創作小説「WANTED」6
- カテゴリ:自作小説
- 2010/10/05 22:25:42
「WANTED」第6話
翌日。
アルカディアは朝食を済ませると宿を後にした。
城への坂道を歩いて行く。
『そーいえば、昨日あれからシノを見なかったけど……どうしたんだろう……』
夕食を食べて戻った時にもシーフィラノの姿はなかった。どこかに出かけているのだろうと思い待っている途中で、いつの間にか眠ってしまったのだ。
結局、帰って来なかった。
でもひょっこり現れるような気がして心配にならないのだが、気になる。
しかし、考えて見るとシーフィラノはこの国に来てから自分の前でしか人前に姿を現していない。姿を見せるとまずい事でもあるのだろうか……。
いろんな考え事をしながら歩いていたので、何度も城に行き来している商人にぶつかりそうになったが、なんとかやっとの思いで城壁にたどり着いた。
高台へと続く長い上り坂で息が切れている。
呼吸を整えてから門に立っている守衛に声をかけた。
「すみません。この城の国王が"アルカディア"と言う名の者を探していると聞いて来たんですけど……」
緊張と自分の事を言っている恥ずかしさに、しどろもどろになってしまう。
守衛は慣れているのか、近くにいる侍女を呼んでくれた。
親切に広間まで案内してくれる。彼女も相当慣れているようだ。今までに何人もの人がこうやって訪ねて来たのだろう。
殆ど金目当てで。
廊下の壁などにも高価そうな絵画や芸術品が並べられている。さすが安定している大国だ。
もうすぐ、事実が判るのだ。はやる気持ちを押さえ、連れて来られた広い広間へと足を踏みいれた。
中には青年がひとり、彼女の到着を待っていた。
侍女は一礼するとすぐに下がって広間を出て行く。
緊張するなと言う方が無理だ。
『やっぱ、シノが現れるまで待っていた方が良かった……』
しかし、今更後悔しても後の祭りだ。
緊張はしていたもののビクビクしていない。
自分は何も脅えるような事は何ひとつしていないのだ。
「お待ちしておりました、アルカディア殿」
彼女の姿を見て、笑みを浮かべた青年だったが、その声に聞き覚えがあった。
「えーっと…もしかして、男たちから助けてくれた方ですか?」
「そうです、よくお気づきに…。私はケーノサ=メルキーヴァと申します。今、病状で臥せっておりますこの国の王子の傍に、仕えさせていただいてます」
「王子?」
「はい。貴女に会わせたい方がいるのですが、ついて来ていただけますか?」
優しい笑みを浮かべ、ケーノサは彼女を連れて城の奥へと案内して行く。
「貴女みたいな方で良かった」
「え?」
「名前だけを頼りに、探していたのですが、何を思ったのか賞金まで付けて探し出そうとした者もおりまして……」
「……えっ? てちょっと待って」
「はい?」
にっこりと邪気のない笑顔を見せるが…あまりにもキレイな笑顔に逆に確信できる。
「もしかして、あんなに追いかけられた原因に、あんたも含まれているのか?」
それは原因に助けられていたということか?
「直接とは言いませんが、無関係ではないことは認めます」
笑みを消した真剣な表情。
「どうしても貴女を探し出さなければならない、理由がありましたので」
立ち止ったのはひとつのドアの前。
コンコンっと扉をノックして、その大きな扉を開けた。
寝室。
何故こんな所に……?
太陽の光が十分に入って来る明るい部屋だった。
レースのカーテンが開け放された窓から入る風に緩やかに靡いている。
その窓辺にはベッド。、
「貴女の力を必要として呼んでいたのは、あの方です」
そこに沈み込むようにして眠っている青年。
「3年程前に突然倒れてからずっと眠ったまま、目を覚まさなくなりました」
「?」
それと自分はどう関係あるのだろう……?
まだ疑問だらけの思考でケーノサの説明に耳を傾ける。
「1年ほど前に原因らしきものを突き止めて、少しだけ意識を取り戻した時に告げられたのです。"アルカディア"を探せと……」
それから"アルカディア"探し始めたのだという。
なかなか見つからないことから、やがて臣下たちが賞金を付けて探し出し、金額も徐々に上がってきた。それで偽者も現れるようになり、諦めそうになっていたそうだ。
アルカディアはケーノサに促されて眠っている王子の元へ近付いて行く。
確かに顔色も普通に眠っているような感じで病気には見えなかった。
これで3年間も目が覚めないなんて信じられないくらい。
ベッドに沈み込む顔を見て、ふと。どこかで見たことのあるような気がしてきた。
そう、誰かに似ている。
誰だったかなぁ……
悠長に考え込むアルカディアの脳裏に、最近ずっと見ていた一人の顔が浮かんだ。
「あー!?」
小声で叫んでしまった。
どこかでと思えば、自分をここまで来させた張本人。
この国に来たとたん姿を消した彼。
幼さはもう残っていない。
「……シ…ノ………?」
驚きと疑いが混ざったような複雑な口調。
「はい」
ケーノサははっきりと頷いた。
「カルマキル王の唯一の王子・シーフィラノ=カルマキル様です」
そりゃ、そんな能力が使えるのは……あの方がいるからでしょうww ←バラしたw
でも、なんでそんな能力があるのかなー?w
玉の輿(やめなさい