創作小説「封夢宮」(9/10)
- カテゴリ:自作小説
- 2010/11/14 17:46:15
「封夢宮~龍の眠る宮~」
第9話
そして、彼の手を取って現れた女性。
長く緩やかな髪。
面持ちがどことなく水愛に似てる………。
「久しぶりです、焔」
彼女の視線は焔を捕らえた後、焔種に向けられた。
「先日、ここに来た者ですね」
「焔種だ」
「そうですか……それでは私も紹介をしなくてはね……」
その言葉でゆっくりと瞳を開いた彼女。
起き上がり、姿を見せた。
「私の娘、瑞亜を………」
瞳を開き、ひとり立った水愛だが、まだ目は虚ろで何も映ってはいなかった。
視線は空を見つめたまま動かない。
水龍の娘。
驚きのまま、言葉を紡げない洸水とは違い、確かな安堵感が焔種の胸を占めた。
記憶を取り戻してから水愛の存在は気になっていた。
水龍の巫女に選ばれ続けたこと、龍珠を取り戻すために彼女を湖底につれ去ったこと。
龍に守られるようにして眠っていた彼女。
そして名前。
龍は自分の分身を生み出す。
だから焔は焔種にとって父親でもあり、焔にとって焔種は息子でもあり自分自身なのだ。
水龍「瑞唖」の巫女である水愛。
だったら彼女も自分と同じ存在なのだろうか、と。
思いあたったものが事実だったと少し安心する。自分だけ「俺は人間でないから」と彼女に別れを告げなくてもいいと考え、水愛と共にいることを願っているのだと心内を知り少し笑みが込み上げた。
人間的な感情だな、と。
「龍珠を手に入れるために陸に上がらしたのだけど、一向に戻らないので心配してたのですが……まさか焔殿にお会いしていたとは」
優雅な、それでいて威厳のある優しい響きの声で瑞唖は言う。
「いや、うちのバカが記憶を取り戻さなかったのが原因。龍珠を持った焔種の側にいてくれたからこそ、こうして無事にいる。こちらが感謝したい」
ピクッと初耳なことを言われ、焔種は焔を見る。
「それって、どういうことだ?」
「水龍の珠は火龍の力と相反するもの。まだ生まれたてのお前は火龍の力の原石そのもの。長く持っていれば力は打ち消され、発狂していたかもしれないな」
すんなりと淡々に言う焔の言葉に今更ゾッとする。
「俺、そんなの聞いてないぞ」
「言ってないから。それにこんなことは気づくもんだろ、普通は」
「何も知らねぇ俺が、判るはずねぇだろ」
「ほら、ごちゃごちゃ言ってねぇで、彼女を正気に戻してやれよ」
話の矛先を変え、のほほーんとしている。彼に怒るもそれは事実なので何にも言えない。
瑞唖に視線を移し、彼女も促すように微笑したのを確かめてから水愛に近づいた。
「水愛」
名前を呼ぶ。
「水愛……瑞亜」
頬に触れる。
暖かさが伝わり、虚ろだった瞳に光が灯る。
ゆっくりピントを合わすように焔種の顔を見た彼女は一気に表情を崩した。
「炎朱ー!」
勢いよく焔種の胸に飛び込むと涙を流す。
「瑞亜……?」
「炎朱、炎朱、炎朱ー」
恐怖からくる必死の声。
それに少しばかり戸惑う焔種に二人の姿を微笑ましく見ていた瑞唖が、
「祭典の時の記憶のまま、眠らせていたものですから」
と、今の瑞亜の状態を説明する。
意識下では龍珠を探しているが、考えて行動していないために、以前と全く変わっていない彼女。まだ水龍としての自覚はない。
「龍珠がなければ《力》は不安定になるからな」
「そうです。彼女を生み出すだけで精一杯ですから、眠りについていたんです」
自分の身を分けるために費やす力は図りしれない。それでも時を逃せばいつ分身できるか判らないため、少々無理をしても後継者を生み出せば成長するとより安定になる。それでもやはり龍珠がないため、均衡が崩れてしまい、水害を招いてしまった。
まだ状況がつかめていなく焔種の胸で泣きじゃくる瑞亜。
「もう、大丈夫だよ」
と、落ち着かせるために慰める。
一度恐慌状態に陥るとなかなか治らないものだ。
「ここは湖の底。瑞亜の生まれた所だよ」
彼の言葉を聞いて顔を上げる。
青い瞳が不思議そうに焔種の顔を見上げ、気づいて手を伸ばした。
「炎朱……瞳に光がある…………」
白濁していたはずの瞳が澄んでいる。
「触れば判るか?」
瑞亜の細い指が瞼に触れる。
「これ………?」
「うん」
「ずっと探していたような、気がする……」
「そうだよ。瑞亜が探してた龍珠だ」
焔種の指が龍珠に捕らえる。
「今、取り出すから」
素手でえぐり出す。
にぶい痛みが走る。
血は流れ出ないがぽっかりと穴が空いた感覚が何とも言えない。
瑞亜の手のひらへと大切に渡す。
傷ひとつ付かずに光を放つ水龍の珠は、幾年もの月日を越えて、ようやく持ち主の元へと戻ったのだ。
【つづく】
次回が最終回でございますww
小説の在庫にソコが見えてきました・・・・><
頑張って「みかん箱」サークルで小説を書きためていきますww
溜まったらブログでUPだww ←とーぶん先だがww
世界にたっぷり浸ってから最終話を読みたい・・・
そんな風に思いました^^
いよいよラストですか…
なんか淋しい……
在庫一層お疲れさんですww
ああ、いよいよ最終回かorz
とりあえず
ステップ
(^^)