オトナの見る夢 「天の光はすべて星」感想
- カテゴリ:小説/詩
- 2010/06/02 03:45:27
フレドリック・ブラウン「天の光はすべて星」 読了。
(以下、ネタバレ的なこともあるので、注意)
SF好きにも2種類ある。アウタースペース好きとインナースペース好き。
私は前者が苦手な後者派。
だからクラークやホーガンが苦手。“読まず苦手”なところもある。
ハインラインも「宇宙の戦士」じゃなくて「夏への扉」が好き。
そんな私が泣いた宇宙モノ。「天の光はすべて星」。
泣いた泣いた。滂沱どころではない。しゃくりあげの子ども泣き。
しゃくりあげ泣きなんて、「アルジャーノンに花束を」と「ガラスの仮面」9巻?以外にないよ。
1997年から2001年までの、歴史としては過去だけど、自分の過去と現在と未来を思わせる、宇宙と木星に思いを馳せる男の物語。
だけど、クラークのおっさんたち?よりも夢見がちで、ブラッドベリの少年よりもオトナな、ちょうどいい具合の、夢見るおじさんのおはなし。
おじさん、夢見すぎてて、読んでいる途中で
「この人、木星に行きたい気持ちはわかるけど、その行動は、ちょっとキ●ガイだよ。
傍にいたら近づきたくないヤバイ人だよ。
ていうか、読んでて既に、ちょっと私、引いてるよ」
って思うくらい、一生懸命。
ただ、うまく昇華された書き方なので、それほど変じゃない。
むしろ、彼の時代の、彼の世代の、“星屑”と呼ばれる宇宙バカの純粋さを表している。
だからこそ、最後の絶望に、涙してしまうのだ。
そんで、最後の希望に、また涙が……
そして、彼がどうしても受け入れられない、もうひとつの「宇宙への行き方」。
(文中ではあえて述べられてはいないけど、それは彼が一度試み失敗した「ミシン」の方法でもある)
相容れないけど、彼はその成功を祈る。
そして、自分とは生き方も考え方も違う弟。
相容れないけど、彼は弟を誇りに思う。
みんな良い人ではないけど、みんな一生懸命生きて、それぞれの(ささやかな)夢を見ている。
泣けるなぁ。
短編と同じように、簡素で、分かりやすい文章。
感情的でない淡々とした感じが、余計に感情を揺さぶってくれる。
惜しむらくは、解説がね。無くてもいいなぁと。
でも「グレンラガン」のおかげで、再販がかかったんなら、ま、いいかって感じ。
私もアニメ「巌窟王」から、「渚にて」を読んだクチだし。
やっぱ、今アニメやゲームで活躍している同年代(私、前後5歳)くらいの男の人って、SFで夢見て育ってるある種の“星屑”だから、エヴァの「世界の中心で・・・」とか、まあ、身近でも色々、リスペクトしたいんだよね。きっと。
そんな意味でも、今現在と私たちの未来を描いている物語とも言える。
「木星」というキーワードつながりではないけど、シマックの「都市」なんかは、若い時に読んで心揺さぶられる本だと思う。ブラッドベリも、若いうち。
でも「天の光はすべて星」は、もっと年いってからでもいい。
おっさんとおんなじくらいの年になってから、読み直していいと感じたアラフォーの初夏でした。
はやぶさ系で泣けるヒトならお薦めですよ。ぜひぜひ。
僕はアウタースペース好きだったけど、この本は読んでいなかった。
羊さんの感想読んだら読みたくなりました。
はやぶさのライブ放送みてて泣けちゃったけど、涙腺が緩んでいるのでちょっと怖い・・・
読むわ
ってか 「ガラスの仮面9巻」に匹敵するなら 読むっきゃないでしょ