不思議駄菓子屋と中2の夏 其弐
- カテゴリ:自作小説
- 2010/06/13 19:45:23
「叔母さん家に、お中元持っていってくれない?」
朝飯を食っていたオレに、母さんが言った言葉がこれだった。
「え・・・なっ。」
と、言いかける。
危なかった。と、心の中で安堵。
さすがに、14年間一緒に生きてきてわかるようになってきた。
こういうときに、母さんの後ろから出ている『黒いオーラ』。
このオーラが出た時には、頼みごとが、
『持って行ってくれない?』から、
『持って行け』にかわるのだ。
これは・・・断ったら、晩飯抜きになるな。
と、頭の中で考え・・・こくり。とうなずく。
「行く。うん。行く。」
「ほんとぉ!ありがとねえ。」
母さんは、満面の笑みでいってくる。
もう断れなくなった。
「で。何を持っていけばいいんだ??」
「これ。」
と言って、持ってきたのは・・・和菓子の詰め合わせ。
よかった。軽かった。
「途中で食べたりしたらだめよ。」
「食べないよ。緑也じゃないんだし。」
「ボクも、食べないもん」
横で絵日記を書いていた緑也が、にらんでくる。
「はいはい。すいませんでしたあ。」
謝る気はそうそうない。
「おばさんの家どこにあるか分かってるわよね?」
「うん。学校前の坂下がって、唐草の駄菓子屋のところ曲がるんだろ??」
と、ごちそうさまのポーズをしながら言う。
「そう。じゃあ、いってらしゃーい。」
「・・・・・・・・・・・・・・今から!?まだ、8時30分だぞ!」
「さあ、そんなこと言わずに」
そんなこといいながら、母さんはオレの背中を押して玄関へ導く。
押されるものだから、オレは思わずスニーカーをつっかけのようにはいて、
片手にお中元を持って、家の外に追い出された。
「ちょっ!おい!待てよッ!」
と、ドアをどんどん叩いて、抗議する。
さすがにうるさかったのか、カギが開く音がした。
少ししてから、ドアが開いた。
玄関から出てきたのは、麦わら帽子をかぶった緑也だけだった。
「兄ちゃん。これ。」
といって、緑也が紙切れと、オレの財布を渡してきた。
紙切れには。
『叩くな。家に入れないぞっ♪』
と、書いてあった。
・・・・・・まじかよおお。
ココが漫画の世界なら、オレの後ろに大きく『ガーンッ!!』と書いてあったであろう。
とにかくオレは、
麦わら帽子をかぶった7歳の弟と、
所持金360円と、
お中元を片手に、
叔母さんの家に行くという、無理矢理で波乱万丈なおつかいが始まった。
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- ちぇしゃ猫@るい
- 2010/06/13 23:12
- 波乱万丈なおつかいってなんやねんww
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