北の少年 砂海編 39
- カテゴリ:自作小説
- 2010/06/27 13:57:45
このお話は、友人のリクエストにより、篠原烏童さんの作品から共生獣(メタモルフ)の設定をお借りしています。ファンの方で不快に思われましたら、お詫びいたします。
長文なので嫌なんです~の方はスルー推奨^^;
(ケニスさんは、どうしてロウ・ヴェインの名を知ってるんだろう!?)
一瞬、ケニスが祖父の手紙を読んだのだろうかと、ロヴは疑った。
そして、即座に否定した。
ただの臨時雇いで下働きの自分の荷物なんて、彼が気にする筈が無い。
あまりに飛躍した自分の考えに、ロヴはさらに混乱した。
ケニスが言った人狼がロウ・ヴェインの名を話したという言葉は、彼の心にはまったく届かなかった。
『ロウ・ヴェイン』と言う本当の自分の名前らしい単語が、頭の中を駆け巡っている。
様々に表情を変える少年の顔は、他人がみたら生きている百面相を見ているようなものだ。
話していたケニスも、二人の様子を観察していたメルガもほんの少し呆気にとられたような表情で、焦る少年を見つめていた。
今にも立ち上がりそうなロヴを押し留めたのは、ジェンの一言だった。
「落ち着け、ロヴ」
大きくも、甲高くもない、低い静かな声。
それでも全身に染み渡る、言霊の宿る言葉。
ロヴも、メルガもこのジェンの言霊の宿る言葉を聞くのは2度目だ。
二人とも状況こそ違うが、ジェンの言霊を聞いたのは『逃げろ』の一言だった。
ケニスは初めてジェンの言霊を耳にした。
魂の奥底に届く、従わずにはいられない言霊の宿る言葉。
意志の強い者が、ごく稀にこのような言葉を発する。
見聞の広い商人のケニスでも、言霊の宿る言葉を聞いたのは、これまでに3度しかなかった。
一人はアルバの都を治める現太守。
あとは、とある有名な傭兵隊の隊長と、名も無い旅の剣士だった。
これで4度目となる。
(『疾風のジェン』が言霊を使うとは知りませんでした。あるいは、本人も自覚していないかも知れませんが…)
ケニスは改めて、自分の雇った女傭兵を見直した。
まだ青ざめた表情ではあるが、灰色の瞳には生気があふれている。
決して美人とはいえないが、どこか人の目を惹きつけるような、まっすぐないい表情をしていた。
このような表情をしている人物は、けして人を裏切ることはない。
ケニスはそのことをよく承知していた。
(私は、ほんとうに掘り出しものを雇ったようです)
『疾風のジェン』は、けっして雇い主を裏切ることも、見捨てることもいない奇特な傭兵だ。
共生獣とコンビを組んで戦うから、腕はたつし信頼もおけるが、馬鹿な傭兵だよ。
自分の命が危ない時は、雇い主も任務もなかろうにな。
傭兵は生き残って何ぼだよ。
これが、ケニスが調べた『疾風のジェン』の評判だった。
ラルムが、この女傭兵を雇ってはどうかと話を持ってきたとき、まずは面白いと思ったのは確かだ。
これまでの旅路で、メルガの護衛として四方に目をくばり、常に自分の体を盾にして妻の護衛を勤めてきた仕事振りも完璧だった。
騎乗中は草原仕込みの乗馬法で、常に両手をあけ、黒ノエラの弓を使えるように備えてもいた。
今度の襲撃でも、メルガの安全を最優先として戦った。
ケニスはジェンの優秀さと、ロヴがロウ・ヴェインであることに確信を得たことに深い満足感を覚えていた。
(お前がなんとか、森に行けるようにしたる)
カイルは「敵」に対して大きな不安感を覚えながらも、人狼に向かってはそう話していた。
人狼は世にも珍しいものを見るように、共生獣を眺めていた。
金色の目を細めて、カイルに軋む声で話しかけていた。
「おまエ、何ヲいっているのカ、わかっているのカ?俺ヲ逃がすつもりなのカ?ばかなのカ?」
(えらいいわれようやなあ、おい)
笑いを含んだ心の声が、人狼の脳裏に響き渡った。
誇り高い共生獣にこんな事を言ったなら、八つ裂きにされてもおかしくはない。
それほど共生獣のプライドは高くて、孤高の生き物なのだ。
人狼が知っているのは、そんな共生獣ばかりだった。
それなのに、カイルという目前の共生獣は怒るどころか笑っている。
それが信じられなくて、人狼は戸惑うしかなかった。
「おまエ、変なやツダ」
(そうか?そうかもしれんなあ)
カイルは笑いを収め、真面目な調子で話を始めた。
(俺は、人狼にも人間にもどんな動物にも、生きる権利はあると思ってるんや。せやから、お前が主の命令に従ってジェンを襲ったのもこれは仕方がないことや。成り行きでお前を殺したとしても、俺らが殺さてもそれはしゃあない。でもな)
カイルは息を吐いて、人狼の金色の目を覗き込んだ。
(嘘の記憶で縛られたお前を、俺はなんとか自由にしてやりたいと思ったんや。まあ、俺の気まぐれゆうたらきまぐれやが。そのかわり、お前が知ってること全部話してみいひんか?)
人狼は長い間、沈黙を守っていた。
ジェンのポリシーは、なかなかのものだと思います。
傭兵としてはどうやろうなーとは思いますが。
「ばかなのカ?」 カイルはほんとうに、そうかもw
人狼の「ばかなのカ?」うけました~(^O^)
カイルと人狼。
さて、これからどんなッ展開になるでしょうか?
次回、カミングスーンといけるかなあw
がんばりますね~
関西弁のカイルは 心にすーっと 入ってきますね^^
人狼が どんな話をするのか 次回が楽しみです♪
そのようですね^^
人狼がどんな情報をいうのか、いわないのか?
次回をお待ちください^^
ロヴの正体も分かったみたいで
人狼がどんな?秘密を知ってるんだろうねー(^^♪
ケニスさんはあれこれの事実jから、推理してたどり着きました♪