創作小説「WANTED」4
- カテゴリ:自作小説
- 2010/10/04 01:36:28
「平行世界シリーズ」
WANTED
第4話
船の中は騒がしい。何時間もの間、船に乗っているため、退屈しのぎに騒いでいるのだ。
「……ディア?」
何かを感じてシーフィラノがはっとして呟く。
胸を過ぎる不安。アルカディアの身に何か起こったのか?
気を集中するように瞳を閉じる。
「こっちか…」
船を下りたシーフィラノは迷う素振りを見せることなく、どんどんと人でにぎわう立ち並ぶ屋台の間を通り抜けていく。
足は軽やかだが瞳には怒りの色。
まっすぐ前を見る目には、町の喧騒など映っていない。
それに……誰も気づかない事がひとつ……。
彼、シーフィラノの足元には普通の人間にはあるはずのもの、影がなかった………。
数人の男たちがコソコソと動いているのを見つけたシーフィラノは、あえて彼らの前に姿を現す。
「? どうした、坊主」
見張りのようにキョロキョロと辺りを見渡す一人の男が姿を見つけて声をかける。
「いえ、ちょっとその先に用事があるんです」
と、無邪気に振る舞う。
「この先は行き止まりだよ。別の道を探しな」
うっとうし気に追い払おうとした男の脇を、シーフィラノはスルリと通り抜けようとする。
「待て、このガキっ…」
慌てて肩をつかんだ男は、次の瞬間スローモーションを見るように倒れていった。
男の腕をとって投げ飛ばしたのは長身の青年。
彼の姿を認めて、シーフィラノは笑みを浮かべた。
「シノ様、その身体で危険な真似はおやめください」
「大丈夫だ。それより彼女を」
先へ進んだ男たちを追って、シーフィラノと青年は袋小路へと向かった。
ゆらゆらと揺れる感覚を感じていた。
そうだ、私は船に乗って海を渡っているんだ……。
そんなことを思いながら身を任せている。
「ディア…」
自分の名前を呼ぶ声に耳を傾ける。
不思議と懐かしさを感じる。
誰?
呟くと同時に、だんだんと意識がはっきりしてくるのが自分でもわかった。
開けた瞳が最初に捕らえたのは、淡い髪の青い瞳。
「おはよう、よく眠れた? ディア」
少し心配そうな表情の中に、楽しげな笑みが浮かぶのを見て、ディアは慌てて上半身を起こす。
どうやらシーフィラノに膝枕をされていたらしい。
周囲を見渡してココは船の中だと気づく。
「…えーっと…男たちに追いかけられて……」
「そうだよ、狙われてるんだからもっと気をつけなきゃだろ」
「……助けてくれた、あの人は?」
「……運んでくれて、別れたよ」
「…お礼、言いたかったのに」
あのまま現われなかったら、確実に連れ去られていたと思うと今更ながらに感謝の思いだ。
「…僕には何の感謝もなしかよ」
言葉は拗ねて見せても顔と口調は笑っている。
「私に勝手に付いてきてるんだから、それくらいしてもいいだろう」
「あ、ひっでー!」
「ひどくない」
気分を変えようと船の甲板に出た。
心地よい潮風が頬に当たり、長い髪を揺らす。
太陽はすでに昇り、波間に光が反射する光景に心が和む。
もう、元居た北の大陸の影も全く見えなくなり、反対に南の大陸の影がうっすらと地平線に見え始めている。
太陽が南中を過ぎて半分傾くころには大陸に到着するだろう。穏やかな波の上を、船は滑るように進んで行った。
「そういえば、ディア」
「なに?」
「なんで、剣を抜くのをためらったの?」
見られていたのかとアルカディアは苦笑を口元に浮かべる。
手にある一本の剣。
両親の形見として残った唯一のものだ。
鍛冶屋をしていたらしい父だったが、その前に刀匠として最後に打ったものだと聞かされたのを記憶している。
女性用としてはちょっと大きなひと振りを扱いたいと思い、女の身でありながら剣を習ったのだ。
「…大切な剣だから、あんな奴ら相手にして刃に傷がつくのが嫌だったんだ」
「そうか」
そう頷くシーフィラノの表情が思ったより優しげで、なんだか気分が落ち着かない。
第4話をお届けです。
日記と前半かぶりますが、よろしくです。
編集作業というより、加筆作業になっていますねw
別の話で書こうかなと思っていた設定を、もうここで使っちゃえって感じでw
伏線入りになっております(笑)
イラストUPしました。
ちゃんと見れるのか謎ですけどww
http://74472678.at.webry.info/album/aki-kakera
シーフィラノって何者なんだ~~
ふふふ
イラストはちゃんと見れたよ~~