『Not guilty but…』(3)
- カテゴリ:自作小説
- 2010/11/06 04:56:43
『Not guilty but not innocent』(承前)
「ちょっとお伺いしてもよろしいでしょうか」
「……私に答えられる事でしたら」
一体何を訊かれるんだろう?自分には疾しい事はない、と思うのに、妙に不安になる。
「型どおりの質問ですので。……まずあなたのお名前と、年齢、それからお住まいを」
グレイの方がクリップボードをかまえる。
ああ、『事情聴取』ってやつか。それならば、と機械的に答える。年齢のところで危うく『自分の』年齢を言いそうになって口ごもってしまったが、とりあえずスルーされた。
「死体を発見したいきさつについては、二度手間になるでしょうから、あとで、しょ…」
「死体、というと、やっぱり亡くなってらしたんですか?あの人」
言葉を遮ってしまったので、軽く睨まれた。
「…そうですね。せっかくの通報でしたが、死後二・三時間というところらしいです」
死後二・三時間……自分にとっては何の意味もない数字だが、場合によっては微妙な時間だ。
「じゃあ、私が寝ている間に、心臓が止まってしまった、という事でしょうか?」
「あなたがそう言うのならそうかもしれませんね。ところで、その前の事は?」
「前?」
「彼が、死体になる、前。あなたが、お寝みになる、前」
「……すみません。わからないんです、全く。あの人とどこで会ったのか、とか、どういういきさつでここに来る事になったのか、とか」
「…覚えていない、と。…じゃあ、昨夜の行動は?話しているうちに何か思い出すかもしれないし」
「昨夜、ですか?」
昨夜と言われても……だいたい今日は何月何日だ?
窓がないので外の様子が判らないのが痛い。
……今日が何日か、訊いてみようか?ちょっと足りない、と思われるかもしれないが、どうせ知らない男とベッドを共にするような女だと思われているのだろうから、多少の悪名が上積みされたって……
《私》にはショックが大きいか。この場だけで済むならいいが、長引くようなら《私》は確実に巻き込まれる。
「えーと、昨夜は……体調が悪くて自宅で休んでいた、と思うんですが……だから、目が覚めて、自分の部屋じゃないのに気付いてびっくりしてしまって……」
つまり、昨夜の記憶がそっくりない、と聞いて怪訝そうな顔になる。
「自宅で休んでいた。で、目が覚めたらここにいた、と。……休む前、何か薬は飲みましたか?」
「くすり…」
たぶん飲んではいないと思う。少なくとも市販の鎮痛剤や風邪薬の類は。
「飲んだ記憶は、ありません」
「体調が悪いのに?」
「寝ていれば治るかと思って。半日様子を見て悪化するようなら、知り合いの医者に相談しようと」
「知り合い、ね。…その医者の名前は?」
「えーと…」
名前を言おうとして、ちょっと考えなおす。
「…それが、何か関係あるんですか?」
「あるかもしれないし。ないかもしれない。それを判断するのは、俺じゃなくて上の方だから。言いたくないっていうならそれでもいいが」
言葉遣いがちょっとぞんざいになってきている。
「…ではそれは、本人から聞いてください。じきに来ると思いますので」
「本人から?じきに来る?」
「私の荷物の中に、財布と携帯電話がなかったので、…迎えに来てもらおうと思って、フロントに頼んで電話を。……あ、遺失物の届け出って、ここでできますか?」
「迎え、って…」
刑事が呆れたような顔になる。
「一体どういう関係だ?その医者とは」
「……患者と主治医、ですが」
とりあえずのところは。たぶん。彼の方はどう思っているかはわからないが。
「たまたま、同じマンションに住んでいますので。…むろん、違う部屋ですが」
「主治医、というと、どっか悪いところでも?」
「……答えなければいけませんか?」
刑事が何か言おうと口を開けかけたところへ、制服警官が入ってきた。ドアのところから質問している方を呼び出し、何か耳打ちする。
「どうやらその『主治医』とやらがご到着のようだ。そっちからも話を訊いた方がいいのかな?」
戻ってきた刑事がそう訊ねてくる。
「…理由を伺ってもよろしいでしょうか?」
大方、こっちからろくな情報が取れないからだろうが。
「ひとつ。死んだ男の身元が不明だ。二つ、あんた自身も身元を証明する物を持っていない。だからあんたをこのまま帰す訳にはいかない」
「身元が不明?あのひと、財布とか、持ってなかったんですか?」
自分が持ち込んだと思われる小ぶりなバッグには、財布やカードの類は入ってなかった。だからここの支払いはあの男がしたのだと思うが。
なのに今の日付は分からない…。 しかも近日中の記憶がどうやら無いらしい…。
何で知らないんだろう…?
謎ですね~! 先が気になります!
でも勿体ないからじっくり読みます♪ (^m^*)ムフ♪
でも刑事って怪しいと思うと慇懃無礼(丁寧)な言葉になりますよ。
実体験がありますからw
1~3話まで読ませていただきました^^
お話の続きがとても気になります> <
続き。。♪楽しみにお待ちしています^^
失礼致しました。。☆