創作小説「WANTED」5
- カテゴリ:自作小説
- 2010/10/05 00:21:02
「平行世界シリーズ」
WANTED
第5話
「…………」
「その剣、見せてもらっていい?」
「…うん、いいけど…?」
持っていた剣をシーフィラノに渡すと、彼は真剣な表情で剣を見つめ、少し鞘から刀身を抜く。
シンプルな飾りは模造の装飾用ではなく、実践用に作られたと分かる代物。
しかし、シンプルな中にも造られた柄には細かな細工がしっかりと施されている。
そして、刀身に刻まれた紋様。
それを確認してからシーフィラノは剣をアルカディアに返した。
「この剣が、どうかしたのか?」
「なかなかの細工だなぁと思って……」
「?」
受け取ったアルカディアはじーっと剣を見つめた。
黙り込んでいる彼女を不思議に思ってシーフィラノが声をかける。
「アルカディア?」
その姿を見てシーフィラノはそっと後ろから、アルカディアに腕を回し、抱き締めた。
「! な、何すんだよ」
顔を真っ赤して腕を振り払おうとするが、シーフィラノの力が強く、振りほどけない……。
「我慢しなくてもいいよ」
アルカディアの耳元で優しく囁やく。
「僕の前では我慢しなくてもいいよ。ディアは何でも一人で出来る奴じゃないって知っているから……知ってたから……」
シーフィラノの言葉を聞きながら、いつの間にか涙が溢れ出てきた。
無意識のうちに……。
何故かほっとする。以前にもこんな事があったように感じる。
いや、確かにあった。まだ幼い頃……。
泣いていた私を、私の側にいて……ずっと慰めてくれた。
確かあれは……
両親が死んだ葬式の日。
独りぼっちになったと実感した日。
1本の剣を握り締め、涙を流し続けた日。
「アルカディア……」
シーフィラノの声が懐かしい遠い年上の人の声と重なって聞こえた。
もう顔も忘れてしまった相手。自分より年上だったから、彼のはずはないのに。それでもつないだ手からは温かいぬくもりが感じられた。
船がカルマキル国の港に着いた。一泊した島から10時間程も乗っていた所為もあって、地面に立ってもまだふわふわした感覚が離れない。
早く宿で休みたいとアルカディアは切実に思う。
泣いた(泣いてしまった?)おかげで心も軽くなって元気になったけど、シーフィラノと顔を合わせるのは照れくさい。
ふと、彼の姿が周囲に見えないのに気が付いた。
「どこに行ったんだろう……?」
さっきまで一緒にいて、降りて来た筈なのに……。
日はもう山の向こうに沈みかかり、空は夕焼けで美しい。どこの土地でみても夕焼けは同じだ。
心が和む。
港町はやっぱり騒がしく、日が暮れ始めても賑わいは衰えを見せない。物心ついてからの初めての異国である。見るもの聞くもの、新鮮で楽しい。
早く泊まる宿を探さなければ、いっぱいになって野宿になってしまう。
町を歩いて気になったのは、どこからでも見える高台にある宮殿。
一際目立っている美しい造りである。
その宮殿がよく見える宿を取って主人に尋ねてみた。
「あれはこの国の第2の城だよ」
と、笑顔で答えてくれた。
いつもは国の中心にある城に住んでいるのだが、月に何日かはこの城に来るらしい。
「今、あの宮殿にいらっしゃるみたいだけどね」
この様子からして、国王は民の皆から慕われているのだろうと判る。
部屋を案内してもらい、ベッドに腰を下ろして息を付いた。
『明日、城に行って確かめなければ……』
そのために海を越えてまでこの国まで来たのだ。
コンコンっとドアがノックされた。
応答した声に入って来たのはシーフィラノだった。
「やぁ」
「やぁ、じゃないでしょう。一体何してたのよ」
「そんなに心配してくれたんだ、僕のこと」
笑いを含んだ勝ち誇った顔。
「心配なんかしてない!」
また顔を赤らめて素早く切り返す。シーフィラノはケラケラ笑っている。
完全にからかわれている……。
「夕飯食べに行くんだろ?」
「うん」
「行っといで」
「? シノは? 行かないのか?」
それにシーフィラノは一瞬困ったような顔をしたが、
「うん。僕はいいんだ。食べて来ていいよ」
笑顔で言った。
アルカディアが部屋を出て行くのを見送り、シーフィラノは真剣な表情になる。
「もう……この姿のままでは……逢えないね」
小さく呟くと、シーフィラノの姿は空気に溶け込むように消えてしまった。
窓からは月明かりに照らされた高台の城が、浮かび上がって見えていた。
【続く】
第5話です。
あと3回くらいで終わりかなぁなとど予定を立てておりますw
ふぃ、ふぃらのん!?Σ 何があったんだ...
結末が楽しみでふ~~~~~♪♪ それと・・・ イラスト 拝見させていただきましたっ!!
エイーナくんっ! なかなかの美男子じゃあないでふかぁあああああ~~~~~♪♪(笑)ww ふふっ♪
しかも、もう会えないの~~?
どんな秘密があるんだ~~~