走る女
- カテゴリ:自作小説
- 2010/10/25 02:13:05
走る女
はたから見ると
遅刻しそうな女にしか見えないが
女は逃げていた
後から追ってくるものはないが
何かから逃げていた
ようやく女は立ち止まり
後ろを振り返り
安心したように
呼吸を整える
一度周りを見渡すと
路地裏に入り
古ぼけたビルにある
錆びついた扉を開け
中に入る
扉を開けると
すぐに階段があり
その階段を
駆け上がる
5階の踊り場にある扉を開け
中に入る
そこには仕切りのない部屋
壁がところどころはがれ
向かいにあるすりガラスから
光がさしこむ
女は靴を脱ぎすて
床に倒れこむ
横になったまま
ズボンのポケットから
透明の小さな珠をとりだし
光にかざす
珠は光を吸い込み
部屋は闇となる
闇の中で珠だけ光る
そのあと珠は一気に光を放ち
部屋中を光で満たす
光を放ったあと
部屋は元の薄暗い部屋になり
女も珠も消えていた
床に脱ぎ捨てられた靴だけを残して
しばらくしてさっきの女が
扉を開けて入ってきた
今度は靴を履いていない
「こうなると思った」
とつぶやき
汚れた靴下を脱いで
ポケットにしまい
靴を履く
「帰るかな」
そういって
扉を開けて出て行った
女は家に帰ると
汚れた靴下を
洗濯機に投げ入れ
汗ばんだ服も着替えた
カーテンを閉めて
ポケットからあの珠をとりだし
木箱に入れて
タンスの奥へしまった
「この珠 何に使うんだろ」
「明日 考えよう」




























今はショートショートで・・・