創作小説「次期王の花嫁」2
- カテゴリ:自作小説
- 2010/08/06 00:15:56
「平行世界シリーズ」
次期王の花嫁
第2話
「逃げたぞ?」
「不当な配当をふっかけてきたから、乗ってやったんだけどね」
そう言って笑うクーデノムの背後から男の子がひとり、観客席の階段を勢いよく降りてきた。
「さっきの人だー」
と無邪気な声をあげる金髪の男の子は、先程の試合を見てマキセを覚えていたらしい。
「格好よかったです」
「おぅ、ありがとう!」
とはしゃぐ子の後から、
「ちょっとー、待ちなさいよ、エイーナ!」
足音と声に振り向いたクーデノム。
同じような金色の長い髪のまだ幼さの残る顔立ちの女の子が、男の子を追いかけていた。
彼女は駆け降りようとしたのだが…座席のために造られた幅の広い階段に足を踏み外して落ちそうになった。
「きゃあ」
驚きで声を上げる彼女をクーデノムは頭で判断するよりも素早く抱き止めていた。
「…大丈夫?」
しっかりと胸にしがみついたままの彼女に声をかける。
その声に我に返ったらしい彼女は思わず閉じていた瞳を開けてクーデノムを不思議そうに見上げた。
大きな蒼い瞳。
「姉上!?」
男の子が驚いて声を上げる。
「あ、はい。大丈夫です、すみません…っ」
慌てて離れようとした彼女は表情を歪めた。
少し足を引きづる仕草に足首を傷めたのだとクーデノムは気付く。
「足を傷めたみたいだね」
「す…すみません……」
恥ずかしそうに慌てる彼女に微笑して、椅子に座るように促そうとした所に、バタバタと乱雑な足音を立てて数人の男達が現れた。
彼らを誘導しているのは、賭けをふっかけてきたあの男だ。
連れてきた彼らの腰には剣が携えられている。
「あ、ヤバそうかなぁ」
小さくクーデノムは呟いた。
案の定、彼らの目的は自分のようだ。
どうやら掛け金の配当金を持ってくるよりも、タチの悪い上の者を連れてきたようだ。
数は全部で四人。
そのどことなく怪しい感じのする男達に彼女も気付いたようで、不安気に身をこわばせる。
「どいつだ? 5倍を当てたとか言うのは」
明らかにそこで否定をさせてうやむやにしようと言う魂胆が見える。
彼の容姿から脅せば屈すると思っているのだろう。
クーデノムは守るようにして彼女の肩をしっかりと抱き寄せた。
逃げろと言っても傷ついた足では男達に渡すようなものだ。側に置くほうがまだ安全だと判断した。
エイーナと呼ばれた彼女の弟らしき少年は…と視線を周囲に向けたが見当たらなかった。
とりあえず守るのは彼女だけでいいらしい。
「あんたか?」
「そうですね。…でもあなた達は払う気はなさそうですね」
「なんだと!?」
彼の挑発的な言葉に男達は気色ばむ。
「もとはその不当な配当金をエサに稼いでいるのでしょう? 当てが外れたからと言って脅しにかかるなんて間違ってますよ」
「貴様!」
一人の男が剣を抜いた。
それでもクーデノムは平然と言う。
「悪質な賭博は投獄ですよね。あぁ、ここはクスイじゃないから違うのか」
強気の視線を男達に向けて言い放つ。
「それとも、ここはルクウートだから、どんな問題も剣でカタを付けるんですか?」
完璧に挑発する言葉にもう一人が剣を抜き、先の一人は振り降ろしながら突っ込んできた。
「きゃっ」
小さく悲鳴をあげたのは彼女。目をつぶってクーデノムにしがみつくが、彼は全く避けようとせずに突っ立ったまま。
しかし、男の剣が彼に届くよりも先に、間に入りこんだ剣にはじき返されていた。
剣の持ち主は肩で息をしながらクーデノムの前に出た。
「回避できるケンカは買うなよなぁ」
「時間稼ぎはしたでしょ」
現れたのはマキセだ。
闘技場からクーデノムのいる観客席まで全力疾走してきたらしい。
「こいつら、仲間だ。八百長で賭けは不成立だ」
男が二人の姿を見て言う。
「何言ってんですか。負けてこそヤラせでしょ。勝てる試合に勝ってどこが八百長ですか」
淡々と言い放つクーデノムの言葉にマキセもうんうんと肯く。
しかし彼らの理路整然とした言葉は男達には火に油を注ぐがごとし。残りの二人が剣を抜くと有無を言わさず襲ってきた。
【続く】
第2話お届けでーす。
動いてる、動いてるよ二人が(笑)
「行方」は酒飲んで駄弁ってただけだからね←ひどい作者(爆)
二人の会話のやりとりが楽しくて、書いてるからねぇ
庶民感覚が好き。
新キャラはタイトルキャラ以外、ありえんでしょうなぁ(笑)
くっつく、くっつかないがメインのドキドキストーリーではないので暴露。(^_^:)
ハラミ。さん、見ていただいてありがとです。
見守っていてください。
黙。。
言葉遊びクーさんかっこよすなあ。
さり気なく新キャラ追加ですね。タイトルの候補だったりするかもしれなかったりですか?w