ビュウゥ

2階から飛び降り、1階へ降りた。

―第11話―

―人格―

「くっ…」

厚樹は腕で自分の血を拭う。

そして、あたしは2人の間に入った。

「明日香！！じゃないな…」

「喧嘩は止めな。明日香が願ってる。」

あたしは2人を見ながら言う。

「明日香さん、君何ができるですか？」

「うるさい！ともかく喧嘩は止めろ！！」

「これは厚樹のためなんだ…あいつは、浮かれてんだ。
　そしたら、好きな女1人守れない奴になる！！それが嫌なんだ！」

「だったらもう良いでしょ？」

…あたしの頭の中の明日香の声が…

「それでも、気がすまないならあたしが相手だ！！」

「ヒュー、でもなぁ…フッ、厚樹は自分のことに気付いたみたいだし…別に良いけど？」

「じゃあ…いくよ！！！」

――――――――――――――――――――――――――――――――

「ハァハァ…お前…本当に…ハァハァ…女か…？」

「えっ？もちろん。」

さっきまで威張ってたけど…大丈夫…？結構手加減したんだけど…

「んっ…ツー…明日香(？)お前は誰だ？」

あっ、やっぱり…髪色違うもんね

「あたしは、麗黒(れいこく)。」

「冷酷？」

「漢字…違うと思う…綺麗な麗に黒。」

普通に考えて、名前で冷酷っている？

「黒の由来は髪だろ。」

寝そべってる、寒樹が言う。

「うん…明日香が付けてくれたんだ。」

「明日香が…って、そういやお前は誰なんだよ！」

「あたしは明日香の裏の人格。」

「多重人格か…嫌な記憶を押し付けたいがために生まれるんだろ？もう一つの人格は？」

よく知ってる…まあ、頭良いからか…寒樹は

「そうだよ。彼女の嫌な記憶は、厚樹との出会いだよ。」
―9年位前―

「ひゃくっ…ひゃくっ…ひゃく…」

『どうしたんだ？泣くな！！！』

「だっだ…誰？」

『あたしはあんたの裏だ！！』

「裏…？多重人格になっちゃたの？」

『そうみたいだな…』

「私…何かあったけ…？」

『たぶん、幼稚園でアイツと会ったことだろ？もう会えなくて、悲しくて…だから忘れたくなった。
　早く、忘れたかった。だけど記憶から消えるのが怖かった。そんな感情だから…だろうね。』

「よくわかるね。」

『だって、明日香はあたしだもん！』

「そうだよね…えっと…名前は…？」

『名前！？…ないよ…』

「嘘…？じゃあ…えっと…」

「ウゥ…ワンッ！！！！！」

「ヒッ…！！！犬！！！！！」

『明日香！！安心して…あたしと入れ替われば…！！」

バタリ…

あれ…あたしの意識が…

『よし、入れ替わったな！！」

ヒュル

黒く、綺麗な髪が視界に入る。

「すごーい、君はすっごい綺麗な黒髪なんだね。」

『そんなことより、逃げるよ！！』

「えっ？」

風を切る様な感じがした足の速さだった…

風で、綺麗な黒髪が靡く…

「ねぇ君の名前は、麗黒ね！！」

『冷酷…？嫌だよ、そんな名前…』

「違う、綺麗の麗に黒って書いて、麗黒。」

『・・・よし、気に入った！！じゃああたしの名前は、麗黒だ！！！』

「うん！！」

―――――――――――――――――――――――――――

「まあ、余計な説明も入ったけど…」

「俺の…せい…？」

「でも、明日香は喜んでたよ。ずっと一緒の友達ができたって。」

「そうか…」

嬉しそう…なのかな…

「そういえば、零…あたしの鞄ある？」

「あるよ！！」

「ちょっと、放り投げて！」

「あいよ！！」

明日香の鞄が落ちてくる。

ボス

普通にキャッチ

痛くも痒くもない。

「治療すんの忘れたから。」

「でも何で、鞄…？」

嫌な予感が…という顔をする。

「安心して、消毒はしないから…」

―――――――――――――――――――――――――――

「はい、治療終わり。」

「水で洗って、サランラップで巻いただけだけどな。」

「だって、消毒はよくないんだよ？良い菌殺して、逆に駄目なの！！」

「そうかいそうかい…」

「厚樹…お前、知らなかったのか…」

「全然…」

プイと顔をそらした…

「よし、じゃあそろそろ戻るか…」

意識が…

「・・・ん・・・うん・・・？」

視界が…ぼやけて…

あれ…私の意志で体が動く…！

「大丈夫か…？明日香…？」

「厚樹…」

見詰め合って…しばらくの沈黙…

「ゴホン」

寒樹君がせきばらいをする。

「ゴメンなさい…寒樹さん…」

「いや…謝らなくても…」

「よし、明日香！！帰るぞ！！」

「えっ？何で急に…」

グイ

腕を引っ張る

「って、ちょっと！！！」

―第11話―

―人格―ＥＮＤ