Nicotto Town ニコッとタウン

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「薬罐」


薬罐がシュンシュン沸いている
金ピカの鍍金も剥げて醜く
歳月も嗤いながら過ぎてゆき
薄暗いキッチンに
ベランダの閉め切ったままのカーテン
隙間から差し込む光の筋

微睡むよう眉間に皺を寄せたまま
鬱蒼と心が渦巻いていた

薬罐がシュンシュン沸いている
カタカタ蓋が せわしなく
焼けつくような息を吐く
「恨みます」「恨んでいます」

部屋の中いたる所に憎しみの声が響き
とうとう堪らなくなって
引っ掴んで薬罐ごとベランダからぶちまけたい衝動に
夢か現か救いを求め

見上げれば
お日様ぽかぽか浮かんでた

全身で光を浴びて
目蓋の裏で見たものは
小さな黒い石だった
あっちこっちで飛び交って
奇跡が暗い影となり
巨大なドームをつくってた

「風穴を!」 そう聴こえたのは 幻?

心の中 光が射し
黒い小さな石は だんだんに溶けてった
絡まり合っていた奇跡も
そっとほどけて

薬罐がシュンシュン沸いている
じわりと痛みを溶かし込んだ苦味
カップの中の小さな闇
珈琲を飲むたびに想い出す
目映い光にっこり笑う お日様を

#日記広場:小説/詩




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