Nicotto Town



桃チワ なんちゃってスピンオフ~ 雪也 ~



「おーい、雪也、それ持ってきて~!」
真っ白な雪に半分埋もれそうになりながら、スタッフが手を振っている。

「・・・はーーーーい。」
面倒臭そうに、それでも一応返事をして、雪也は、長い黒炭を両脇に抱えた。

温暖化が進んでいるとはいえ、雪国の、それもスキー場。
当たり前だが雪だらけ。大スターなら、出番が来るまで暖かい
ストーブの前でココアでも飲んでいられるが、駆け出しの
下っ端役者ともなれば、率先してスタッフの手伝いでもしなければ、
次の仕事に繋がらない。

「マイク、テス、マイク、テス、聞こえますかあ?」
「光の加減がなあ、天候次第だからなあ。」
「すいませ~ん、フロントに電話入ってんですが~!」

本番まであと3時間。
日暮れまでに撮影を終わらせなければ、間に合わない
タイトなスケジュールの中、スタッフ達は食事を取る
ヒマもなく、スキー場を駆け回っている。

「えーと、設定だと、雪の坂を転がる、ってコトなんで~。」

助監督が、立ち位置を、着ぐるみ姿のアイドルに説明している。
・・・ちぇ、オレより若いや・・・。
着ぐるみとはいえ、立ちっぱなしで2時間も外で待機のアイドルは、
震えが来るのを必死に堪えながら、ニコニコと説明を聞いている。

「オイ、雪也っっっ!ドコ見てんだよっっっ!!!」
雪也より確かに5才くらいは若そうなヒラのスタッフが、
黒炭を抱えて佇んでいる雪也をこづいた。

「こっちだよ、こっち!ほら、そこに並べといて。」
「え、ナンに使うんスか!?」
「知らねーよ!企画がオチた時の予備バージョンだろ。」
せかしておいて、ヒラのスタッフは助監督に呼ばれてさっさと行ってしまった。

・・・ちくしょー・・・オレだって・・・オレだってチャンスさえあれば!!!

沖縄で生まれ、沖縄で育った雪也には、本土での友達がいない。
「暑い国に生まれたんだから、せめて名前くらいは涼しく♪」と、
両親がつけた名前のせいでか、やたら寒いロケの仕事が回ってくる。

「・・・ふう。」雪也がため息をついた時だった。
「つまらないかね?」
真後ろで突然太い声が聞こえ、雪也はギョッとして振り向いた。
「カ・・・カントク!?」
年齢不詳・・・50代とも、70代ともささやかれる監督は、
温厚そうな表情のなかに、どこか厳しい光を宿した人物である。

「闇を知らなければ、光の幸せに気づかない。」
監督は、つぶやくようにしゃべり出した。
「下積みの苦さを味わわなければ、人間深みは出ないんだよ。」
「監督・・・。」
「それでも、光の世界に行きたいかね?」
監督は、スタッフの様子を観察しながら、台本を手早くチェックした。

「沖縄から出てきて3年。監督、オレには帰る場所はありません。」
雪也は、遠慮がちに、しかしキッパリと断言した。

「オレは、どんなに急な崖でも、登らないワケには行かないんだ!」

沖縄は、本土に比べ、決して富裕層ばかりという土地柄ではない。
長男として生まれた雪也が、家業であるトウキビ作りを継がずに
本土へ行くことを許したばかりか、旅費まで用立ててくれた両親。
「今ごろ何しくさってんだか!」
両親は、口うるさい親戚の容赦ない言葉を何とか交わしながら、
雪也の成功を祈り、凱旋を待ち続けているに違いない。

「オレは・・・オレはっっっ!!!」
そんな雪也に、監督は向き直り、言った。

「主役になれる仕事がある。やるかね?」

「・・・は?主役・・・???主役ですか!?」

突然の突拍子もない申し出に、雪也は毒気を抜かれ、呆然としてしまった。

「ふ・・・ふざけないでください!オレだって少しは、
社会の仕組みってものを知ってる!
いきなり・・・下っ端のオレにそんな仕事は回って・・・。」
「・・・来ないと思うかね?」

・・・確かに、万に一つもなさそうな話である。
でも・・・でも・・・裕次郎だって、現場に遊びに行った
ところをスカウトされて、スターダムにのし上がったではないか!?

「監督・・・オレは・・・。」
「決して、ラクな役回りじゃない。主役というのはね。」
監督は、台本を小脇に抱え、助監督にOKの合図を出した。

「主役は、作品に関わるスタッフ、後押ししてくれるスポンサー、
そして何より見てくれる人たちに、重大な責任を背負うんだ。」

監督に、本気のオーラが漲っている・・・。
雪也は、勇気を振り絞って、言った。
「やらせて下さい、監督!オレの役は、何ですか!?」

監督は、振り向いて、嬉しそうに笑った。

「・・・ニコッとタウンだ♪」

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2009/02/24 20:30
まりんさん♪

む・・・無理しないでね!?
長文なんだから、妄想なんだから、
無理しないでねっっっ(^^;)!!!
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2009/02/24 20:28
最高のオチ^^
いつも楽しく読ませていただいてますっ
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2009/02/24 08:19
神奈さん♪

もうね~私にもわかりませんわ~(^^;)
書き始めると、どんどん妄想がふくらんで来るのよね~!!

ガンちゃんさん♪

マイニチワワ、チャレンジ内容がいまいち思い出せない回があるので、
シリーズにも限界があるかも~で~す~!!!

・・・昨日はさすがにいっぱい書いてヘバった(^^;)
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2009/02/24 08:00
だんだん長編になっていくー!!

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2009/02/23 22:56
ホントにスペクタクル!
どこまでいくのかな~(*^。^*)
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2009/02/23 20:37
はいはいはい、軽く2000文字超えちゃったんでコメント欄にはみ出た次第~(^^;)!

「雪也ってだれ~???」「チワワの話じゃなかったの~?」なんて突っ込むなかれ。

雪也は、チワワです、確かに(^^;)。 マイニチワワのリーダー誕生ってお話です♪

「チワワに黒炭なんて持てるの~?」「チワワの家業がトウキビ畑って・・・???」

・・・・突っ込まないでね、いやマジで(笑)!!!



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