絵本【音楽/俣野温子】
- カテゴリ:小説/詩
- 2009/03/12 02:46:15
from
絵本【音楽/俣野温子】
[1993《株式会社カボ企画》発行03-3318-3044]
どこかの街の角に立ち、途方に暮れることがあったら、私は右の手
の平を、そうっとあけて、覗きこむ。
そこには別の街があり、もうひとりの私が住む。
その街に、行ったことはないのだが、潮を含んだ風のにおいも風景も、細い小道に咲く花も、私は充分知り抜いていて、その街で、道に迷うことはない。
私が歩く道の向こうに、小さな家が建っている。私はまっすぐ、そこに入る。
部屋には音楽が流れ、私は一杯の、熱い珈琲を飲む。
ひとときの休息の間に、音楽は、時に強く、時にやさしく、心をひたす。
その街は陽が落ちない。部屋の中には、光と影が交錯する。
その街は時が止まっている。ただ音楽だけが、ゆったりと流れる。
私は古い本棚から、昔読み捨てた一冊の本を取り、ページを開き、その行間を読む。
「もう行きなさい。」私をうながし、呼びもどす その声は、晴れやかに澄み、決して私を、追いたてない。
求めようとして、人は度々道を間違える。私は右の手の平を、そ
うっと閉じて、又、歩き出す。
街は活気に溢れ、忙しそうに人々が行きかい、私も又、いつか人波の中に帰り 笑いながら、歩いてゆく。
from【音楽/俣野温子】
[1993株式会社カボ企画]
↑ムカシ読み置いてイル一冊ノehonヲmigi-no-te-no-hiraニそっと開イテ..ミ..ル.
いろいろな本を書かれているようですね。
実は絵本描いてたり音楽活動は今回調べて初めて知りました。
そういえば音が聞こえて来る絵ですよね。
ご紹介くださってありがとう。
ホント最高のナビゲターでらっしゃる。
moonさん紹介してくれてありがと^^
右の手の平の街、音楽の家と珈琲と本。
不思議だけどなんだかわかるようなお話に感じました。
Moonはいろんなジャンルの作品をご存じね(^^)