創作小説「封夢宮」(10/10)最終話
- カテゴリ:自作小説
- 2010/11/15 18:19:39
第10話(最終話)
「力を取り戻した瑞唖、これからどうする?」
焔が聞く。
ひとつに留まることを常としない龍にとって、今までのように湖に眠っている理由がなくなったのだ。
「そうですね」
思案する彼女の視線は再会を果たして喜ぶ瑞亜の方へと注がれる。
それにつられて焔も焔種の方を見る。
今まで二人がどのように生活してきたかは知らないが、お互い大切な者なのだということが判る。それは、自分たちは感じたことのない想いということも見ていて判った。
力ある者だけが子孫を残していける龍族にとって人間のような恋愛感情は持ち合わせていない。
滅び行く種族。
世界中を探してもいったいどれだけの龍族に会うことができるのか。
二人がこうして出会い、必要とする関係に至るにはどれほどの偶然と呼べる奇跡であることかと、焔と瑞唖は感じる。
「このまま…夢を……」
「夢を現実に、か?」
「たとえいつかは壊れると判っていても、それにむかって足掻いてもいいような気がします」
人の群れの中で生きる。自分は異質でやがては別れることが判っていても、その中で“いつか”が来るまで精一杯生きても誰の迷惑もかからない。
“人と共に”が龍族の見た夢ならなおさら。
「おい、人間」
皆の様子をはたからずっと見ていた洸水が、突然呼ばれてハッと我に返る。
「二人を頼みますね」
「え?」
話の内容がよく判らずとぼけた返事を返す。
「今まで通り、ふたりをあの村で預かってやってくれないか」
「あ……はい…もちろんです!」
今回の事件で二人とはもう別れ、住む世界が変わってしまったと感じていた洸水にとって、二人の言葉は意表をついたものだった。
「じゃ、解決したことだし俺は山にでも帰ろうか」
わざと焔種に聞こえるように大声で焔は言うと、ニヤリと笑って見せた。
「焔、帰るのか、だったら俺も……」
「ばーか。お前はここで人間とでも暮らしてろ。俺はのんびり気楽に過ごして力を蓄える。お前の面倒など見る余裕なんかねーよ」
ガンッと頭をこづく。
「また、迎えに来るよ」
「焔……」
「と、その前に。それじゃあ不便だろ」
そーっと焔種の頬に手を当てる。
空洞の右目。
焔の掌が右目をなぞる。
「大丈夫だ、開けていいぞ」
開いた視界はいつもより広い世界が広がっていた。
「あ、見える……」
「水晶を瞳に入れたのも俺だからな、それくらい朝飯前だ」
「いつも朝飯、食べないのに?」
「ものの譬えだろ!」
言葉と同時に焔の手が焔種の頭をこついた。
「……焔……ありがとう」
「一応、お前の親だしな。じゃ」
短いあいさつをすると、彼の姿は龍になり、神殿から飛び去って(泳いで?)いった。
「瑞亜、あなたも戻りなさい」
優しい声。
生まれてすぐ湖の村に来たのでここでの記憶は皆無に等しいと言ってもいいくらいだ。
「お母さん?」
はじめての肉親に対する戸惑い。
「そうね」
まなざしの優しさにつられ、瑞亜は彼女のもとに近づく。
焔種とは別の、安心する場所。
「たまには帰っていらっしゃい」
差し伸べられた腕は、今までに感じたことのない温かさがあった。
泣きたくなるような衝動に駆られていた瑞亜に、瑞唖は笑って言葉を出す。
「水龍の祭典も終わったことだし何かするんじゃなかったの? ずっと伝わってきてたわよ、気持ちが」
彼女の言葉にあーっと思い出し、泣きたい気持ちがぶっとんだ瑞亜だった。
「炎朱ー! 水龍の祭典、終わったんだよね」
「それがどうした」
ドンと背中にぶつかる勢いで水愛がしがみついて来た。
とびきりの笑顔。
「何か、約束してたんじゃないんですか?」
すっとぼけたふうに洸水が笑いを我慢したような口調で言う。
背中から見上げて来る水愛の瞳は、期待で輝いている。
「うっ」
ここで俺に言わす気か……。
たとえ自分の正体が火龍でも、性格が少し強気になったりしても、やっぱ人前では恥ずかしいことは恥ずかしい。
でも。
「俺って、やっぱり水愛には弱いみたいだな」
開き直り。
振り向き、水愛と向き合った炎朱。
そーっと額に口づけ。
「俺と結婚して下さい」
「……はい」
心に彼女の温もりが届いた。
◆ ◆ ◆
村に戻ってからは大変だった。
数日続いた嵐のため村は荒れ回っているし、今回の事で村長と神官は頼りにならず、任せる気にもならないし。
再興するにはちょっと時間がかかるかと思いつつ、業務をこなしていく洸水。
「ほら、色ボケ夫婦。ちゃんと手伝ってくださいよ」
「何よそれー」
「水愛だけでしょ。俺はちゃんとしてます」
「あー、炎朱までー」
相変わらずの3人。
「火龍の力もあまり役にたたないなぁ」
「瓦礫を焼くのに重宝です」
「新しいレンガも焼けるしね」
「…なんかそれって嬉しくない……」
何も変わらない毎日が一番の幸せ。
これからどうなるかなんて誰も判らない。
だからこそ。
―夢をみよう………。
ハッピーエンドで終えて良かった~^^
ラブラブの二人+洸水のトリオが楽しい☆ 種が違っても、みんなで幸せになって欲しいです。
でも、最終話なんですよね…。ちょっと淋しい……。
よかったあ~
ファンタジーものは好きなので、すらすらと読んでしましました~
お疲れ様でした
一気に読ませていただきましたっ☆
平行世界とはまた趣が違って、漢字の世界もまた乙なものですなああ!
めっちゃ色ボケ夫婦のテンションが好きです♥
龍だろうがなんだろうが、愛がなくちゃ、ね^^
あと一人、残ってはるちょっとお気の毒な(?)役回りの洸水さんw
ああゆう苦労人があたし、大好きです(*´ェ`*)
読んでいて気持ちが温かくなるハッピーエンド♪
最後の
だからこそ。―夢をみよう………。
の部分に余韻が漂っていて素敵ですね!
次回作も楽しみにお待ちしております~ww
色ボケ夫婦は永遠の命をやっぱりもっているのかな?
ずっと色ボケ?w
次回はアクションかぁ~
たのしみで~すw
私も良い夢、見させていただきましたw
コメント書く前に・・・・・さすがですww
またよろしくお願いしまーすww
最終話をお届けしましたーww
てことで、「封夢宮」は終わりですww
封夢宮の裏話・・・最初に言ってた「逃げ」をかましている部分ww
それはどこだったかといいますと、気づいている方もいると思われますが・・・・・
炎朱たちが水珠探しの旅にでなかったことですっ >< wwwww
うっわーーっ 旅に出たら大変だなぁ…そんなとこから、よし、来てもらおうww
急遽、焔がはるばる遠くから仕方ないなぁとばかり、やってきてくれましたww
うん、こんな変更はよくあること・・・・だと思いまするーーー><
はい。反省しますww
次は何を載せようかなぁ・・・・・火龍つながりで、ちょっとファンタジーアクション系でも行きますか?www
どんな結婚式なんだろ...
お疲れ様でしたゞ 次回作も楽しみにしております(*>ω<*)