『Not guilty but…』(13)
- カテゴリ:自作小説
- 2010/11/25 23:50:15
『Not guilty but not innocent』(承前)
検死の結果、急性心筋梗塞、といったんは結論付けられた。だが。
「リーガル・ドラッグ、ね……」
遺体の所持品からピルケースが見つかり、そこに記された手書きの薬剤名と、屑籠から見つかった使用済みの個包装容器に記された名前が一致したため、急性薬剤中毒が疑われ、今血液を分析している、とのことだった。
「自分で飲んでオーバードーズしたなら、自業自得なんでしょうが……」
「何らかの方法で彼女が無理やり飲ませた、かもしれない?」
「その、可能性もある、……のかなあ、と……」
「何の目的で。薬を持ってたのは相手の方なんだろ?」
「……知らずに飲まされたりしたら、ある、かもしれないなあ、と」
「逆鱗に触れたら、そういう事をしかねない?」
「……薬の効果にもよるかもしれませんが。……結構プライドが高いみたいなので。……あ」
ドラッグ。
効いている間の事を《サルベージ》なんかしたら。
……きっとひどい事になってるに違いない。
* * * * *
《俺》にとって《サルベージ》は過去に遭った事を再体験するに等しい。
だから、うっかりあの事故の記憶なんぞに《サルベージ》してしまったりしたら、ほとんど死にそうな苦痛に見舞われる。
今回の《サルベージ》も、それに勝るとも劣らないものだった。
味わわされた感覚は、真逆、と言っていいものだったが。
おかげで《サルベージ》で拾ってきたものを言葉に変換するのが、とても大変だった。
途中何度も《サルベージ》をやめたい衝動に駆られた。
だが、そうしてしまうと、再開する踏ん切りがつかなくなるので、歯を食いしばって続けた。
「……あの野郎。おとなしそうな顔して。百回殺してもまだ足りねぇ」
リモコンで録画を止めたあと呟く。
『記憶は嘘をつく』と心理学だか脳科学だかでは言われるらしいけど、物証がない訳じゃない。
手許にメモしたいくつかの文字列に目をやる。
まずこれを確かめなくては。
奴のケータイの『お気に入り』に入っていた、おそらく、投稿アダルトサイトのURL。……警察に調べてもらった方がいいかもしれない。
それに、すごく気が進まないけど、血液検査か尿検査を受けておくべきかもしれない。
あんな事された以上、『心神耗弱』だなどという理由で『お目こぼし』を受ける気にはならない。
だいたい、あんなに周到に準備してるなら、他にも犠牲者がいたはず。
奴のしでかした事と相殺できないか?余罪も引っ張り出して。
……それが死に値するほどの事か?と問われたら?検察官はおおむね男だから、そういう事言いそう。
『正当防衛』にはならないだろうか?
監禁されてるに近かったけれど、それやってたのはホテル側だし。
……事故、と主張する事は可能かもしれない。このビデオの事を黙っておけば。
考えれば考えるほど、《サルベージ》した事を後悔しそう。
デスクにもたれかかって呼吸を整え、ようやく立ち上がる気力を回復する。
だが、まだ膝に力が入らない。
ぐっしょり濡れてしまった脚の間もどうにかしないと。
……やっぱり、ワンピースに着替える事になるのか。……でも、下着はどうしよう。
よいしょ、と声を出して立ち上がり、足を引きずりながらドアに向かう。総合病院と違い、入り口でスリッパに履き替えるようになっているのがありがたかった。ビニールのサンダルでこんな歩き方したら、絶対に転ぶ。
ドアノブに取りつき、そろそろとドアを開ける。
ニ対の視線がこっちを向いた。
「げ」
開いたドアを急いで閉じ、施錠する。そのままドアに背中を預けてずるずるとへたり込む。
苦手な人がいた。いや、いちゃいけない、とは言わない。彼女はここの正当な主なんだから。
でもこんなぼろぼろな状況で彼女と対峙する事は、なるべく避けたい。
死因は薬物中毒ですか。
これ、場合によっては主人公が殺したって疑われますねぇ…。
供述があいまいだし、主人公の立場(病気)が特殊すぎるし…。
書きようによってはこの話、長編になっちゃいますけど大丈夫ですか?
もしかして長編書く予定だったとか?
最後まで楽しみにしてるんで、がんばって下さい~!^^
最初っから当りな設定でワクワクだけど\(^o^)/
↓ そんな裏話が!
実は『バツ1・子持ち』という裏設定もあったりして。
《サルベージ》と言う言葉がポイントなのでしょうが、
つい、士郎正宗や菊池秀行の小説を想像してしまいます。