Nicotto Town


「時のかけら」


創作小説「WANTED」2

「平行世界シリーズ」番外

   WANTED

第2話

『冗談じゃない。私が何をしたんだ
!?

 追いかけられながら考えるが何も思い当たる事がない。

 港町の入り組んだ町並みを駆け回る。

 明るい時には歩きなれた道も、薄暗くなれば勝手が違う。それでも他国の者に比べれば大丈夫だろうと思いながら走ったのだか、なぜか相手はしつこい。

 4人という数を使って、挟みこもうと追いかけてくる。

 どれくらい走っただろうか。逃げている時にいきなり誰かに腕を引っ張られ、物置の中へ連れ込まれた。

 奴らの仲間だと思って振りほどこうと手を挙げたが、

「静かに、隠れて」

 耳元に聞こえた声は若い男の声。

 追いかけて来た男達はその辺りをうろうろしていたが、諦めたのかどこかへ走って行ってしまった。

 気配がないのを確認してようやく安堵の溜め息を付き、隠れていた物置から外へ出た。

「どうもありがとう。助かったよ」

 彼女を助けた人は、見ればアルカディアより年下の、15才くらいのまだ幼さが残っている顔立ちをした男の子。

 淡い髪色に青い瞳が真っ直ぐ彼女を見つめる。

「姉さんの名前"アルカディア"だよね?」

と、突然人懐っこい笑顔で聞いて来る。

「……そうだ…が…君は?」

 警戒心を持って問いかける。

 初対面なのに名前を知られているのが気になったのだ。

 まさか、やっぱりあいつらの仲間じゃ……。

 そんな考えが浮かんでくる。

「僕の名はシーフィラノ。よろしく」

と、また微笑んで言う。

 よろしくも何もこれで別れだろうに……と思ったのだが、

 それは甘い考えだった……。

 逢った翌日、今日もまた、シーフィラノは彼女の前に現れた。

 その理由はまた変な奴らに追われてしまったのだ。金がどうとかと言われながら。

「一体何々だよ、こいつらは!?

 とうとう耐え切れなくなってアルカディアが叫んだ。

 どうやら昨夜会った男たちが仲間を集めて探しているようだった。

「あれ? 知らなかったの?」

 それを悠長に聞いていたシーフィラノがキョトンとした表情で言う。

「お前……知っているのか?」

 アルカディアに促されてシーフィラノが話し出す。別にに隠すことでもないらしい。

"アルカディア"って名前に賞金が付いてるんだよ」

 予想外の答えをいともあっさり言ってくれた。

「何で名前に?」

「僕が知っているのは南大陸のカルマキルっていう国の王がその名の者を探しているらしいって。なかなか見つからないからいつの間にか賞金がついてしまって、"アルカディア"を国王の元へ連れて行けば多額の賞金が貰えるってウワサだよ」

 それじゃあ私はこの名前の所為で人に追われるようになっていたのか?

 それも金のために……。

「なんで探してるんだ?」

「それ…は、僕も詳しく判らないけど、賞金がつくほどだから、よっぽどの用事かもしれないね」

 シーフィラノの言葉にふつふつと怒りが湧き上がってくる。

 相手は追いかけてくる男たちもそうだが、こんなやり方を許している隣国の王に対してもだ。

 カルマキルは学問の国と呼ばれる南大陸の大国だ。

 過去に…幼いころ両親と共に過ごした国が、記憶にはあまりないのだがカルマキルだと聞かされている。

 王が探しているのは、自分であるとは全く思わないのだが……。

 先日、懐かしい夢を見た。

 無邪気に街を走り回っていた、幼い記憶。

『また、会おう』

 もうほとんど顔も忘れてしまった、約束を思い出した。

 その場所も“カルマキル“だ。

 黙り込んでいるアルカディアを心配そうに見ているシーフィラノ。

「よし。どうせ、あんな奴らに追われるのなら、私の意志でカルマキルの国まで行ってやる」

アルカディアの決心を感じ取ったのか、喜びの光が灯っているのを彼女は気づかなかった。

 

 カルマキルに行くと決心してから、すぐに伯母に事情を話して家を出た。

 仕方ないとばかり送り出してくれた伯母から受け取ったのは一振りの剣。

 唯一残された父母の形見である剣だった。

「あんたはあの二人の子供だからね、こういう事もあると思ってたよ。でも無茶はしないでおくれよ」

と。記憶では穏やかで大人しい性格の鍛冶屋の父だったが、二十歳そこそこで家を飛び出し、ようやく連絡が取れたと思ったらいつの間にか結婚し、子供が生まれていたという。

 どうやら両親はかけおちしたらしい。

 自分で決めたことは貫く心根を持っていた両親。

 それが判っているからこそ、アルカディアの行動を許してくれた。

 伯母にお礼を言って家を出て、港まできたのはいいのだが、出航していく船を眺 めていた。

                             【つづく】

てことで、第2話です。
ちなみに、シノくんはエイーナではありませんのでw

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2010/10/05 00:09
アルカディアの名前に賞金がついているんだ。
まさか、人物ではなく、名前についているとは…
考えなかった。
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2010/09/29 21:27
すごいっ! 自分で 旅に出ちゃうとはっ!! どんな出会いが待っているのか。。。

続きが とっても楽しみですっ♪♪
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2010/09/29 17:11
男らしいディアに、共通する部分がめっさあるような気がします←
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2010/09/29 13:14
にゅわ〜
わくわくどきどきですね〜
続きが楽しみ♪( ´▽`)
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2010/09/29 00:33
むふー
かの地で どんな冒険がまってるのかなーw




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