北の少年 砂海編 28
- カテゴリ:自作小説
- 2010/05/30 20:36:24
このお話は、友人のリクエストにより、篠原烏童さんの作品から共生獣(メタモルフ)の設定をお借りしています。ファンの方で不快に思われましたら、お詫びいたします。
長文なので嫌なんです~の方はスルー推奨^^;
感想のコメントはとても励みになりますです^^v
人狼の来襲と戦闘、傭兵ジェンの負傷と、騒動が続いた長いバールオアシスでの夜が、ようやく明け始めた。
地平線から登る太陽が、薄闇の砂海を一気に黄金の世界へと染め上げてゆく。
毎朝、この光景を楽しみにしていた赤毛の少年は、まだ懇々と眠り続けていた。
ラルムの胸で悲しみにくれていた少年は、泣き疲れてそのま気を失うように眠り込んでしまった。
その体を宿舎の部屋まで運び、寝台に寝かせつけたのはラルムであった。
何がこの素直で無邪気な少年を、ここまで悲しませているのか?
ラルムも気にはなったが、疲れきっているロヴを起こす気にはなれなかった。
話は彼が目覚めてからでいい、そう判断したのだ。
夜が明けたら忙しくなるだろう。
生け捕りにした人狼から、いろいろと聞き出さねばならない。
この人狼をこれからどうしたらいいのか。これからの旅をどうしていくのか、ケニスと打ち合わせをする必要もある。
ラルムは眠るロヴを見守り、時々うとうとをしながら残りの夜を明かしたのだった。
今、窓から見える荘厳な夜明けの光景を眺め、長くなりそうな今日という日について考えをめぐらせはじめた。
ジェンが目覚めたのは、夜明け時だった。
窓から金色の光が顔にあたって、眩しく思ったのだ。
全身ぐったりとして疲れ果てたような気がしたが、気分自体は不快ではなかった。
それどころか、なんだか清々しいような不思議な気分だった。
それと、切ないような悲しい感情もあった。
(何故、悲しいなんて思うんだ?)
そう思ったとたん、様々な記憶が瞬時にジェンの心に蘇ってきた。
人狼の襲来、一瞬の隙を見せたための負傷、ラルムやカイルとの共闘。
そして…ハラン!
赤毛混じりの白髪と、日によく焼けた皴深い笑顔、ロヴと同じ青い影がうかぶ灰色の瞳。
印象的な老人の顔が、脳裏をかすめていった。
彼がジェンに伝えた話しも、鮮明に思い出す。
まるで記憶に刻まれたように、一言一句覚えている。
記憶の奔流に驚き、ジェンはいつの間にか寝台で半身を起こしていた。
(ジェン、気ぃついたんか!?)
寝台の足元で寝ていたカイルが、目を覚まして彼女のそばに駆け寄ってきた。
「カイル…」
ジェンは無意識に共生獣の小さな体を抱き寄せ、その滑らかな銀の毛をそっと撫でた。
滑らかで柔らかな感触と、掌に感じる暖かさが生きているという感触をジェンに伝えてくる。
「カイル!」
ジェンはいきなりカイルを抱きしめて、その小さな体に頬を摺り寄せた。
(うわあ~~!苦しいやないか~!いきなり何すんねん!!)
いきなり抱きしめられたカイルはパニック状態で、全身の毛を逆立て手足を突っ張らせた。
「心配かけたな。もう大丈夫だ」
(ジェン…よう帰ったなあ。お礼はロヴにいいや。あの坊主はたいしたやっちゃ)
ジェンの腕からなんとか脱出したカイルは、ジェンの正面に座り込んで真剣な眼差しでジェンを見上げた。
(ロヴはなあ、あれは凄い魔法使いの素質をもっとるで)
「そうだろうな」
そう声で答えたあと、ジェンは心の中で後の話を続けた。
(カイル、死にかけてロヴの祖父と出会ったよ。ロヴの本名はな…ロウ・ヴェインというそうだ)
(なんやって?ロウ・ヴェインて名やて?ロヴがか?それ、どういうことやねん?ロウ・ヴェインてゆーたら、ロウ・ゼオンの王族に多い名前やで~!)
カイルの驚愕した声が、ジェンの頭の中にこだました。
その大きさに顔をしかめつつ、ジェンはカイルにたずねた。
(その、肝心のロヴは何処にいるんだ?)
(ええ?いや、その、何処やろうな?ちょい探してくるわ~)
今の今まで、すっかり少年の存在を忘れ去っていいた共生獣は、後ろめたく思ったのかあわてて外へ走っていった。
「まったく、カイルは落ち着きがない…」
そう呟きはしたが、両手に残るカイルの暖かさを嬉しく思いつつ、生きていることを心から有難く思うジェンであった。
共生獣の設定は篠原烏童さんという漫画家の作品からお借りしました。
しかし似ても似つかない存在になってしまったw
もう、名前だけお借りしたような感じです^^;
相棒であり、友であり、心癒されるペット?の面もあわせたカイルちゃん。
共生獣って素敵だね♪
ありがとう^^
お付き合い、よろしくお願いしますm( )m
脳内映像が気持ちいいので 苦になりません^^
長いかも知れませんが、なるべく話を進めたいと思います。
長くてすみません^^;
ロヴとジェンの 話合い・・・ どうなりますか^^