Nicotto Town


まぷこのぶろぐ・・・か?


【『侵されざる者』(ダイアモンド)】(承前)‐3

 彼女が、そのプロジェクトに関わることになったのは……
 最初は、ただの業務の一環だった。

 製薬会社に一般事務として入社した彼女は、学校こそ理系の大学だったが、成績は芳しいものではなかった。当然のことながら、配属された業務も、備品の管理や実験動物の世話などの「雑用」だった。だから、「業務」の一環として、一人の女性と同居してほしい、と言われた時、最初に頭に浮かんだのは「辞表を書こう」だった。
 それでも、さしあたりは指示された業務につかなければならないので、努めて冷静に、気になることを訊ねた。
 「ところで、この方はいったい、どういった素性の…?」
 会社幹部の身内だったりしたら、即座に断ろう、と身構えていると、意外な事を言われた。
 「それは、極秘事項だから、言えない。本人もどうしてここに連れてこられているか、本当の理由は、知らない」
 「……本人も?」
 「うん。本人には、「不妊治療のため」と言ってある。…まあ、全くのウソではないけどね。妊娠してもらうのが目的ではあるから」
 「妊娠するのが目的なのに、不妊治療じゃないんですか?」
 「ああ。それ以上は言えない。機密事項だから」
 詳しいことを訊こうとすると「機密事項」の壁に阻まれる。一事務員にすぎないのだから、それは致し方のないことかもしれないが。
 彼女は一つ溜息をついて、「機密事項」には引っ掛からなさそうなことを訊ねた。
 「…で、わたしは彼女と同居して、何をすればいいのでしょうか?」
 「一言でいえば、「面倒をみる」、かな。食事や睡眠時間の管理、それから、こちらが指示する検査に、彼女を連れてくること…などなど。大まかなスケジュールが、これ」
 そう言って、コピー用紙を数葉綴じた物を渡される。
 「その時々の状況によって変わるけど、24時間前までには、変更の指示がメールで入るから、その指示に従って。以上。質問は?」
 「あの……同居、ということですが…どこで?それと、期間はどれくらいでしょうか?」
 「言わなかったっけ?部屋はここに用意してある。期間は、とりあえずひと月。まあ、長くても一年にはならないと思う」
 「ここ……って。私のうちは、どうしたら…」
 「うち?……ああ、君は外から通ってきてるんだっけ。ご実家?」
 「いえ、一応一人暮らしですが…」
 「そうか。じゃあ…とりあえず、今日のところは、必要な物を取りに戻ってもらうとして…総務に相談かな。話は通しておくから、引き揚げるか、そのまま置いておくか、は、自分で決めるように」

 後で知ることになるのだが、この「自分で決めろ」というのはその所長の決まり文句だった。

 そして彼女は、世話をすることになる女性と引き合わされた。
 不安そうな目をした、しかし本来は、しっかりと自己主張するようなタイプに見えた。

#日記広場:自作小説

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2008/10/29 07:23
おはよう

寝起きなので思考回路が回っておらず今の僕には難しすぎる^^;

消さずに残しておいてね。。
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2008/10/29 05:01
明け方のなで…またゆっくり見ます。。。
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2008/10/29 01:41
謎が謎を呼ぶ状態ですね。
まだ大まかな片鱗しか見えてこない所も、
大きなうねりの予感です。

「自分で決めろ」これがキーになりそうですね。



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