創作小説「本物を探して」5/最終
- カテゴリ:自作小説
- 2010/08/08 01:11:20
「平行世界シリーズ」
第5話
静寂を破ったのはシキア。
「無意味な争いはしない。短気な部下をお許し下さい」
そう言って、深く頭を下げた。
「タヤ様!」
思った程悪い奴じゃないみたいだ。
コセも安心して剣を鞘に戻す。
そこにもうひとつ、足音が聞こえて来た。
皆、ハッとしてその方向を固唾を飲んで見つめた。
「グーベ……」
コセの口から小さく呟きが漏れた。
彼は近くまで近付いて来て、コセに声をかける。
「ちゃんとした恰好をして来い」
笑いを含んだ優しい口調。
「はーいはい」
おちゃらけた語調でコセは言い返してから、私を見てにっこり微笑むと広間から出て行った。
「すぐ戻って来るよ」
心配そうに見送る私の心理を読み取ってか、彼はそんな事を言った。
金髪碧眼の男。
どこかで見たことがあるような……。
彼は私の前を通り過ぎると、父王の前まで行って片膝を付いた。
「私が本当のリサニルの第2王子。グーベマナ=リサニルです」
しっかりした貫禄のある声。
どこかで見たことあると思ったのは肖像画でなのね。
やっぱりカッコいい……。
「それで……見た所、私との婚約はなかった事にした方が良さそうですね」
と、いきなり彼、グーベマナは言い出した。
その言葉で私は驚いた(半分以上は嬉しかった)けれど、それ以上に父王と重臣達は衝撃を受けたようだ。
この結婚が成立しなければ同盟も結べない。この話を進めるためにした今までの苦労は……。
そんな様子がありありと見えるその中で、グーベマナの忍び笑いが皆のささやきを引き留めた。
「クスクスクスクスクス……すみません。私は私との婚約を破棄すると言ったまでです。これは我が父王の言葉ではなく、私自身の提案なのです」
親しみの持てる笑顔を浮かべて、そして、言った。
「私の下にもう一人王子がいます。年はまだ二〇才でまだまだの者ですが、彼女、クイレイラ姫には私よりも合うのではないでしょうか」
彼の言葉に皆の表情が和らいだ。私だけ、ゲッとした表情を心の中でした。結婚の話が流れると思っていたのに、なんでそんな余計な事をするのよ!
それも顔も知らない者の妻になんかなりたくないわよ!
「その者の名はリサニル大国第3王子、コセラーナ=リサニルです」
彼の言葉に私の思考と身体は凍り付いた。
「え」
真っ白になった頭で、呟きだけが口を次いで出た。
それと同時に広間へ再び姿を現した人物。
鮮血で染まっていた衣服を着替え、髪の色も……髪の色が黒から眩いばかりの金色に変わっている!
シーンと静まり返った広間にコセは異様な物を感じて立ち止まった。
「な、何が……?」
その雰囲気に尻込みして呟くと、グーベマナことグーベが笑いながら言った。
「たった今。お前の結婚相手が決まったんだよ」
と。
「え!?」
「クイレイラ姫と、いいだろ」
「そ、き、急に言われても……」
顔を真っ赤にさせてコセは言った。そして、私に振り向いた。
私も顔が赤くなるのが判った。それと共に先日のキスを思い出したのだ。
彼となら……いいかも知れない……。
そんな事を考えてる私ってげんきんかしら?
でも、好きになれると思うの。
初めて見た時から気になっていた彼だから。
「それはいい名案だよ。しかし良いのかね。こんな勝手に決めてしまっても」
「大丈夫ですよ。この件は総て私に任されていますし、父王もこの国と同盟を結びたがっていますから」
「そうか……」
本当に嬉しそうに言う。同盟が結べたら私が誰と結婚してもいい訳ね。改めてそう思ったけれど、相手がコセだからまぁ、いっか。
私は照れているコセラーナの元へ走り寄った。
「どうもお願いします。リサニル大国の王子様」
「こちらこそ。テニトラニス国のクイレイラ姫」
出逢いが出逢いだけに、笑いが込み上げて来る。コセは私の手を取ると、手の候に口づけをした。
こんな事出来るとはやはり王子様よね。宝石などゴロゴロ石ころみたいに持っていたのだって、今を思うと納得出来た。
―それから約、1年後。
私達はめでたく、国をあげての結婚式を迎えたのでした。
【END】
1993,6.
これで終わりです。
今、掲載途中の「次期王の花嫁」に二人と子供たちが出演中です。
コノ話がシリーズのなかで年代が一番古いのかも?
まだ書きあげていない昔の話(グーベマナの20歳頃の短編が設定済み)はあるけどね。
拙い小説を読んで頂いてありがとうございます。
書き直したらキリがないので、昔のまま掲載です。
まだサイトだから大丈夫だけど、
目前で読まれたら、逃げたくなるよね ><
めでたしめでたし❤
かちょいい兄弟ですね^^v
姫もアクティブで申し分ないっす~w
ハッピーエンドって水戸黄門みたみたいに安心するッ。
そのままだとなんだかなぁということで、ひと工夫入れてみましたv
グーベさんが、結婚しない理由…設定で止まっております。
さりげな数字は、小説を書いてワープロ(当時)に打ち込み入れた日。
それからちょこちょこ触っているけれど、ほとんどそのままです。
今書くと…もっと長くなるんだろうな、と。
以前に呟いたこっちの方が先がいいかもの理由納得しました。時系列こっちが先なのですね。
何処でどう繋がるか読みながら考えてすっごいわくわくしました。最初から婚約者だと思ってたけど違ったようですw
面白かったですのよありがとうございました!
ところで、さりげなく出てる「1993,6」は初出のなんですか?