いくつかの、お薦め
- カテゴリ:小説/詩
- 2010/08/17 22:26:18
ふらっと書店に行ってみつけた、お薦めの本を挙げてみる。
其の一
『悦楽の園』(上・下 木地雅映子/ポプラ文庫ピュアフル)
思うところありすぎてレビューが書けずにいるうちに、文庫化された。書名はアレなんだけど(感想探して検索かけたら、エロっぽいサイト名がぞくぞく出てきたw)、ハードカバー(題名は登場人物が描く絵が由来で、カバーにはヒエロニムス・ボッシュの絵が使用されていた)の時よりは、一般にヒかれないだろう。
「普通」からはじき出され、または脱して自分自身の道を歩くことを選んだ、少女と少年の物語。
同じ作者の〈マイナークラブハウス〉でテーマはさらに進むが、しかし前作であるこちらの方が筆致は現実的に事態を追い詰め、容赦がない。そのため解決は(現在の困難については周囲が介入できる最良の、それもおそろしく運のいい形におちつくが)未来の見通しについては心理的な、それも夢の中での象徴的な形としてだけ描かれた上で、誰にも悪意く最悪のケースがあり得ることもまた示される。ヘタに「人と違っている」ことを誇りたい人に扱われると危ないなぁと不安になるが、でも、だけどこの本に救われる人、必要としている人はきっといる。
ひとりでも多くの、必要とする人の許へ届きますように。
其の二
『ツバメ号とアマゾン号』(上・下 アーサー・ランサム 神宮輝夫訳/岩波少年文庫)
帯の『夏の光のなかを帆船はすすむ』というコピーで涙が出そうになった。
アーサー・ランサムの、休暇時の子どもたちを主役とした冒険小説の新訳版。
寄宿学校から解放された長期休暇の子どもたちが、英国の湖沼地方で小帆船をあやつり生き生きと駆けまわる。
大英帝国背負って歩いてからに、と思う場面がないではないが、それ以上に、等身大で率直な子どもたちが好もしい。
大雑把に言うと『休暇に子どもたちが(割とリアルな)冒険をする話』なので本を読むより実際に外で駆けまわる方が……という向きもある。
そう感じるところがあってもこの物語が魅力的なのは、これらの冒険が、子どもたちと保護者とに確かな信頼があるからこそ存在できるものだからかもしれない。
子どもたちを信じて一歩ひいて見守り、そして本当の危機には助けてくれるだろう大人たちが(そして、それに応え得る自立心と賢明さを持つ子どもたちもだ)素敵だ。
たとえばツバメ号の子どもたちのお父さん、ウォーカー中佐。
「オボレロノロマハ――」の電報は、絶対の信頼なしには打てない(自分が親になっても、あれは打てない)。
『海へでるつもりじゃなかった』で登場した時は(フィクションならではのタイミングの良さもあるとしても)、実に頼もしかった。さすが英国海軍。
大英帝国が世界に覇を唱えたのは『ご飯がマズくて皆が海外に出たがったから』(というジョークがあるんです)だけじゃなかったんだなぁ~、とつい考えたほどだった。
以前の全集版でも主に翻訳を手掛けた神宮輝夫氏による新訳で、十二作のシリーズ全てが刊行される予定。店頭で見るに、細部はかなり変わったみたい。
今の子どもたちが手にとりやすくなったならいいな、と思う反面、カタカナとルビが増えてちょっと煩いなぁと思わなくもない。
其の三
『光とともに 自閉症児を抱えて』(戸部けいこ/秋田文庫)
A5版で出版された単行本の内容を再編集して文庫化、現在二巻まで刊行されたとのこと。
実情の伝わりにくい障害、自閉症をもつ子どものいる家庭を、取材に基づき丁寧に漫画として描く。今年一月作者が亡くなり、未完となった。
読んだことのない方は、手にとることをお薦めする(単行本一巻にあたる部分くらいまで、ぜひとも)
知ったつもりでいても、実際には理解しづらい。漫画で描かれると「そうだったのか」と腑に落ちて、身につまされたり反省したり。
TVドラマ化もされたが、改変が多く、残念な部分も多かったので興味がある人は原作をお薦めする。
前向きだが大変なことが多い物語を、しかし自閉症児の保護者には「物事が上手くいきすぎ、幸運すぎて現実との落差に落ち込むので読めない」人もいるという。
明るさを見せる展開は、希望を持ちたいが故の意図的なものだそうだ。
それを見ることが辛くなるだけの、過酷な現実があることは心にとめるべきだろう。
誠実な作品を描く作者が、若くして亡くなったことがつくづく惜しまれる。
これら新刊・近刊、お薦めしているくせに、実は買ってはいない。
なんとなれば、親本・旧刊を持っているから。
加筆訂正とか、改訳とか、再編集とか気になるけれど。
金銭的なもの以上に、スペース的に破綻しかかってるのがなんとも。
特にランサム・サーガは新訳で随分様変わりしてるようなので気になるが、全十二冊×上下と金額的にも体積的にも大きい上に、持ってる全集版も絶対手放せそうにない。全集の落ち着いていて綺麗な装丁も大好きだし。
題名まで変わる巻もあるようだし、どうしよう。
申し訳ありません。
山鳥さん
約四十年ぶりの新訳だそうです。結構変わっているところが多いみたい。
今回どうやら、海事関係の語句を訳さずカタカナ表記する方針のようです。
『ジョン船長』となってた部分で『船長ジョン』にして船長に「キャプテン」のルビになってます。
『ツバメ号とアマゾン号』だと、ジョン、ナンシイ、フリント船長ことジムおじさんと、
船長と称される人数が多いので、頁によってはかなり煩雑に見えました。
読み易さは……どうでしょう? 好みによる気がします。
さくら+さん
以前より手に入れやすくなった個人的に好きな本、ってことでお薦め文を書いてみました。
落ち着いた時に、憶えていて気が向いたら、検討していただけたら嬉しいかな〜、くらいの雰囲気です。
なにより、本は楽しく読んでナンボだと思いますし……
元祖@かぐや姫さん
いらっしゃいませ、はじめまして。
本だのなんだのについて好き放題書いているので、お好みにあえばいいんですが。
nagataさん
うむむ、nagataさんの本棚にはどんな本が並んでるんでしょうか?
うちの本棚は、おそろしく偏ってますw けったいな物系・児童書等々。
でもってアフレかけ。……そろそろ片付けようがなくなってきてます。どうしよう?
私のところと 一冊といえど 同じ本なかった。
だから 他の人のおすすめ 見るの おもしろい。
↑読んでみたいです!!
でも、ひと段落したら、それぞれ読んでみます^^
読みやすいのかな?