北の少年 砂海編 32
- カテゴリ:自作小説
- 2010/06/05 19:47:16
長文なので嫌なんです~の方はスルー推奨^^;
「祖父の名はハラン。一年前に急な病で亡くなりました」
元気なころのハランの笑顔と、亡くなった時の蒼白なハランの顔が思い出されてロヴは言葉につまった。
泣けなくて喉に何か詰まったような気持ちと、胸の痛むが蘇ってきそうだ。
声変わりした少年の声は、かすれ気味で話しにくそうだった。
その上、どうしようもない悲しみが重なって、さらに話を続けることが困難になった。
ジェンの前で涙はみせたくない、泣き虫だと思われたくない。
その一心で、ロヴは泣くのを必死にこらえた。
小刻みに震える背中と握りしめたこぶしが、ロヴの心情をよくものがたっていた。
ジェンはロヴの感情が収まるまで、ただ黙って見守っていた。
こんな時、手を差し伸べるのは容易い。
優しく抱きしめ、同情の言葉をかけてやればいい。
そうすれば、こらえた涙が素直に流せる。
だが、悲しみを乗り越えるのが先になってしまう。
これが傭兵として生きたきた年月と、いくつもの悲しみ乗り越えてきたジェンなりの思いやりだった。
やがて嵐に見舞われていたロヴの心も、どうにか凪いできたようだ。
顔をあげ、視線をどこか遠くにあわせて、再び話し始めた。
「祖父の遺品を整理して、この短剣と祖父の手紙を見つけたんです。手紙には、俺の本名がロウ・ヴェインだということ、俺の両親が殺されたこと、短剣が両親の形見だということが書いてありました」
ここで一度言葉をきって、ロヴはジェンの顔をみつめた。
ジェンの目は、相変わらす黄昏時の雲の色だ。
ジェンは何も言わず、ただ変わることなくそこにいてくれた。
泣きかけたら優しく慰めてくれる。
そう思っていた。
今まで出会った人は、誰もがそうだった。
昨日のラルムでさえもだ。
泣くのは優しい。同情も嬉しい。でも今は、そうして欲しくなかった。
ジェンの前で泣きたくないと思った。泣きじゃくる子供ではいたくない。
ジェン本人から同情されたら、きっと泣きくずれてしまっただろう。
そんな姿を、何故かジェンにはみせたくなかった。
何も言わずにそばにいるジェンの存在が、とても心強かった。
ロヴは再び話し始めた。
「俺は、魔法王国ロウ・ゼオンの王子なんだそうです。あとで祖父の手紙をあたなに見せます。祖父が夢に現れて、あなたが俺の本名を告げるから全てを話すようにて言ったので。信じないかもしれないけど」
言葉を切ったロヴに、ジェンはそっとさめた花茶をさしだした。
芳香と甘みのある花茶は、ロヴの痛む喉をさわやかに潤した。
「この短剣は、本当はとても綺麗なものなんです。旅にでようと思ったとき、あまりにも俺に相応しくない宝だったので、なんとかならないかと思ったら、この短剣は今の姿になりました。昨日の晩も、あなたを助けなくちゃて思ったら元の姿になって・・・その後、俺が何をしたのかわからないけど、気が付いたらあなたの怪我は治っていたんです」
「わかった、ロヴ。もう話さなくていい。つらいだろうに、無理をさせてすまなかった」
ジェンはそういって、ロヴから飲み終えた花茶の杯を受け取った。
「今度は私が話す番だ。なるべくまとめるが、長い話だ。お前にとってはとてもつらい話になる。それでも聞く気はあるか?」
ジェンはロヴの瞳に視線を合わせ、静かな声で語りかけた。
覚悟はいいかと、ロヴはジェンにそう問われたような気がした。
「私はロヴの祖父ハラン殿から、伝言を預かったと思っている」
「爺・・祖父の?」
「そうだ」
「話してください、ジェン」
ロヴの瞳が灰色から淡い水色に変化した。
表情も何かを決意したように。真剣なものになった。
「ハラン殿は病死じゃない。お前の命を狙ってきた魔法使いと戦って、亡くなられた」
ジェンは、自分が視たハランの最期をロヴに話して聞かせた。
ハランが亡くなってから今まで、ロヴを守っていたのがハランの魂であること、その魂がロヴのそばを離れて、還るべき所に旅立っていったことも。
忘れないと誓ったことを、全て少年に話して聞かせた。
(ロヴ、ハラン殿の最期をしっかりと受け止めてくれ。私はお前の強さを信じる)
内心そう願いながら、ジェンは話し続けた。
「だから、お前は魔法使いだ、ロヴ。そのおかげで私はこうして話している」
長い、とても長い話になった。
語り終えたジェンは小さくため息をついて、ロヴの様子を見守った。
彼は今の話をどう受け止めただろうか?
彼の静かな表情からは、どんな感情もうかがう事ができなかった。
ただ、瞳の色だけは淡い水色に変化したままだ。
ときおり濃い青の影がかすめていく。
やがて、少年の瞳は鋼のような冷たい灰色に落ち着いた。
「ジェン、話してくれてありがとうございました」
かすれた少年の声に、鋼のような強さが宿っていた。
「祖父からの伝言、確かに受け取りました」
ロヴはそう言って、ジェンの瞳を見返した。
その視線の強さは幼い子供ではなく、大人の男性の強さを備えているようだった。
お元気ですか?
ロヴは少し大人になってくれました。
作者としては嬉しい限りやけど、ちょい寂しい(笑)
慰めももちろん優しさだけど、
今のロヴには成長を見守るジェンの優しさの方がずっと重要だよね!!
悲しいときに、心からほしかった言葉を頂いたとき。
ほんとうにありがたいと思います。
キジトラさんの感想も、ほしかった言葉です。ありがとうございます。
悲しんでいる人の助けになる言葉は微妙に違ったりしますね…。
ロヴ君が秘密を共有できるのが、ジェンみたいに前進する事を静かに促せる人で
良かったです^^まだ娘さんなのに人間力ありますね~>ジェン
だあくさんはやはりお母さんですね。
そんな風に感じていただけると嬉しいです^^
瞳の色の変化って、日本人の瞳ではわかり辛いんで、楽しんで書いています。
ルトガー・ハウアーさんという俳優さんはそれは綺麗なブルーアイで光によって、
瞳の色が変わるのが印象的でしたw ねっこはこの辺かな?
なんだか 息子も そうやって知らないうちに 成長してゆくかと思うと
うるうるしそうです (。-`ω-)んーーー ガマン!
ラトさんの 瞳の色で感情を表すというか・・
脳内映像は とってもキレイなんですよ~~~~
いつも感想をありがとう^^
ロヴももっともっと強くなってくれると思います。
これからもよろしくね。
ロヴ、やっと成長一段階ですw 収穫はまだまだですが(草花やないw)^^;
ダブルヒーローのような形に持っていけたらいいんですが。
本当に今まで旅をして色々な経験をして
強くなった気がします^^
これからはみんなを守れるぐらい
強くなった青年になったみたいですね(^_^)v
主役二人体制が始まりそうだね♪
ロヴの成長と活躍を期待してます。