創作小説「魔導士の式典」(3/3最終話)
- カテゴリ:自作小説
- 2010/10/24 22:03:31
「平行世界シリーズ」
魔導士の式典
『覚えてるか? エイ。前に街で出会った黒髪の女の子』
「え?」
シーフィラノと共に宮殿を抜け出して街へ出かけたことはいくらかある。
その時に会った……?…
思い出してみると一人の少女の姿が浮かんだ。
シーフィラノがヤケに気に入っていた女の子だ。
普通の街に住んでいたのに、たち振る舞いがどことなく周りの子たちと違って見えていたのを覚えている。
直接会ったというか、彼女を見たのは2回程度だろうか。
シーフィラノの様子だと、何度か会っているように思える。たぶんエイーナがカルマキルに来ていない時も城から抜け出して普段から城下町を闊歩していたに違いない。
『最後に見たのは両親を亡くして泣いていた時だ』
「そうなんだ」
『両親を失って伯母の所に世話になると言っていた。街も離れることになると』
懐かしそうにシーフィラノは話す。
『で、そこで約束したんだ。16才になったら迎えに行くって。俺の傍にいろって』
「………それって……」
『俺が決めた婚約者』
きっぱり笑顔で言い放つシーフィラノ。
「…………」
またこの人は勝手に…とあきれ顔のエイーナに、
『彼女は化けるよ』
と、自信あり気に言って見せた。
言葉は力を持つ。
魔導を行う準備をしながらエイーナは思い出していた。
シーフィラノが交わした約束の言葉にも〈力〉は宿る。
実際、シーフィラノの放つ言葉には噂通りに強い意志が込められた「言霊」の力を持っているとエィーナも感じる。
二人が再び出逢った時、言葉の呪は成就される。
だからこそそれはシーフィラノの身体を目覚めさす、きっかけとなりうるはずだ。
彼女の居場所はテニトラニス。
ようやく突きとめたよく知った街をエイーナは思い出しながら、完成した魔法陣の中に座した、
部屋の中に控えるのはエイーナの従臣であるシキア=タヤと、シーフィラノの幼馴染でもあったケーノサ=メルキーヴァ。
カルマキル王の重臣であった父が亡くなってから、実は妾の子であった彼は、王都を離れ、第二の都市であるこの港町で市井として暮らしていた。それを知っていたエイーナは彼にも協力を呼びかけ、シーフィラノの側で準備をしてもらっていたのだ。
魔法陣の中で精神を集中させていく。
何もない部屋に魔法陣。その中心にシーフィラノを横たえた。
周囲に置かれた水晶のカケラが淡く輝きもシーフィラノの精神体は目を覚ます。
「おはよう、シノ。よく眠れてた?」
『夢も見れない程、深くね』
肉体の上に起き上がったシーフィラノは数年前の少年の姿のまま。
「準備は整ったよ」
エイーナの言葉にシーフィラノは魔法陣の人へ出てみる。
自由に歩き回れることを確認する。
「彼女を探すために情報を流したら、従臣たちが『我先に!』と探しましてね、彼女に賞金まで付いちゃったみたいなんだ」
エイーナは苦笑する。
『彼女はどこに?』
「テニトラニスに。無事、彼女を連れて来てください」
再び魔法陣の中に入ったシーフィラノ。
そして共にケーノサが中へ入る。
魔導の術を使ってまるで普通と変わらない姿でも、それが精神体であることは変わりない。シーフィラノに危険が及ばないようにとケーノサが護衛を買って出ていた。
『行ってくるよ』
エイーナの見守る中、姿を消した。
魔導で彼をテニトラニスへと送ったからだ。
シーフィラノの精神体を保ち続けるために、この場所から魔導を送り続けるのがエイーナの役目。
彼は瞳を閉じ、意識を集中させた。
どのくらいの時が流れているのか判らない。
そんな中、名を呼ぶ声が聞こえたので瞳を開けた。
『エイ』
目前にはシノの精神体。
「……シノ……」
「無事に戻ってきたぞ。彼女も明日にはこの宮殿にやって来る」
表情は明るい。
「良かった……」
安堵のため張りつめていた気が緩んだのか、崩れる身体を支えたのはいつの間にか側に来ていたシキアだった。
「エイーナ様」
数日間、絶食して術を行っている彼を心配して側にいたシキアを、シーフィラノはもう終わるからと〈魔法陣〉の中に招きいれたのだ。
「ありがとう、エイーナ」
シーフィラノの声を耳にしてエイーナは意識を手放した。
目を覚ますとベッドの上だった。
心地よい風が窓から入ってカーテンを揺らしている。
「おはよう、よく眠れたか?」
と側から聞こえた声は聞いたことのない低い男性のもの。それでも記憶に残る口調はしっかりとそのままで。
「シノ!!」
飛び起きた身体はめまいと共に頭痛を引き起こし、再びベッドへ逆戻り。
精神の疲れと空腹で思ったより肉体に負担がかかっていたようだ。
めまいが引くのを待ったエイーナはもう一度、確認するようにシーフィラノを見た。
自分より2つ年上の親友。
ずっと眠り続けていたために肌も白く、健康とは言えないかも知れないけれど、生命感のある身体が動いていた。
視線を交わして自然に笑む表情。
「おかえり」
「ただいま」
こうしてエイーナの休日も、終わりを告げると共に終了した。
ソハコサに戻れば魔導師エカーチェフとして王宮へ仕え、重要な任務を受けることになろうとはまだ知らない先の話である。
しゅーひ編集長さまww
本編はまだ書き上がっておりませぬ><
〆切までもう少しの猶予をww ←少しですんだらいいんだが・・・><
ひろぴょんさん。
名前はみんなに言われますねぇ・・・カタカナ名は私も覚えづらいですww
愛はこれから愛に変わっていくのだと思います。
あいりぃさん。雫さん。
はい、ここから先が本編なんですw
ぶっちゃけて言っちゃえば、魔導師から王子に戻りますよww
ま、本編は最後まで魔導士がらみではありますけどねww
という事はエイーナの目的は本編前には済んでいたという事になるのですか。
難しかった
女の子は愛だったの?
(^^)
本編がまだ残ってるんだよね?
サイドばっかりのような気が・・・?w
最終話をお届けです。
「WANTED」のウラサイドストーリーでした。
さて、次は何にしようかなと思案中。
「平行世界」の在庫小説がほとんどなくなってしまったからねーー><
べつの創作小説を探してみますww