創作小説「剣術の祭典」(3/3最終)
- カテゴリ:自作小説
- 2010/10/09 02:36:31
剣術の祭典
第3話 最終話
相手と握手を交わしあい、笑顔で別れ控え室へ続く回廊にウェープがいた。
息を乱して瞳に怒りが灯っているのが感じられた。
思い当たる節はひとつだけある。
たぶん、彼は聞いたのであろう、今日で最後だということを。
「エフェルファ」
「今までありがとう、ウェープ」
「そんな言葉、聞きたいんじゃない!」
「もう決めたことだから」
決まったのではなく、自分で決めた事だから。
学校を退学してルクウートから去ることを。
「何で黙ってたんだよ」
「……たぶん、ウェープが怒るのが目に見えていたから」
どこまでもまっすぐな瞳で悲しんでくれるだろうと予想はできていたから。
2年半、テニトラニスの王子ではなく過ごした時は思ったよりも楽しかったものだから。
「気軽にさよならなんて言えないだろ」
「なんで突然…」
「友達を助けるために。俺が出来ることはやってみようと思って」
前から『友達が病気で』と時々長期休暇を取って出かけていたのを知っているウェープは口をつぐむ。
「また必ず逢えるよ」
エフェルファいや、演じるのを止めたエイーナは笑う。
「…でも……」
いくら自由に育てられているといってもウェープは一国の王子。
こうやって立場の違う者と話せるのは学生の時だけと理解している。
また逢えたとしても今と同じような振る舞いや関係には決してなれないと。
エイーナは持っていた剣をウェープに差し出した。
「もらってよ」
と。
勝利を納めた剣。
剣士にとって剣は様々な意味を持つ。
誰もが不可能だと思った大剣さえも受け止めた細刃の剣。
また逢おうと実現できないかもしれない望みを絶対に適えられる証として。
ウェープがしっかり剣を握って受け取った。
それに満足してエイーナは微笑む。
「それでは。私はこれで失礼します」
ウェープの横を通り出口へと向かう。
「次に逢った時は俺と勝負しろよ!」
声に振り向くと絶対勝ってやる!と言外に現した笑顔で腕を振っていた。
エイーナが待っていた馬車に乗り込むとすぐに馬は走り出した。
祭典の一番メインの試合を見るために駆けつける者とは逆方向に闘技場から遠ざかっていく。
「先程の試合、見事でしたね」
「運が良かったんだよ」
「剣が折れなかったのがですか?」
「半分ね」
傷ついてもいいとあの時は思った。
たとえそれが致命傷になっても控えていた魔導士達がすぐに回復治療をしてくれると判っていたから。
逆にそれがどういうものか身をもって体験できるかもしれないと。
しかしそれよりも、受け止めてやるという思いの方が強かったことが事実。
剣の勝負は力や素早さ、技術だけではない。
剣を振るう者の精神力も勝敗に関係するだろう。そういう目に見えない力をエイーナは鋭く感じていた。
同じ強さの一振りでも気迫があるのとないのとでは攻撃力に差が出て来る。
それは防御にも応用できること。
普通の者にはなかなか出来ないだろうが、エイーナにはその《力》を操る素質があったからこそ出来得たことだ。
そのことはエイーナも自負している。
だから、今こうしてルクウートを後にしているのである。
「エイーナ様、どちらへ向かいましょう?」
「……ソハコサへ」
魔導の国・ソハコサ。
エイーナはナイフを手に取ると自らの髪に刃を入れた。
ためらいもなく長い髪を首元で切り落とす。
「魔導士になる」
揺ぎ無い蒼い瞳がシキアの反論を押さえ込んだ。
覚悟を決めてしまっている瞳に何を言っても無駄なことをシキアは知っているから。
それにシキアもエイーナが魔導士になると決意した理由を推測することが出来た。
原因不明の病で眠ったままの親友。
またそれはカルマキルの王子ということで静養中と公表され、事実は伏せられている。
エイーナのルクウートの留学行きを『頑張れよ』と見送ってくれたのが最後。
医者以外に病を治すことが出来るのは魔導士だ。
しかし、魔導士を派遣してもらうためには様々な手続きが必要となる。
事が公に出来ない分、魔導士を派遣してもらう事は不可能。
だったら自らがなればいい。
素質があるなら。
それで学術入学試験を受けたエイーナは無事に許可を勝ち取った。
ルクウートの留学を途中で終えてでも、魔導士の資格を取って助けたい。
テニトラニスの王子という身分を偽るために、金から黄土色に染めた髪。切った髪を馬車から外へと出すと、風が掌から吹き飛ばしていった。
ソハコサへ
魔導士となるために――
2002.12.31
明日は仕事でUPが遅くなりそうなので、もう今夜にしてしまえーーてことで最終話です。
てことで、エイーナくんの魔導士になるきっかけ話。てことでWANTEDへの伏線でしたw
WEATEDを完結した後は、エイーナの裏設定2弾の「魔導士の祭典」・WANTEDのウラ話になります。
こちらも加筆編集しそうです…よろしくですw
(^^)
読みきれた
伏線ありまくり小説です、平行世界はw
頑張って続きを書きまする。
本編はエイーナくん主役のはずなのに、全然進んでいません。
すでに何年経っているのやら…実はあまり時間が経ち過ぎると、
最終の辻褄が合わなくなるという、恐怖の小説でもあったのです><
まだバラせないですがww
年月が過ぎるのは本当にはやいですなぁ、
くまさん(おそっちゃうぞ❤はやっぱ打ちにくいっ)も実感しますよねーー
また創作小説のまとめをUPしたいと思います。
あいりぃさん、よろしくですーww
あぁ、終わってしまった...
エイーナくんのお話待ってますっ(ノ*゜ー゜)ノ
8年前っていうとかなり昔ですが、ついこの前のような気がしますwww
本当に色々繋がってますのですねー。
で、そろそろ私の足りない脳みそだと全部把握しきるのに時間がかかるので設定を一旦まとめてくれると嬉しいです…ww