もうひとつの幻想
- カテゴリ:自作小説
- 2009/02/20 08:10:59
3、それぞれの奇跡の夜
夜の帳が下りた河川敷で、俺は顔を地面に打ちつけ血を吐きながら、不思議な行動を取る知人の男性を見ていた。
彼は水辺を独り言を呟きながら、とぼとぼと歩いていた。
まるで、隣には誰かが一緒に歩いているかのようだった。
何を話しているのか、全く聞き取る事は出来なかったが、確実に彼は何かを言っていた。
転倒して立ち上がった俺は、そのまま立ち尽くすように彼を見ていた。
不思議と話しかけようと言う考えは、俺には無かった。
ただ、黙って彼の行動を見ていた。
やがて彼は歩くのをやめ、何かを問いかける仕草をした。
そして奇跡は起きた。
彼がこちら側に振り向いた瞬間、彼の足元から地面が急に明るくなって来たのだ。
それは、薄紫色の花の開花だった。
まるでポンポンと音を立てるが如く、小さな花が一斉に開花したのだ。
俺はビックリして、その場に座り込んでしまった。
俺はただ、その小さな花たちを眺めていた。
いつの間にか、俺の得意客の男性は姿を消していた。
俺は再び走り出した。
白々と明けてゆく春の空を眺めながら。
「今俺に出来る事は、遠くからでも彼女の幸せを祈るだけだ。それだけでいい、それだけで・・・。」
その時俺は再び、自分の足で走り出す事を決めた。
奇跡の夜から4ヶ月が経とうとしていた。
その電話は突然かかってきた。
もうすぐ仕事が終る午後4時ごろ、俺の電話を鳴らしたのは彼女だった。
それは、今にも泣き出しそうな声だった。
「今、来れないかな、市役所なんだけど・・・。」
「何かあったのか?すぐにか?」
「うん、来てくれたら話す。来れないのなら・・・。」
そう彼女が言うか言わないかのうちに、俺はこう答えて受話器を置いた。
「すぐ行く。待ってろ。」
俺は代車用の軽自動車に乗り、市役所に向かった。
途中かなりの混雑に見舞われた。
それは、その夜川で行われるはずの花火大会の影響だった。
普段なら30分ほどで着く筈の市役所に、その日は1時間がかかった。
彼女は市役所の駐車場で、真っ赤に目を腫らせて立っていた。
彼女は俺の軽自動車に乗ると、突然に泣き崩れたのだった。
つづく
う~ん、女性は私にとって、畏怖の念すら感じます(自爆)
目くるめく永遠の不可解なんですが、だからこそ惹かれるんですよねぇ~。
彼の顔しか思い出せなかった彼女の気持ちは・・・
揺れているものではありません。
この時すでに、彼女は決意したって思ってます。
絵画・・・
まぁ落書きみたいなもんです。。。
女性に対して【夢】がある人なんでしょうね。。。
どうなるのかなぁ?
招き猫さんの文章に吸い込まれますね・・・素晴らしい絵画です。