Nicotto Town ニコッとタウン

スマホ版あります♪



走る女 1

バッグの中に
透明の珠が入っていた
全く覚えがない
手に取り眺めると
その珠のまわりは
陽炎のように
ゆらゆらとゆれていた
やがて異様な光を放ちだした
とっさににぎりしめて
バッグの中にしまった
一瞬 怖いと思った
おそるおそるバッグの中をのぞくと
まだ光っている
じっと眺めていると
しばらくしてその光は消えた
いれたままにしておくのも
気味が悪い
また取り出すのも怖い
部屋の中を捜し
宝石を入れていた小さな木箱と
紺色のハンカチを持ってきて
そのハンカチで
その珠をつかみ
すぐさま木箱に放り込んだ
ふたをして
様子を観察
無事なようだ
ちょこっとだけ
中をのぞく
見た目はただの珠
捨てる気にもなれず
そのまま
タンスの引き出しにしまう

あくる日
仕事も休みで
掃除と洗濯を済ませ
ごろごろと過ごす
テレビにも飽きて
あの珠のことが気になり
あの木箱と向き合う
中をのぞき
そっと取り出し
机の上で
ハンカチを広げる
ただの透明の珠だ
昨日のあれはなんだったんだろう
珠を手に取ると
またゆらゆらが始まった
手のひらの上で
それは光を吸い込んでいるようにみえる
珠の中の光に魅入られたかのように
光をみつめている
やがて
それは光を解き放ち
目の前は真っ白に

次に目を開いたとき
女は
珠を手に
家の前に座っていた

#日記広場:自作小説





Copyright © 2026 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.