機動戦士ガンダム 公国の威信16
- カテゴリ:自作小説
- 2010/09/24 11:50:44
U.C.0087 5.29.
長い旅路も終わりを告げ、ヴァレンスィアはマライタ島へ着陸した。
この星はソロモンの3分の1の大きさもないが、
この星の医療設備はジオンのどの基地にも増して優れていた。
真っ先にユーリとその助手のキム・リシュンが
カレンをオペ室へと運び、手術の準備を進めた。
薄汚れ、朽ちかけたたオペ室には薬品、器具、機器どれも
充実しており、正常に使えるようだったが電源が止まっているため、
電気メス、照明機器など、肝心の機械を動かしようがない。
そこで、レンがポータブル発電機を持って行き、
それを起動すると、レンはそのままオペ室前の壁に背を持たせかけ
に居座って手術の終わりを待った。
キムの手によって麻酔が入り、手術が始まった。
ユーリのメスが、カレンの脳に神の手を差し伸べた。
たった2時間半の手術だったが、レンにとっては、それが30年にも思えた。
オペ室の扉の上の赤いランプがふっつりと消え、
扉が開くとユーリがにこやかな笑みとともに現れた。
「ユーリっ、どうだった!!?」
A.E.R.は小さな組織だったため、
結成後2ヶ月もなく、メンバー全員が下の名前で呼び合う仲になっていた。
「無事に、成功したよ。一週間くらいで目を覚ますんじゃないかな。
しばらくはそばに居てあげなよ」
「本当にぃ…ありがとぉございますッ!」
レンは、オペ室に中からでようとしていたキムと正面衝突しながら
カレンのもとへ駆け寄った。
頭には縫合の跡が生々しく残っていたが、顔色は確実によくなっていた。
レンは、長い間カレンに寄り添っていた。
この時間が永遠に続いて欲しいと思う傍らで、
この願いが叶わぬものであることを、悔やみながら自覚していた。