Nicotto Town



愛する妻へ


恋愛小説は現代、かなり難しいそうです。
池澤夏樹さんは、恋愛小説は冒険小説に似ている、と書かれていました。
宝物を手に入れたいが、邪魔が入ったり、障害があったり、
なかなか辿りつけない。恋も同じだろう。

ところが現代はどうでしょう。好きだと告白するのもあっという間
距離だって携帯電話があります。どこに行ったって話せます。

新婚1年にして、戦地へと向かった夫がいました。
妻にとって夫は十五から想い続けた初恋の人でした。

夫は東京美術学校を卒業した日本画の卵でした。
兵役を終えて戻ると挙式、夫は29歳、妻は23歳。
新婚1年で再び召集がかかります。

夫は金沢の粟崎部隊へ。
金沢にいる夫に逢いたくて妻は、当時、大変だった切符を2日かかり
購入。汽車は15時間立ちっぱなしだったけれど、できうる限り逢いに
向かったそうです。

そして中国へ出兵。
夫と妻は手紙を交わします。

夫は絵手紙を毎日のように書いては妻に送りました。
戦場にいる気遣いをさせまいと、花や街の風物、暮らしなどを
さらりと描き、言葉を添えました。

やがてフィリピンへ。
マンゴーは変わった味で、パパイヤはメロンに似て好物だと。
総数千通以上。

地元の女性が雨の中を歩いていく後姿の絵が最後になりました。

妻は手紙の束を肌身離さず、防空壕にも持ち込みました。
自分に充てたラブレター、誰にも見せまい、生涯わたしの宝物。
そう思って過ごした半世紀。
夫、前田美千雄が生きた軌跡として、
平和を願いながら、公開することにしました。

伊丹柿衛文庫で展示されていると知り、行ってきました。

会えないとなればなるほど募る思い
電話など無い日々、異国から届く手紙を待ちわびる夫と妻。
何を書こう。やっぱり自分は元気でいるから心配しないようにと。
楽しいことを書いておこう。
そんな気持ちが溢れて出ていました。

妻、絹子さんは心臓に持病があり、体力も無くなったのを機に
縁があった柿衛文庫に絵手紙を託すことにしました。
寄贈することにしたのです。
出荷予定に連絡がなく、尋ねると、絵手紙を丁寧に梱包したダンボールの横
ソファに身を任せ眠るように亡くなっていたそうです。

メールや携帯、便利になった分
手紙は滅多に書かなくなりました。
簡単に書ける、それはたやすく消せること。
失いつつある手書きに、思いを馳せてみました。

戦争で引き裂かれた
愛はどれだけあったことでしょう。

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2010/08/31 00:28
KINACOさん^^;;

ああ。。やっぱりショックでしたか。。
ほれKINACOさんとこ、新婚さんだからねw

決して悪いことじゃない気がするんだワ。
お互いの抱えている想い込みだったら、さぁ。

なんとなくわかるけどww^^;;
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2010/08/30 23:44
ああ。。。ショック。。。
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2010/08/30 18:20
かえささん★コメントありがとうございます。

美しい夫婦愛ですね。
戦争がなければ、ごく普通の夫婦であったかもしれません。
短かった新婚生活の代償のように
残された絵手紙。
だからこそ美しいのでしょうね。

いえいえ、恋は突然に訪れるのですw
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2010/08/30 18:18
カルカンさん★コメントありがとうございます。

優しい夫であったのでしょうね^^
楽しいことばかりではなかったはずなのに
花や食べ物や、、街の様子なのどを伝えています。
戦争など無かったみたいな
のどかな南国の風景。

日本に残された妻も空襲に怯える日々でした。
どれだけの人が泣いたことでしょうね。
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2010/08/30 18:15
ちょこちっぷさん★コメントありがとうございます。

メールや携帯は便利ですよね。
でも、いつでも、どこでも受けることができる。
反面、追いかけてくる縛りもあったりして^^;

手書きの文字はその人を表わしています。
手間をかけてくれた証ですね。
手紙も今となると。

電子本も重たくなくていいけれど、
紙の本もなくならないようにと願うばかりです。
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2010/08/30 18:12
歌穂さん★コメントありがとうございます。

戦争が生んだ悲劇でも
残された絵手紙に託された愛が、心を温かくしてくれます。

誰にも見せまいと思っていた絹子さんが
晩年、公開を決意したのは
記憶の共有であったのかもしれません。

人は忘れられた時にもう一度死ぬと言います。
公開されたことにより、
私的な愛ではありますが、
人々の中で若い二人の夫婦はもう一度生きることがでるんです。

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2010/08/30 18:07
アッシュさん★コメントありがとうございます。

