ねえ、どうして…。

こんなにすてきなことなのに、どうしてこんなに切ないんだろう。。

目の前の世界は、こんなにあたたかいのに…。どうして僕の心は、こんなに凍えているのだろう。。

祝福の笑みを贈りたいのに、どうして自分の顔は、言うことを聞いてくれないんだろう。。

　　　　　　　　　　　　　だ　れ　か　、　た　す　け　て。


ううん、違う。。本当は、そのときの僕は、感情を持つことは許されていなかったんだ。

冷静、というマスクをかぶって、淡々と生きていたんだ。。

ううん、これも言い訳だよね。。ホントはそんな、立派な人間じゃない。祝福の笑みを自然にこぼせるほど、自分の器は満たされていなかった。。
もしそのとき、素直に気持ちを表せたら…きっと、

こぼれ落ちるのは、涙だったんだ。。



…目の前に広がるカラーの世界は、モノクロの世界を生きる自分にとっては、あまりにまぶしすぎるから。。

でも、まぶしすぎるがゆえに、より一層幻想的に世界を彩り、見る人を引き込んでいく。。


その夢の世界へのいざないに、呑まれてしまいそうになったとき、
目にとびこんでくる、白黒のコントラストと、その場に不釣合いな電子音が、僕を現実世界へと引き戻す。
この二つが僕にとっての、最後の砦だったんだ。。



言葉はいらない。

ううん、言葉を発した瞬間、目の前の世界は、夢の世界は、うたかたのように消えてしまうんだ。。一瞬の煌きのように、刹那の閃光のように。。文字通り、儚く、ね。


でも、世界の始まりは、終わりの始まりでもあるんだよね。。
どんな世界でも、必ず終わりがくるんだよね。。

わかってるよ、わかってるけど。。

ねぇ、どうして僕なの？
どうしてモノクロに生きる人間が、目の前のカラーの世界を壊さなければならないの？　

僕がこの世界と出逢って、最初に発する言葉が、その世界の終結を意味するなんて。。
人の幸せを壊すことが、ありきたりな言葉を発することが、こんなに苦しいなんて。。




…電子音が止み、あたりは静寂に包まれた。白黒のコントラストは、全て打ちつくしてしまった。。僕をモノクロ世界につなぎとめていた最後の砦は、もう、ない。

目の前の世界を、カラーの世界を、僕はこのとき初めて、まっすぐ見据えた。
2人は気付いているのだろうか、僕の言葉による、世界の終焉を。。


…そして、時はきた。


…僕の心の扉は、堅く閉ざされた。。

冷徹に、それでいて物腰柔らかに言い放つ。。

心の中で何度も「さよなら」をつぶやきながら…

















「748円、頂戴いたします」








…先日、バイト先のコンビニで、お会計中でも抱き合うカップルに遭遇しました。