創作小説「封夢宮」(5/10)
- カテゴリ:自作小説
- 2010/11/10 21:04:09
第5話
開いた瞳をそっと伏せて視線を外した龍は、水愛を彼から隠すように体を動かした。
『龍珠……』
直接頭の中に響いてきた言葉。
『水の龍珠を返して……』
「龍珠?」
炎朱か口にすると龍は傾くように瞳を閉じた。そのまま動かない。
「龍珠って……どこかで聞いたことあるような……」
何故か知っている気がした。 心の奥底で何かが目覚めたような変な感じ。
全然知らない、解らないのに。
どうして……。
すーっと一段と水温が下がった気がして、冷たさが心身を包み込んだように思えた。
龍は完全に沈黙を守って動こうとはしない。
そのためか、息がどんどん苦しくなってきていた。
「まずい…このままだと……」
上を見上げてもどんよりと暗く水面が見えず、どれくらいの深さに今、自分がいるのか見当がつかない。
「水愛、絶対助けるから……」
龍の宮に隠された一番大切な人。
見えないため、水龍に触れて彼女に向かい意志を込める。
「このまま、諦めるなんてできない」
神殿の様子を目に焼き付ける。 絶対、またここに来るのだから。
そのためにはここから地上へたどり着かなければならない。
水中に潜れば生きては戻れない湖。
戻ってみせると心に強く念じる。しかし、それに比例するように息は苦しくなっていく。
もう少しで水面だと力を奮い起こし、上へ上へと昇る。
もうだめかと思った時に腕が空気をつかんだ。それと同時に炎朱は意識を失っていた。
書庫の奥深くで一冊の本を見付けた洸水。
古ぼけた本は所々くすんで見えなくなっていた。はっきりと解読できるわけではないか、洸水は食い入るように本を読み続けた。
その中で見付けた2匹の龍の文字。
天龍と地龍。
天を翔け、操る天龍。
地を駆け、操る地龍。
―地、乱れし時。
天の涙を受け、治める。
『天の涙』が雨だとしたら、これは飢饉が起こった時に雨か降って救われたと解読することができる。
だったら天龍は「雨=水」ということで水龍ということか。
では、地龍とは?
『地が乱れる』ということは災いを呼ぶ龍なんだろうか。
龍にまつわる話はたったそれだけだった。
ただの天候を龍に例えたものといわれれば、それまでだが、龍が実在していたことはこの騒ぎで証明されている。
それに、村長と神官の言い合いからして、龍が目覚めることを知っていたということは、他に情報となるものがあるはずだ。
古ぼけた書物を片手に、洸水は書庫を出て神官の部屋へと向かった。このさい、時間や礼儀など構っていられない。
まだ嵐は止まず暗闇の中、稲妻が輝いている。時折、轟音が響き地が揺れる。
それが音に反響しているだけなのか、それとも本当に地震が起こっているのか判断がつかない。
神官の部屋の扉を小さく叩くと、案の定返事はなかった。もう眠っている時間だ。
把手に手をかけると鍵はかかっていなかったらしく、軽々と扉は開いた。 中は真っ暗で何も見えない。
人のいる気配すら感じられず。目が慣れて周囲の状況が判ってくると同時に、神官の姿がないのも気づいた。
「こんな夜遅くに出てるのか?」
まぁ、こんな事がある最中、のんびりと自室で眠っているわけにはいかないだろう。たぶん村長の所にでも行って、これからのことを考えているに違いない。自分らに不利にならないように、と。
なんとなく気にはなったが机上に置かれた古い書物が目に留まり、歩み寄って手に取った。
タイトルのない本。
ページを開けると日付が書いてあった。
「日記?」
いつの頃の日記なのか、ずいぶんと古いことは判るのだが年代は判断がつかない。
その最初のページに書かれている文字。
『宝珠を失った龍が湖に入り、10世紀後、龍はまた再び目覚める』と。
その目覚めが今年の祭典なのなら、これは一千年前の書物ということになる。
次のページには続きがあった。
『龍の宝珠が戻れば、収まるだろう』と。
だったら、龍珠を見つけないとこの騒ぎは収まらないということだろうか。
「龍の宝珠はどこにあるのだろう………」
水愛を助けるためにはその宝珠を探し出すしかないのか。
パタンと手記を閉じる。
外ではまだ雨が降り続いている。雷も鳴り止まない。
「炎朱はどうしているだろうか……」
窓から稲妻に反射して揺れる水面を不安気に見つめた。
【つづく】
第5話のお届けですww
折り返し地点。
いっぷく
(^^)
朝の勢いにまかせて
ここまで 読みすすんだ
気になる。
連載終了後に読めばよかったと後悔^^;
少しずつ伏線も回収されていくのかな・・・
気になっているコト、たくさんあるので
本当に続きが楽しみです!
いや、でも、それなら返してとは言わないか?
でも、紅い瞳には、秘密がありそうだしなぁ。
うん、折り返しだ
オイラのはまだまだですw
炎朱ううううorz