画家の卵だってことがポイントであったでしょうね。
手紙でしか想いを伝えあうしかなかった時代
だからこそ、手元に残ったのでしょうね。
今は、メールを残しても、或る日突然PCが壊れたり
停電になると、何もかもが消えてしまう危険がある。
便利は危険なものですね。

想いを伝える相手に手間暇かけていたんです。
携帯もないから、余白の時間が多い。
分かり過ぎないことが、長持ちの秘けつかもしれせん。。。
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2010/08/30 18:03
ハレルヤさん★コメントありがとうございます。

手紙って残るだよね。
メールだって残せるけれど、なんていうか言葉は語るけど
文字は機械的なものだしね。

手紙だと文字が語るでしょう。
その人だとわかる。
ボードを打つようにすらすらと言葉は書けない。
何度も書き直す、その過程で、いらない言葉が消えていく。

わたしは365日日めくりカレンダーあげたことがあったよw
毎日、毎日、一枚一枚、2ヶ月ほどかけて
イロイロ書いて渡したのww
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2010/08/30 17:59
亀吉さん★コメントありがとうございます。

それって素敵ですね^^
いろんなところに隠していたんだw。わたしもしそうだw
それを理解してくれる人だったんだね。

わたしは日めくり、犬めくりってあるでしょう。
365日のカレンダー、前ページにいろいろ書いてあげましたw
毎日、毎日、違うこと書いて、連作の物語とかw

めくるたびにわたしを思い出すでしょう。
こっちは会えなくて寂しいけど、向こうは毎日思い出す瞬間があるw
そんな手間暇かけた時期もあったなぁww

メールは便利だけど
やっぱりお手軽だもんねぇ。

切手も記念切手、ストックしてますよww
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2010/08/30 17:54
ロンさん★コメントありがとうございます。

ああwwごめんなさい。
ロンさんお近くですもんね。
29日までなんです。でも柿衛文庫の所蔵となっていますので
また公開される可能性大です。
来年の今頃、思い出してみてくださいw
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2010/08/30 17:53
KINACOさん★コメントありがとうございます。

失楽園的になると、なんだろうなぁ。
渡辺氏の描く女性は所詮男の願望。
若い人って、人にもよるけど、決定打となるほどの障害が少ない時代の
恋愛って感じがしないでもない。
格差社会で、恋愛より生活って感じがしないでもない。

山口瞳氏だと、ほらサントリーを思い出しちゃいますw

わたしは永遠はないと思う。
若い頃は違ったけれど。
永遠だと思った日々があった時間は永遠に変わらずそこにあるけれど。
それは生きていく知恵でもあるのかな。
変わって行くことは、ショックというより哀しみかな。
わたしにとっては。
ケースバイケースだけどね。

もし配偶者が、わたしの死後再婚しても
わたしはそれでいいと思うの。
独りで生きていくのは辛いし寂しいと思うから。
その人に現世で、幸せに生きて欲しいから。

一番愛した人は永遠に変わらなくても
二番目に愛した人と生活が新たに始まっても
いいんじゃないかと思うようになりました。
昔は、KINACOさんと同じようにショックを受けていたよ。
イヤちょっと前まで^^;母や父のこともあるからね。根深くw

二番目だと、一番愛した人がいた前提での緩やかな関係になる。
過去もまたその人であり、心の中に棲む人も決して消すことはできない。
分かち合えない部分があるけれど、それをも許した
緩やかで優しい関係は、あり、かと。

許し合う、という関係なのか。
奥には哀しみがやはりちらついているけど。
こうありたい願望や、そうでなければならない縛りから
少しだけ解放して生きても、長く生きることは、それだけ大変だもの。

絹子さんも実は、晩年、夫の絵手紙を胸抱くことを
深く理解した人と再婚されています。
ショックうけるかなぁ^^;

それはそれで、やっぱりひととき、安息があったのだろうと
ホッとします。人はそんなに強くない。
強い人は、哀し過ぎるもの。
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2010/08/30 09:01
哀しいけど 素敵な愛のお話だと思います。
・・私の乏しい経験だと これだけ言うのが精一杯で・・
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2010/08/30 00:31
戦地をおもわせないように
他愛のないことや花など
の絵をかく心遣い
やさしい人なんだなぁと^^
戦争で未来を奪われた人
大勢いるのに繰り返される
ですね。。。
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2010/08/29 22:44
本当に悲しい話ですけど、素敵な話ですね。
メールなどとは違って、相手の癖のある字も、
見ると嬉しくなったりしますよね。
便利になった世の中、いろんな物があふれていますが、
なくなってほしくないものもありますよね!
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2010/08/29 20:51
おおくま ねこさん★コメントありがとうございます。

