北の少年 砂海編 48
- カテゴリ:自作小説
- 2010/09/02 18:43:10
友人のリクエストにより、篠原烏童さんの共生獣の設定をお借りしています。ファンの方で不快に思われたらお詫びいたします。
長文なので嫌~の方はスルー推奨^^;
「よく話してくれました、ロヴ」
しばらくの沈黙の後、ケニスはゆっくりと話し始めた。
表情もも態度も、初めてみる真剣なものだ。
「ロヴ、いえ、ロウ・ヴェイン。あなたは正統なロウ・ゼオンの王です。その自覚はありますか?」
「…え?」
いきなり正統な王だと断言され、ロヴは驚いたように目を見張った。
やっと、自分がロウ・ヴェインだと自覚したところだ。
そのような事は、考えもしなかった。
戸惑うロヴに、ケニスは教え諭すような口調で話を続けた。
「15年前、ロウ・ゼオンの国王夫妻が亡くなりました。その後、開国したロウ・ゼオンの王位を継いだのは…」
ここで一息つき、声を低めてゆっくりと話した。
「亡くなったロウ・ヴェック王の兄王子、あなたの伯父上で名前をバルトといいます」
「バルト…ロウ・バルトではない?それに長子なのに王位を継がなかった…?」
そう聞き返したのはジェンで、訝しそうに眉を顰めている。
「違います。ロウと名のつくロウ・ゼオンの人はみな優れた魔法使いで、王族や有力な貴族です」
「つまり、現国王は魔法が使えない…」
「その通り。先々代のロウ・ゼオンの王が亡くなられた時、国内で内乱がありました」
ケニスの話しはこうだった。
開国して他国と交易するか、鎖国をして自給自足の生活を営むか、ロウ・ゼオンは先々代の王の時代から二つに分かれて揺れていた。
まだ、魔法使いとしても為政者としても優秀な国王が生きている間は、争いは水面下で行われているだけだった。
その危うい均衡が破れたのは、国王の急な事故死だった。
事故の原因は不明で、暗殺の噂が強く流れた。
まだ壮年の王は、自分の跡継ぎを定めてはいなかった。
開国派は、魔法の使えない兄のバルト王子を跡継ぎとして擁護した。
鎖国派は、今までの伝統に従って強力な魔法使い、弟のロウ・ヴェック王子を担ぎ出した。
この二派は武力でもって争い、かろうじて鎖国派が勝利を治めた。
王位を継いだロウ・ヴェックは、荒れた国内と傷ついた人々の救済を第一と考え、敵対した貴族を公職から追放するに留め、兄王子にも国土の復興に力を貸してほしいと頼みこんだ。
交易よりもまずは国土の快復をと、ロウ・ヴェック王は自分の魔力も政治力も全てそれにつぎ込んだ。
新王の考えに深く共鳴し、王からも信頼されたのは、在野の魔法使いハランであった。
北の大地だけでなく、砂海のオアシスや遠く南の大地ノエラまで彷徨った人物である。
ハランの知識と先見の明に富んだ考えを、新王は最も頼りとしていた。
ロウ・ヴェック王はハランの娘リベカを王妃に向かえ、跡継ぎの王子も誕生して国内は平和の時代を迎えた。
そう、思われた矢先、国王一家が事故死したのである。
それと同時に、魔法使いハランも行方不明となった。
「その後、バルト王子が王位を継ぎ、ロウ・ゼオン王国は開国、魔法の品を交易品として今に至ります」
そう、話を纏めてケニスは長い話を終えた。
再び沈黙が室内を支配した。
ケニスとメルガ、そしてジェンの3人は黙って赤毛の少年を見守っていた。
ロウ・ゼオンのくわしい状況を聞いて、この少年がどんな決断を下すかじっと待っていた。
ロヴの灰色の瞳が様々な色に変化していく。
暗い雨雲の色から、翳りを帯びた水色、最後に落ち着いたのは鋼のような光を宿す銀の色。
何かを決意したらしく、掠れた声でこう聞いてきた。
「今、ロウ・ゼオンの国に住む人々は、幸せなんですか?」
「幸せ…。さて、どうかしら?」
答えたのはメルガだ。
「魔法の品は、そう簡単には創れませんのよ。最高の素材と技術で作られた品の中から、選りすぐれた品を選び出して魔法使いが魔力を付与しますの」
彼女は部屋の隅にあるランプを指差した。
銀線細工と透明なガラスがはめ込まれた、繊細な装飾のランプだ。
一目で手の込んだ、最高の品だとわかる。
メルガが一声、聞きなれない言葉を唱えると、ランプの中央に淡い光がともった。
「これが魔法の品。前は王や大貴族でも手に入れるのは困難でしたの。今は私でも手にできます」
「それだけ、魔法の品が多く創られているということですね」
「そうですわ。魔法の品を創ることが優先されて、ロウ・ゼオンの大地は荒れているとききますわ」
「つまり、人々は苦しい生活をしているということですか?」
ロヴの瞳の色が、さらに強い光を帯びた。
「ロウ・ヴェイン、魔法使いは大地の守り手。嵐や大雨の被害を最小限にくい止めるのに、彼らの力は欠かせません。それが全て魔法の品の製作に回されています」
ケニスが、メルガの言葉を引き継いでそう締めくくった。
「ジェン」
ロヴは、隣にすわる女戦士を見上げた。
ロヴの鋼の瞳が、ジェンの瞳をとらえる。
「俺は、ロウ・ヴェインとしてロウ・ゼオンの大地を踏みます」
ありがとう^^そういてもらえるのは、嬉しいなあ♪
ロヴは、やっと卵からかえった雛みたいなものかな?
いろんな経験をつんで一人前の魔法使いになってほしいよ。
私も同じように成長できたらいいなあ。
私の考える魔法使いというと口元をキュッキュッてすると、何でもでてきちゃったり、
瞬間移動させられちゃったりという、あれなんですけど…
この話を持っているとおとぎ話ではなく、本当能力の一つとしての魔法なんだと
とってもリアリティを感じます!
これからのロヴの成長が楽しみです♪
心優しい少年のロヴですが、意志は強いです。
彼の成長、書ききれるといいんですが。
応援、ありがとう^^
ロヴ・セオンの民が 苦しんでいる事 よく分かりました
ロヴの決意 応援してます^^
現実の歴史なら、自分の政治をするため、実の兄弟を殺すのも止むなしの人も存在しますね。
それが遺恨の目をつぶし選択かもしれないけど^^;
ロウ・ヴェックはいい意味でも、悪い意味でもいい人でしょう。
ロウ・ゼオンは長年他国と交わらなかった、神秘の国といえるかな?
ステキなイメージをありがとう^^
完全に閑職に追いやるなりするのでしょうが、それができなかったロウ・ヴェック王は
やさしく賢い、良い王様だったんでしょうね。
お話を読んで、現実にあったネパールの王族一家の不審死事件を思い出しました。
なんとなくロウ・ゼオンを、ネパールやブータン(神秘の国って感じで)のイメージで
読み進めてます。
ロヴも決心固めました。
これで再び話が動きます。
お待たせして、ごめんね^^
ジェンに見てて下さいって気持ちが
良く伝わりますね(^_^)v