春への幻想
- カテゴリ:自作小説
- 2009/02/15 07:32:46
3、幻想
女性は私に声をかけてきた。
「こんばんは。」
私は驚いた表情を取り繕いながら、挨拶を交わすことになった。
「こんばんは。」
その女性は、笑顔で私に話しかけてくれた。
「何をされているの?。」
当然、死のうと思って来たとは言えるはずもなかった。
「ちょっと夜風に当たりに・・・あなたは?。」
「私もです。今夜は暖かくて気持ちがいいわ。」
「こんな時間にお一人で・・・怖くはないですか?。」
「ええ、私この近所ですから。」
私たちは、少し歩きながら話す事にした。
他愛のない会話の中で、私はこの人にもう少し話してみたくなった。
「私は全てを失ってしまったんです・・・。」
「そんな事はないわ、あなたはまだ生きていらっしゃる。」
「いえ、そうなんです。仕事も、信じていた恋人すら・・・。」
「あなたは強い人よ、私にはわかります。」
「今逢ったばかりのあなたに、何がわかると?。」
「わかります、あなたの全てが。」
その人の目は、私の全てを見透かしてしまっているようだった。
美しい人だった。
私たちは水辺を歩いていた。
ふいにその人はこんな事を言い出した。
「奇跡を信じる事はできますか?。」
「奇跡なんて・・・例えばどのような奇跡ですか?。」
「一瞬であなたを幸せな気持ちにする奇跡です。」
「そんな事は・・・ありえない。」
その人は優しく笑いながら、私を見ていた。
「幸せって、意外に近くにあるものじゃないかしら。」
その人がそう言うと、急に足元が明るくなったような気がした。
私は目を疑った。
さっきまでつぼみだったレンゲが、一斉に開花しだしたのだ。
まるで、薄紫色のじゅうたんの上にいるようだった。
「あなたならできるわ、だってあなたは強くて優しい人。」
私は一面に咲き誇るレンゲを目の当たりにしながら訊いた。
「君は・・・誰なんだ?」
「私は、この川の一部になった者。」
「まさか・・・」
振り返るとあの人は消えていた。
「ミント・・・」
やがて不思議な夜は白々と明けてきた。
あの人が言った言葉を、私は頭の中で何度も繰り返していた。
「幸せって、意外に近くにあるもの・・・」
これ以上失うものがなくなった以上、幸せなんてどこにでもあるのではないか?。
私は初めて味わった挫折を、乗り越える事が出来るような気がした。
そして私は、生きる事を選んだ。
終
そっか、そうでしたね。
彼・・・人間の彼氏とお別れしたお話かと・・・。
そう、自分で書いた話の内容を見れば、解りますよねぇ。
淋しい想いをさせてしまいましたね。
ごめんなさい。。。
でも思い出というにはまだ私には早すぎます。
この前亡くなった茶色いヤンチャなやつなんで(^^;
今も、これ読んでまた泣いてしまいました。
あぁ、青い鳥・・・読んでないわ。
そそ、意外と探していたものは身近にあったりするもんですね。
靴下を左右ひとつの足に履いて、もう片方を探していた野球選手がいましたね。
自分を客観視できる人間ならば、そんな事はないでしょうけど・・・
そういう人は一人しか知りません。
彼の名は・・・デューク東郷。
それはいい思い出?
それとも暗い過去?
どちらにしても、廉さんにとって忘れられない思い出なんですね。。。
そうなれば一番いいですね。
希望を持てば、きっとなるって信じましょう。。。
探し物は「灯台もと暗し」だし。
眼鏡を探していたら、頭に掛けてたし。
そんなもんかもね。