Nicotto Town



パパのしあわせ    10

-------------------これはフィクションです---------------------

BGM 鬼束ちひろ 「 月光 」
http://www.youtube.com/watch?v=BkqO6QRcYuE

I’m a God child.
           この腐敗した地上に落とされた
How I live on such a field.
           こんなもののために生まれたんじゃない
心を明け渡したままで 
             貴方の感覚だけが散らばって
私はまだ上手に片付けられずにいる・・・・・・・・
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パパは 卒業式にも出ず 2月 真冬の東京に降り立って 今は夏。半年で 渋谷の東急デパートのお店の オーダーの仕事も 作ってたの。とはいっても その時代は デザインが 限られていたのね。デザイン画などないの。言葉 ひとことだけで 通じるの。真珠だったら。菊爪 鬼爪 夫婦 梅鉢。カラーストーンは 菊透かし 千本透かし 二段透かしDX枠 取り巻き。ダイヤは 角爪。色石の千本透かしの段階まできていたの。兄弟子の一人は あとから入ってきたのに 半年で追い越されそうだったので あせってたみたい。ささいなことで親方とけんかして 出て行ってしまった。

展望台から 風景をたのしみながら 写真を撮ったり。

彼女の姿も もちろん SDカードの中に記憶させて 

穏やかな しあわせを感じていた。

ちょうど線路を 列車が通過している。

「あれは 単線なのよ」

 「単線なの 駅で小さいカバンを 受け渡ししてるの」

「そうそう それがないと 先に進めないのね」

鉄ちゃんみたいな会話だけど 

二人とも 鉄道オタクじゃない。

自分の専門ジャンルでなくても 会話が通じる

そんなところも お互い惹かれた理由のひとつなのかな。

好天に恵まれて 山形の風景は美しかった。

奥羽山脈の 谷間にひろがる 山寺の参道

ゆるやかな傾斜はあるが かなり広い平野になっている

「そろそろ 行く」

 「うん」

相当 長い距離走ってきたから ゆっくりとはできない。

ふたたび 助手席に

「だけど 山菜そばの 1300円は高いわよね」

 「そうだよね 駐車場代も入ってたりして」

「それで お茶もセルフサービスなんだから」

はじめての 狭い空間で二人きり。

行きの車の中は 少しぎこちなかったけど

帰りは 会話もはずんできた。

友人の話題なども

友人が 東大にすすんで 駒場にいたころ

近所の店で会話していた。

隣にいた 東大の研究室にいるという人たちが

話しかけてきた。

・・・・

「それで 学校はどこに行ってるの」

 「すぐ 近くです」

「近くって どこかな」 と 東大以外の数校をあげる

 「ちがいます」

「じゃ OO」

 いつまでたっても どちらの口からも 

東大という言葉が出てこない。

そんな エピソードを話した。

「駒場で 近くと言ったら 誰でも 東大って思うのにね」

 「うん 逆コンプレックスというのかな

          人前で 東大って言いたくないのね」

「あっ そういうの あるかも 私の知ってる人も

  東大って言われたくないから 東大行かなかった」

 「そうなんだ」

「じゅうぶん 東大に入れる実力あるのにね

                慶応だったかな 行ったの」

 「その友達も 死んじゃったけど」

「えっ どうして」

 「岡山大学の 仏文教授になったんだけど

    フランスに旅行に行って 

      アルプスのクレバスに 落ちて死んだの」

「そうなの」

 「うん いい人は 早く 死んじゃうのね」

「あはは 私たちは 悪い人だから 長生きね」

 「うん そうかも」

「あはは」

映画も好きで 初対面の 定型質問は「君はゴダール派かね それともトリュフォー派」だった。大学の掲示板には 早すぎる死を悼む声か゛いくつも掲載されて 慕われていた先生だったようすを 遠く離れた東京からも伺い知ることができた。



 





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2010/08/20 16:14
Noelleさん
文系のほうなんですね。
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2010/08/20 12:34
いやそれが。遺伝子はうすくなってしまったのか
理数系、私からっきしだめ。
どうかすると算数もだめ〜〜 笑
数字を見ると頭が ぼ〜〜〜〜〜〜〜

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2010/08/20 12:23
Noelleさん
せっかくの 優秀な遺伝子残すこともなく
でも 妹さん Noelleさんに引き継がれてるのね。
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2010/08/20 11:45
伯父が旧制帝大 最後の学生でした。
ドイツ文学をやりたかったらしいけど
それじゃ食べられないからと工学部へ進んだ
おかげで 戦争にはいかずにすんだと。
(理系学生は後回しだったらしいです。)

アタマは良かったかもしれないけど
人を見下すところがあって
「東大なんてやくざな大学、今の学生はバカばっかり」

そんなん言う人でした。
本だしたり、海外の学会で研究発表したり、
ケンブリッジから招聘の話があったりと
仕事面では充実していたようですが・・

家庭ももたず、死ぬ間際になって
「僕の人生、なんだったんだろうね」と妹である母に言い残して
亡くなりました。

たとえ実らなくても 悲しい別れが待っていても
人として生まれた以上 やはり人を愛さないで生きるより
みっともなくても バカみたいでも(笑)
人を愛して生きる方がずっといい




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