創作小説?「魔王の森 ―森の真実―」2/3
- カテゴリ:自作小説
- 2010/08/27 23:19:34
魔王の森 -森の真実-
第2話
△異形の森
この森に囲まれて、どれだけの月日が流れたのだろう。
森に漂う強い瘴気を取り込んで、異様なカタチに育った植物。
それを食する生物もまた、時を重ねるにつれ異形な姿へと変貌していく。
魔物と呼ばれ始めたのはいつの頃なのか…もう誰にも判らない。
瘴気に侵された肉体は変色し、痛みを伴って狂いだす。
どれだけの月日が経ったのだろう……
もう抜け出せない森の中で、ずっと待ちわびている。
ここから救い出してくれる者を。
陽の光が当たらない、深淵の森から。
澱み凝縮された瘴気がゆっくりと流れはじめる。
遠くで獣の鳴き声を聞いた。
やっと、現れたのかもしれない、この森に。
ようやくたどり着いた選ばれたものが。
濃い、今までの土地よりも強い瘴気を放つ森。
聖竜の案内でようやくたどり着いた「魔王の森」
廃墟と化した、かつては栄えたのであろう町を呑み込んだ跡が痛々しく残っている。
魔物の姿は時々見かけるが、襲ってくる気配もなく通り過ぎる。
不思議と静まり返った森。
不安と恐怖を世界へ与え、人々の暮らしを脅かす存在。
△魔王の館
「ようやく現れたか、勇者よ」
手に持った破魔の剣を見て彼…魔王と呼ばれる者は笑った。
しかし、その笑みは余裕の不敵な笑みに感じられた。
「くすくすくす」
魔王は笑う。
何がおかしいのかと顔をしかめた勇者に、
「相手の出方を伺って、むやみに攻撃してこない所が賢いね。賢明な選択だよ。ゆっくりと話ができるってものだ」
「話?」
「立ち話もなんだから、中へどうぞ。お茶でも煎れるよ」
返事もしなくても、魔王は促すように先にあった元は町の宮殿だったであろう建物の中へと入っていく。
想像していなかった出迎えられ方にしばし呆然としていたが、聖竜が魔王について中に入ったので付いていくことにした。
人の、生物の気配が全くしない建物の中。
明かりを灯した一室に案内されて……魔王は自ら、本当にお茶を出してくれたりした……。
飛んでいた聖竜を腕に抱いて、
「ご苦労だったね」
と、なでる魔王。
聖竜も嬉しそうに甘えている。
「さて」
椅子に腰を降ろした魔王は正面から勇者を見つめる。
「……何から説明していこうか」
△森の意義
『時間、あげるから考えてみて』
森の意味、魔王の存在。
そして、自身の未来について。
建物から出て、深い森を見つめる。
薄暗く、光が地に届かない森。
やって来た時は、禍々しさしか感じられない、不快な場所だったはずなのに。
不安や恐怖をもたらす元凶だと。
しかし今は別のように見える。
世界から切り離された、切り捨てられた森。
不安と恐怖で作られた、誰もが心の奥底にもっている感情。
聖竜が心配そうにそばに寄ってきた。
ずっと一緒に旅を続けてきた仲間だった。
抱き締めると生きている鼓動を感じるのに。
『この竜も魔物なんですよ』と魔王は言った。
この森で育った異形の生物だと。
魔物が放つ瘴気に強いのは、この森で育った聖竜にとって空気と同じだから。
環境に応じて進化した生物。
魔王がいなくなれば森と共に消滅する存在。
「魔王の森」の存在意義を、今まで考えてもみなかった。
伝説と史実に裏付けられた忌むべき存在として。
ただ魔王が住む森で、消滅させなければ世界が滅んでしまうんだ、と。
真実を知ることよりも、世間の常識に縛られて行動していたのだと気づいた。
でも、そうやって惑わすのが魔王のワナかもしれない。
しかし、直感的に思ってしまった。
彼の方が真実を知っている、と。
彼だけが真実を知っているのだと。
寂しげな笑顔で、魔王は宣言したのだから。
『私の名はダレス。かつては魔王を倒した勇者だ』
【つづく】
次で終わりでーす。
おかわりおかわり~~~!!!wwww
そうきてしまうのね・・・
どうなるんだろ・・・・気になる~~~!!!