ステキです^^
ケニスも何か気づいてしまうのだろうか・・・ 心配ヾ(・ω・`;)ノ
メルガの場合は、たんなるミーハーだと思いますがw
え~私に昼ドラを書いて欲しいんですかw?
ここから三角関係泥沼の昼ドラ とはいかんだろーね
あ、やっぱり^^;