題名は忘れちゃったのですが、米国の女子高生達に人気の恋愛映画
なんと、相手は吸血鬼なんですねぇ。
たやすく想いを遂げることができる米国、ひっつくにも別れるのも早い。
ならば、相手を自分のものにしようとすれば、人間であることを奪う
それを悩む吸血鬼イケメン男子と、しっかり真面目な女子高生

異種ですかぁwお互いを想うほど結ばれてはならない恋愛。
なるほど、人間同士じゃもうダメなんですねと、変に納得した正統派恋愛物語w

確かに戦争において引きさかれた恋は悲し過ぎますが
想いのこもった手紙が、永遠に変わらぬ時をくれたのかもしれません。
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2010/08/29 18:19
悲しくも素敵なお話ですね。
素敵っていうと、ちょっと語弊があるかな・・・
こうして平和なときを生きていける幸せを感じて、
お互いを思いやる気持ちを、何十年経っても持ち続けたいと思いますね。
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2010/08/29 13:06
戦争にまつわる、美しくも儚く悲しいお話ですね。
実話ってところがたまりません。
いろんなコミュニケーション手段が発達した現代よりも、昔の方がヒトの情というものが細やかだったような気がしますね。
今は、粗いです。
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2010/08/29 11:58
はれるやは単純なので
あーやっぱり報われなくてもがんばって恋を続けよう!
手紙をかこう!とか思って泣けてきたじゃないですか

そういえば今年の彼の誕生日には手紙を書こうって
約束してたんだっけ・・・
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2010/08/29 11:49
南の島と日本を往復する生活をしていた頃。
お付き合いしてた人と、お手紙頻繁にやり取りしました。
私が南の島に出発する前に、彼の部屋にお手紙をいっぱい隠しておくの。
2週間位ごとに、本棚のあの本を開いてみてとか、電話か友人に伝えてもらうの。
その時期、その心境にあった私の手紙が出てくるわけね。
隠す場所は、あっちこっち工夫して。大変、喜んでもらえました。

海外の友人にお手紙出す時は、切手をアレンジするの。
1円から100円までの切手を、その郵送代に合わせて、花シリーズとか。
5~8枚は張った封筒がとっても、カラフルになったりしてあけるのが楽しみでしょう。とって

あぁ。そんな時代もありました。
今は、ステキなメールは削除しないけど、情緒はないわな。
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2010/08/29 09:14
前田美千雄さんの作品に興味を持ちました。
しかし、展示は今日までだそう。。。
ショック・・・      ( ̄□||||!!
アバター
2010/08/29 05:15
恋愛小説は、いまや書きにくいんだろうか。
きっとね、失楽園的倒錯は描きやすいのかな。。。
昨日ね、図書館で、山口瞳さんの奥さんが書いた「瞳さんへ」という本を読んだわ。
その中で、手紙でやり取りをしていたくだりがった。いいもんだ。
私は、山口瞳さんが好きだったわ、そういえば。。。長いこと忘れていたけれど、夢中になって読んだっけ。
野坂が解説ってかなんだ?それを書いていた。

いろいろショックを受けるときがある。
生活苦から、再婚を勧められる人、再婚を望む人、そんな話を聞いたりしても
ショックを受ける。ご丁寧なこった、そんなことでいちいちショックを受ける年でもなし、と思いつつ。

なんだろう、このように一人を愛し、望み、見つめあう事をし、そしてそれを一生として。
なんともそこに安心するのだ。
戦争で引き裂かれたということは、あったにして、それは悲劇だとして
でも、恋愛としてね、このような形は、安心するの。。。ショックを受けなくてすむ。


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2010/08/29 02:20
「恋愛小説は冒険小説に似ている」かぁ~、
なるほどです。

確かに、障害があって、乗り越えて獲得してこその達成感ですよね。いまどきの「恋愛」にはその要素が少ないですね。

かといって、戦争というあまりに暴力的で悲しい障壁の前で絶たれてしまうのは切なすぎますね。
しかもそれが「作りごと」の小説ではなく、「真実」なのですから……




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