印象だけの記憶
- カテゴリ:レジャー/旅行
- 2010/08/17 21:46:05
「海の思い出」はあまりない。
子供の頃に住んでいたのは、海から少し離れた場所。
とはいえ、内陸というほど中でもないし、山奥でもなかったのだが、貧乏で、少し出かけるといった程度のことさえ少なかったので、海に行くことが無かった。
だから、たまに海へ行くと記憶に残るか、というと、それも違うらしく、記憶が定かでない。
どんな催しだったか、地域の子供会かなにかの遠足のようなものだと思うのだが、夏のある日、集団でバスに乗って出かけることになった。
行った先は、海である。
これが説明がしにくい。
いわゆる海水浴場ではない。
砂浜にはなっているが、狭くて、今振り返って考えてみると、どうも自然な状態、人間が作ったのではなく、自然に砂が堆積した場所だったのではないか。
ところどころ岩もある。
あんまり遊んだ記憶も無い。
集団でどこかへ行くというのが苦手で、スケジュールにそって行動するのがつまらない。
たぶん、ほとんど記憶が無いのは、最初から憶える気が無いし、もとから何も知らないまま、言われるがままに連れて行かれたからだろう。
ところが、不意に、美しい海を見た記憶だけがよみがえるのである。
もう帰るというそのとき、歩いているときに、見下ろした海が、とても美しかった。
砂浜の中にいくつかゴロリと岩があり、その間がぽっかり丸く穴になっていた。
潮溜まりと言えば潮溜まりのようなものだが、少し違うのは「Ω(オメガ)」のような形で、海と繋がっていること。
丸いくぼみの中だけ、少し深くて、底に砂が溜まっている。
砂だから、生成りとでもいうのだろうか、明るいベージュのような色合いに見える。
少し深くなった、穴の影のほうは、文字通り、まさに水色の、鮮やかな青みがさしている。
そのなかに魚が数匹いたように思う。
赤かったような記憶があるが、種類はわからない。
愛知県かその近くだから、熱帯魚なはずは無い。
いるとしたら、べラやブダイの子供だろう。
ずっと見ていたかったのだが、もう帰るという時だ。
帰るために歩き出した、ちょうどその時、見えた景色だ。
その直後から、記憶が無い。
いったいどうした理由で出かけたのか、どのていど海で遊んだかわからないが、
子供の頃に見た海で、その瞬間がもっとも美しかった。
砂の色から水色へグラデーションが見えたということは、実際の水深は浅かったのだと思う。
本当の自然な海岸は珍しいので、いったいどんな場所を見たのかよくわからない。
少なくとも、コンクリート護岸でも、海水浴場でもないというだけでも、現代の日本では貴重なほうかもしれない。
その前後がすっぽり抜け落ちちゃったんでしょうかね^^
自然の本物の美しさに子どもの頃出会えて良かったですよね。
私も同年代ぐらいなので(笑)それを知って育ったことを幸せに思います。
今の子供たちに何を残してやれるか、見せてやれるか。
ときどき考えてしまいます。