北の少年 砂海編 47
- カテゴリ:自作小説
- 2010/08/23 19:10:18
このお話は、友人のリクエストにより、篠原烏童さんの作品から共生獣の設定をお借りしています。ファンの方で不快に思われましたら、お詫びいたします。
長文なので嫌なんです~の方はスルー推奨^^;
バールオアシスの村長とケニスとの補償交渉は、つつがなくまとまった。
始めは災いを招いた隊商だと態度を硬化させていた村長だが、交渉に同席したメルガの気働きで態度を軟化させた。
沐浴場と牢屋代わりの小屋の清掃と浄化の儀式をすること。
破壊された部分の補修と、その費用をケニスが支払う事。
宿泊費用を2割り増しにすること。
補償はこれでケリがついた。
ようやく、明日の早朝には旅立てそうだ。
ケニス・キャラバンの一行は、明日の出立に備え準備を整えていった。
人狼の一件が一段落して、ラルム達はその後始末に一日追われる事になった。
汚れた沐浴場の掃除と、戦いによって壊れた部分の修理。
魔法使いによる、魔を払う浄めの儀式。
人狼を閉じ込めていた小屋も、同じように清掃と浄めの儀式が行われた。
ジェンは率先してその作業に従事した。
体を動かす事で、余計な事を考えないようにしているようだ。
そのそばには、いつも赤毛の少年がぴたりと寄り添っていた。
2人ともけっして顔色はよくなかったが、愚痴一つこぼさずに働いていた。
全ての仕事の手配をしたラルムは、注意深く2人の様子を見守った。
特にロヴの方はまだ休養が必要だと思われたから、少しでも様子がおかしかったら担いででもベッドに直行させる気だ。
ジェンだって油断はできない。
だが、2人は黙々と仕事をこなしてその日の夜を迎えた。
全てが終ったあと、ジェンとロヴそしてカイルの2人と一頭は、ケニスの部屋を訪れた。
ロヴは自分の秘密を、ケニスに話すつもりだ。
ジェンからケニスとの話を聞いたあと、すぐさまそう決心した。
自分が行動を共にするのは、危険が常に伴うのだ。
ケニスには確かに知る権利があるといえた。
ジェンの予測どおり、ロヴは二つ返事で答えを出した。
「いいのか?」
ジェンの短いが真剣な問いに、ロヴも真剣な眼差しで答えた。
「はい、ジェン」
(ほんまにええんやな?)
カイルの念押しにも、ロヴは大きくうなづいた。
こうして、ジェンたちはケニスを訪問したのである。
ケニスは寝支度を終えていたが、快くジェンとロヴを出迎えた。
妻メルガ以外の人払いをしたあと、自ら椅子をすすめ花茶をいれて2人に手渡した。
最初にロヴが、続いてジェンが腰をおろし、カイルは彼女の右肩に飛び乗った。
そして金色の目で、ケニスとメルガを様子を見つめている。
その強い眼差しは、2人に対してカイルが油断はしていないという意思表示である。
ケニスとメルガは、その強い視線を真正面から受け止めた。
2人とも全く視線をそらすことなく、見返してくる。
猫の姿をしてはいるが、カイルの本性は魔法生物の共生獣だ。
その視線は、人間以上に強く底がしれない。
普通の人間なら、すぐに視線を逸らしてしまう。
(ふうん。この夫婦、案外と肝がすわっとるな)
そうジェンにだけ伝えて、カイルはケニス夫妻を見つめ続けた。
「ケニス様、ジェンから話は聞きました」
かすれ気味の声で最初にロヴが話し出した。
「声変わりなので、聞き苦しい声で申し訳ありません」
「気にしなくていいんですのよ、ロヴ」
メルガが優しく微笑みかける。
ロヴはメルガに軽く頭を下げて、視線をケニスに定めた。
「ケニス様。俺の本当の名前はロウ・ヴェインといいます。父の名はロウ・ヴェック、母の名はリベカ・マク・ハラン。ロウ・ゼオン国の王と王妃だったそうです。そう教えてくれたのは…」
ロヴの目が淡い水色に変化した。
「教えてくれたのは死んだ祖父ハランです」
ここで、ロヴは祖父ハランの手紙をジェンに渡した。
朝からずっと読んで欲しかった手紙を、やっと彼女に手渡すことができた。
ジェンは丁寧な手つきでそれを受け取り、静かに読み始めた。
読み終えて大きくため息をつき、ロヴをみつめる。
ロヴも視線で答える。
(ケニスさんにあなたから見せてください)
少年の視線はそう答えていた。
「ケニス様。この手紙に全て書いてあります」
ジェンは少年の望むとおりにした。
羊皮紙の手紙をケニスに手渡したのだ。
「読んでいいのですね。ロヴ」
ケニスの静かな問いに、ロヴは「はい」と小さく、だがはっきりと答えた。
「私も読んでかまいませんの?」
「はい」
メルガの問いにもロヴは迷わなかった。
夫妻は視線を合わせてから、まずはケニスが手紙をよんだ。
二度読み返してから、それをメルガの手にそっと渡した。
まるで貴重なものを扱うような、丁寧な手つきだった。
メルガもケニスに習って、慎重に受け取り手紙を読み始めた。
読み進めるうちに彼女の青緑色の瞳が、涙で潤んできた。
最後に一筋涙を流して、小さく呟いた。
「ありがとう、ロヴ。大切な遺言を読ませていただきました」
いよいよ、お話も佳境に入ってきました。、
終わりのシーンだけは脳内にあるけど、さてどうやってそこへもっていこうかな?
難題なんだよなあ~><
この旅のもつ意味が変わってしまうような告白だもん!
真実は1つといいますが、最低当事者と関係者の二つがあります。
どれが当人を守るのか、それは解らないけど。
真実は曲げることはできません。
これからの 厳しい旅の無事を お祈りしています*
これでロヴの秘密はケニスとメルガも知りました。
これからの旅がどうなるか、楽しみにまっててね。
遺言を見させてもらって色々なことが分かり
涙が出だしたんだねー
すべての事を教えてもらったから
ますますみんなの絆が深まりそうだね♪